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昼食

午前の授業が終わり、雄は机に突っ伏し目を瞑っていた。

特に眠たいわけではないが、何故かこうしたい気分なのだ。

「ししょー!」

うるさいの来た。

雄は身の危険を察知しながらも抵抗が出来ず、歩く厄災に捕まってしまった。

「なんだよ。」

雄が無愛想に返すと夢宮は自分の制服のポケットからケータイを取り出した。

「昨日忘れてました…連絡先の交換を!」

そう言ってビシッとケータイの画面を雄に向けてくる。

「いや、何でだよ。」

「だって!昨日連絡先を交換しましょって言ったら、『おう』って言ったじゃないですか!」

「言ってね…ぇ、よ…」

言ったかもしれない。

ケータイを弄ってるときに話しかけられて、適当に返していたので、話の内容も聞いていなかったのだ。

「言いました!適当に答えたんでしょうけど言いました!」

「それわかってたら無効にしてくれよ。」

「んー…ダメです!」

「はぁ…」

雄は諦めたようにため息をつき、ポケットからケータイを取り出して、夢宮へ渡した。

「ありがとうございます!」

夢宮が鼻唄を歌いながら二つのケータイを操作する。

「雨音ー!」

教室に声を響かせたのは三神だ。

夢宮の姿を確認すると、手を振りながら歩み寄ってくる。

「なにしてるの?」

「ししょーと連絡先の交換をしてるんですよ!」

「…?ししょー?」

「ぅあ!関根さんのことです!」

「なんでまた…」

「ふくざつなじじょーってやつです!」

夢宮が喋りながらも指を動かす。

「へぇ…関根くんケータイ持ってたんだ。」

「現代高校生でケータイ持ってないやつ居るのかよ。」

「まあそうだよねぇ…ね、私も連絡先交換したいな。」

「…はぁ…勝手にしてくれ…」

「やた!」

雄がため息まじりに言うと三神は夢宮に寄り添い、自分のケータイを取り出した。

これからはケータイも賑やかになってしまうのだろうか…

そんなことを考えていると、背後から声をかけられた。

「貴方も大変ね…」

何やら疲れた表情をした霧雨だ。

「霧雨か…」

「だから霧雨って呼ぶな!」

迫り来るチョップを片手で受け止める。

「『貴方も』ってことはお前もか。」

「そうなのよ…さっきから男たちから『何が好きなの?』とか『どんな人が好み?』とか『結婚して!』なんて言い寄られるのよ…本当困っちゃうわ。」

最後おかしいだろ。

見た目はいいほうだからちやほやされるのだろう。

見た目で騙されてはいけないぞ、男子たちよ。

そいつは何食わぬ顔で人を殺す、狂人だ。

俺もだけど。

「可愛いって罪ね…」

「自覚してるからたちが悪い。」

「だって可愛いでしょ?」

霧雨が同意を求めてくる。

「どちらかと言うと…普通かな。」

「どちらかって言ってるならどちらかにしなさいよ!」

「いや、普通か、ブスかで言うとな。」

「可愛いの選択肢を入れなさい…」

霧雨がため息をつく。

これは姉から言われたことだが、俺は恋愛感情が欠落しているらしい。

そんなもんあっても邪魔だとは思うけど。

「ご飯でも食べましょう。」

霧雨がそう言って弁当を広げる。

「あ!いいですね!」

「私もさーんせー、昨日のことも聞きたいしね。」

「俺ははーんたーい、じゃ、」

雄は早急に立ち上がり教室を去ろうとする。

そこを霧雨が制服の襟をつかんで止める。

「食べなさい。」

「…嫌だ。ってか弁当持ってきてないし、財布も寮に置いてきた。」

「あら、こんなところに弁当がもうひとつ。間違って二人分作っちゃった。悪いけど食べてくれる?」

霧雨が悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「はぁ…こいつを相棒に選ぶんじゃなかった…」

結局雄は昼食を食べさせられるはめになった。


「ひひょーはうんろーろかひへはんれふか?」

「飲み込んでから喋れ、ってか喋んな。」

口一杯におかずを詰め込んだ夢宮が喋り出すが、汚いので雄が注意する。

「はむ…もぐ…もぐ……んぐふ!?んごふ!んー!」

夢宮が急に悶え始める。

胸をどんどんと叩き苦しそうに表情を歪めている。

「慌てなくていいってばぁ…!ほらコーヒー牛乳。」

三神がペットボトルを夢宮の口に持っていく。

「んぐ…んぐ…っぷぁ…えほっ!えほっ!…はぁ…助かりました…」

大量のおかずが喉に詰まっていたようだ。

しばらく咳払いを繰り返し、もう一回コーヒー牛乳を喉へ流し込むと深呼吸をして落ち着いた。

「危なっかしいわね…」

「ししょーは運動とかしてたんですか?」

「いや別に。」

「その割には筋肉あるよね?」

「まあ、筋トレくらいはしてたけども。」

雄は自分の腕を見て言う。

マッチョまでは行かないが運動してない人よりは筋肉はあるだろう。

あんまり筋肉つけすぎても動きが鈍くなるだけだしな。

「霧島さんも見た目によらずありますよね!」

「ん…まあ無くはないわね。」

「いいなあ…私は脂肪ばっかり増えちゃって。」

三神が言った瞬間、夢宮と霧雨の目付きが鋭くなり、三神を睨み付けた。

「まあ、そうよね、脂肪なんてあっても得しないわ、脂肪だもの。」

「ですよね!結局脂肪なんですよ!全部脂肪!いくら大きいからって脂肪じゃあ意味が無いですよ!」

「あら、雨音、以外に気が合うわね。」

「そうですね。」

二人が三神を睨み付ける。

どうやら雄ではわからない女子の会話が行われているらしい。

「あんな大きな脂肪ぶら下げて…ダイエットしたら?」

「そうですよ!そんなおっぱい捨てましょう!」

夢宮がストレートに言い放った。

「おっぱい!?」

三神が驚いた様子で声をあげる。

「脂肪の塊なんて捨ててしまいなさい。」

「私たちも手伝いますから!」

貧乳組が三神に襲いかかる。

「いや、でもね、男の子は大きいほうがいいんだよ?」

「う…」

「な…!」

貧乳組が怯む。

「ねえ?関根くんも大きいほうがいいわよねぇ?」

黙々と霧雨の弁当を食べていた雄にもとばっちりが来る。

これはどう答えるべきか。

肯定すれば貧乳を二人敵に回しかねない。

だが否定すれば巨乳を敵に回してしまう。

うーむ…

どうでもいいや。

「そうだな。」

「雄!?」

「そんな!ししょー!?」

「ほら、男の子はみんな巨乳には逆らえないのよ!」

霧雨と夢宮はがーんという擬音が流れていそうなくらい落ち込んだ様子でうなだれていた。

ちりも積もれば山となる、と言うが、貧乳は積もってもたかが知れてるってことか。

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