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第二章 十三話目「第一の試練」

 王都に接すしている、魔族が隠れながらも住む地域。


 その地域の中で最も高い山の中で見つかった、謎の遺跡。


 その中にフェルの炎の明かりを頼りながら入っていったメビウスたちは、その中に一つの大きな扉を見つけた。


 それだけ見ればただのどこにでもある扉で、おかしいのはそんな扉が遺跡の中にあることだけ。


 しかし、遺跡の中にあったのはそれだけでなかった。


 扉の隣には、沢山の直方体の形をした石が置かれている台のようなもの。


 そして、扉の上に書かれた巨大で膨大な文字の集合体。


 そこに書かれていた文字を、そっくりそのまま書き写すとこうなる。


『はじまりははるかかなたへ、

おわりはいつまでもくることはなし。

こころはそのもののまほうのようにあつく、

また、そのものがみなにやどらせるおもいのようにあつい。

いつかふたたびわれらとともにたちあがる、えいゆうでありともであるそのもののなを、いまここにきざめ』


「フェル」


「どうしたの、黒髪?」


「読めた?」


「愚問ね、そんなの決まっているじゃない」


 メビウスたちと行動を共にすることになった、謎の仮面をつけた幼女インフェルノ。


 彼女の愛称でメビウスが呼んで質問をすると、フェルは自信満々に答えた。


「こんなわけのわからない文字、読めるわけないじゃない」


 メビウスは心の中で、「そうだよなぁ」と呟いた。



――――――――――――――――――――



「どうやら、侵入者を防ぐための謎解きみたいだね。どうしようか?」


 時間は遡って、メビウスたちがその扉を見つけたその時だ。


「とりあえず、本当はここの魔素が薄いから使いたくなかったけど炎をこの空間を全部明るくできるまで出すわ」


 まずフェルがそう言って、今まである程度しか照らされていなかった部屋が天井に作られたたくさんの炎によってどこにも暗いところがなくなる。


 そして、ここが明るくなったことでそれと同時に現れたのは一つの扉に、それと隣に置かれている台座が置かれているのがまず目についた。


 メビウスはそれが何か気になってとりあえずその台座のところに近づいた。


「なんだろう、これ……」


「ふん、何かと思えばただの石ころじゃない、何にも役に立たないじゃない」


 台座の上に置かれていた直方体に削られているたくさんの石の集まりの、適当にいくつか選んで見ていたメビウスに、いつの間にか近くまで来ていたフェルがそう呟いた。


 確かにそう思ってしまうのは仕方がないのかもしれないが、


「でも、少なくとも僕が見た全部の石は一つの面だけ文字みたいなのが書かれているんですよ」


「あら、本当ね。でもそれがどうしたっていうの?」


 メビウスが実際にひとつだけ石をとってフェルに見せると、フェルは興味を示してじっとメビウスが見せた文字を見つめた。


 メビウスが見せた文字のような何かは『る』。


 どこかでこの文字のような何かを見た気がするが、一体どこでなのかは思い出せない。


「この文字が何かこの扉を開けるのに関係している気がするんですけど」


「まあ確かにそんな気はするけど、一体どう関係していると思うの?」


「それは、わからないですけど……アニー! あれ、アニーは何してるの?」


メビウスがアニーの返事がないことを不審に思ってあたりを見渡してみると、アニーは一人どこかを見上げていた。


 しかも、ある一点だけをまるで睨めっこをしているかのようにじっと睨みつけている。


「アニー! アニー!」


「……ん、あっごめん! ちょっと集中してて」


 少し焦った様子を見せながら、アニーは笑ってメビウスに返事をする。


 あのアニーを集中させるなんて一体なんなのだろう、メビウスはそう思って、


「アニー、なにかあった、の……?」


 メビウスがアニーの見ていた方向を見てみると、そこにあったのは巨大な壁の削られた跡。


 しかも、ある程度広いこの空間の中で唯一その箇所だけ傷が密集していて、改めて全体を見渡してからその箇所だけを見るとそこがかなり異質であることがわかる。


 もう少しじっくり壁を見てみると、それはただ無意味に刻まれたのではなく文字が――しかも台座の上に置かれていた石に刻まれていた文字になにか似ていることに気が付いた。


 ちなみに、そこに書かれていた文字をそっくりそのまま書き写すとこうなる。


『はじまりははるかかなたへ、

おわりはいつまでもくることはなし。

こころはそのもののまほうのようにあつく、

また、そのものがみなにやどらせるおもいのようにあつい。

いつかふたたびたちあがる、えいゆうでありともであるそのもののなを、いまここにきざめ』


 メビウスはその文字であろう何かを自分が読めるかという、考える間もなくすぐにわかる疑問の答えを確かめるために壁に刻まれていた文字を一通り読んで、


「フェル」


「どうしたの、黒髪?」


「読めた?」


「愚問ね、そんなの決まっているじゃない」


 メビウスたちと行動を共にすることになった、謎の仮面をつけた幼女インフェルノ。


 彼女の愛称でメビウスが呼んで質問をすると、フェルは自信満々に答えた。


「こんなわけのわからない文字、読めるわけないじゃない」


 メビウスは心の中で、「そうだよなぁ」と呟いた。


 こんな、どこかで見たような気がするだけの文字なんて読めるわけがない。


 見た事のない文字なんて、自分の知らない規則にのっとって作られた暗号と大差ない。


 規則がわからないのに暗号が解けるわけがない。


 一応、無理だとは思うけど先に壁に刻まれていた文字がアニーには読めないかメビウスはアニーに聞こうとして、


「……始まりは遥か彼方へ、

終わりはいつまでも来ることはなし

心はその者の魔法のように熱く、

また、その者が皆に宿らせる思いのように熱い。

いつか再び我らと共に立ち上がる、英雄であり友であるそのものの名を、今ここに刻め」


「アニー、何を言ってるの?」


「それはわたしも気になるわ、どうしたのアニー? 急に変な病気にでもかかったの?」


 突然、脈絡もなくアニーがそんなことを言い出して、驚いたメビウスとアニーはそれぞれの言葉でアニーに真実を迫る。


 それらを受けたアニーは、


「いや、あの文字を頑張って読んでみただけなんだけど……」


「「え、あの文字を!?」」


「あ、ちょっと手伝ってメビウスさん、フェル」


 メビウスたちの驚愕をまるで何もなかったかのようにアニーは無視をしてあの台座の方に向かう。


 メビウスたちが何も状況をつかめないままついて行くと、


「メビウスさん、今からいくつか石を渡すからそれを持って先にあの扉の前に移動してくれないかな? フェルはその後で同じように石を」


「ねぇ、どうしてそんなことをする必要があるの? 説明してくれないと納得できないのだけれど」


 石を持って早速メビウスに渡そうとしたアニーに、フェルが不満に思ったようでアニーを睨みつけながらそう告げる。


 彼女の思いにアニーに伝えた言葉以外の思いは特になさそうで、どうやら状況が上手く見えていないのがいやみたいだ。


「フェル、もしボクがあの壁に刻まれている文字を読めるっていったら納得してくれる?」


「――! でも、どうして」


「あの文字、昔あの人と一緒に使っていた暗号と同じなの」


 アニーの言葉に返す言葉をフェルは見つけることができずに、アニーは無言でメビウスに石を乗せて行った。


「……で、十一字だからこれで大丈夫。メビウスさんお願いするね」


「了解」


 メビウスは合計四個の石を抱えながら例の扉の前に移動した。


 その後すぐにメビウスとは違い三つの意思をフェルが運んできて、最後にアニーが四つ石を持ってきておそらくこの謎を解く用意が整った。


 メビウスたちがこれ以上進むのを防ぐ扉には、なぜか丁度メビウスたちが持っている石が十個ぐらい入りそうな空洞があって、


「これ、これ、これに……これ」


 まずアニー自身運んできた石をその空洞の中に置いて、空になった手で今度は、


「メビウスさん、ちょっと石の文字が見やすいように出来る?」


「え、あっ……はい」


 メビウスが少し腕の位置を調整すると、アニーはその中から順番に石を取り出して全部を空洞の中に埋め込む。


 最後に、フェルの持っていた石を並び替えて全て埋め込んで、


『るーふくすふぇにくしあ』


 現れた文字はいったい何かとメビウスが確認すると、


 ギイイイイイイイイイイイイイイイ――、


 耳に響く音を立てて、ゆっくりと扉は自動で開かれた。


「す、凄い……」


 フェルが驚いてぽかんと口を開けていると、アニーが行こうと声をかけて先に進んでいった。


 メビウスと二人、完全には状況を理解できていないまま歩いていって、


『アンカウンタブルです魔王様、一方的な会話になりますけどちょっと報告です』


 この報告がある気がしていたので、メビウスは一切驚くことなくアンカウンタブルのメビウスにしか聞こえない報告に耳を澄ませた。


『まず、あの部屋に書かれていた文字ですけど、魔王様はあの文字が何だか覚えていますカ?』


 確かにメビウスはあの知らない文字をどこかで見ていた気はしていた。


 でも、結局それはどこでなのか今も思い出せないままで今も歩いていて。


『あの文字、かつてレイン村の一軒で使われていたニホンゴでス』


 ああ、なるほど。


 メビウスは納得と共に前の方で「これでいっそうあの魔族がここにいる可能性が上がったわね」とアニーと話しているフェルの二人を見ながら歩き続ける。


 フェルと話しながらこちらとの会話も成立させるアンカウンタブルとは一体何者、なんてメビウスが思っていると、


『もうそろそろフェルがしつこくいろいろ言ってきそうなんでこれで一旦報告を終わりまス。ごめんなさい、もう限界でス……』


 意外とそうではなかったようだ。


 メビウスは一人小さく笑いながら、子どものように笑う二人を見守ってしばらく歩いていて、


 ――基本、問題というものは突然前ブレもなく起きるものだとメビウスは思い知らされた。


「きゃ!」

「わぁ!」


 その声がしたのももちろん突然だ。


 急いでメビウスが悲鳴のした方向に向かうと、そこでは二人が倒れていた。


「いたた……どうしてこの床痛いのよ……」


 倒れていた一人はフェルで、すぐ近くにいたアニーの手を借りて立ち上がった。


 一方、フェルとぶつかった方はというと、


「ありゃ、今日はおでの監視当番だから誰かここにいるのはおかしくないか――」


 そう言ってそいつは立ち上がり、乱れた服を整えてメビウスたちと視線が交わる。


 明らかに、人間ではない。


 形はほとんど人間と変わらなそうだが不健康そうな緑の肌は考えるもなく、魔族のゴブリン族が共通して持っている物で、


「に、にんげんだぁ!!」


 叫ぶ魔族との邂逅と共に、第二の試練が始まった。

削除はしていませんが「超える絆」はここで終了です。凄く微妙なところで終わってしまい申し訳ございません。


本文の謎が少しわかりにくかったと思うので少し解説を。


今回の謎解きでは全ての文字が日本語のひらがなが書かれていました。


しかし、この世界の言語はレイン村の一件で少し触れたように日本語ではありません。


なので、メビウスたちはあの文字を読めなかったわけですね。

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