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第二章 八話目「アニー・ガリッヂ設定、幼少期編」

 せっかくアニー・ガリッヂが人々の間でこんなに人気なのかを語るのだから、アニー・ガリッヂの幼少期の設定も話さないといけないだろう。


 アニー・ガリッヂは、もともとガリッヂ家という貴族である家で生まれた長女である。


 しかし、与えられた土地は王都の中の隅の方にある人が家の近くを通る回数より遠くからオオカミが吠える声が聞こえる回数が多いそんな隅の方の誰も住みたがらないような余った土地で、貴族としての権力もほとんどなく一介の冒険者の方が裕福だと言えるような暮らしをしていた。


 でも、アニーは冒険者になった今でもガリッヂ家での暮らしはとてもいいものだったと思っている。


 両親はアニーにいつも優しくしてくれて、アニーがわがままを言っても「ごめんね、あんまり裕福じゃないからいつでも何でも買ってあげられるわけじゃないんだ」と言ってアニーが「けち貴族!」なんて言うのがお約束の展開みたいなものだったのだが、それでも両親はその時アニーが欲しがっていたものを覚えていて誕生日にはそれを買ってきてくれた。


 もちろん、誕生日からかなり離れた月に言った欲しいものが誕生日プレゼントになった時には「……え、わたしこれ欲しくないんだけど。わたしが欲しいものは別のもの!」と欲しいものが変わってしまい、両親の気持ちなど一切考えずに子どもゆえの私利私欲丸出しの悪気のない発言をしてしまったこともあるのだが、それでも来年以降は絶対にアニーが誕生日の一か月以内にこれ欲しいと言ったものを誕生日プレゼントに選ぶように気を付けていたのが両親の優しさを語る。


 そして、アニーにはヴィアンヌと言う一人の兄がいたのだがアニーは兄がアニーに両親ほど優しくはしてくれなかったがとてもアニーのことを考えてくれていたのは知っている。


 そのエピソードを全て語るのにはかなりの時間を必要とするので今回は一つしか語らないが、例えばアニーが「わたし花かんむり欲しいなぁ……」と言ったらその後すぐに「俺、そういえば父上から用事頼まれてたの忘れてた」と言って家を出て行って、アニーがまあどうでも良いか一人で遊ぼう! と一人で人形遊びをしているとすぐに兄が帰ってきて「用事を片づけてたら親切な人にもらった」と言って花かんむりを渡してくれたなんてことがあった。


 貴族としては貧乏だけど、お金が少ない代わりに笑顔が多い家庭。


 それがアニーが過ごしてきたガリッヂ家を一番よく表す言葉だった。


 そんなアニーの当時の日常が粉々に壊れたのは、アニーがちょうど五歳になってすぐの事だった。



 ――――――――――――――――――――



 その時アニーが思った感想は、「なんなんだろこれ」だった。


 アニーの目の前に倒れていた()()()()()()。その正体が気になってアニーはそれにそっと触れてみた。


 腕や足やおなかなどは人のそれと何も変わらない。ただ、それについていた赤い液体がなんだかとても気持ち悪い。それに、いままでアニーの嗅いだことのないにおいが見た目以上に気持ち悪くて何かきっかけさえできてしまえばはいてしまいそうだった。


 そして、アニーはそれのいたるところを触ってからようやく気が付いた。


 それが着ている服についていた紋章。


 それは紛れもないアニーの住むガリッヂ家の家紋だった。


 そして、アニーの知る限りこの家紋を服につけている人物は一人しか知らない。


「お父……様?」


 唯一にして無二のアニーの口から紡がれた正解。


 アニーは最初この状況をどうにかして否定しようとしたが、どうしてもこの状況を否定して父親が生きていると自分自身に言い聞かせる方法が見つからなかった。


 齢たった五歳であるにもかかわらず父親の死をすぐさま理解してしまうアニー。


 アニーは、あまりにも早く成長しすぎてしまっていた。


 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。


 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。


 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。


 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。


 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。


 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。

 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。

 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。

 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。

 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。

 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。

 死んだ、死んだ、父親が死んでしまった。

 しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。

 しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。しんだ、しんだ、ちちおやがしんでしまった。

「――しん、だ」


「アニー!」


 目の前の出来事がショックすぎて精神が崩壊する寸前までいきかけたアニーを、本当に寸前、もし仮に後一瞬だけでも遅れていたら発狂してしまって完全に壊れてしまっていたところを引き留めてくれたのは、


「……お兄、様?」


「そうだ、お前を世界一愛しているお兄様だ。泣くな、って言うのは無理だよな……」


 そういわれて、アニーは初めて今泣いていることに気が付いた。


 すぐに涙を小さな手で拭うが、拭いてもすぐに涙はこぼれてきていくらわたしが涙をぬぐう速度を上げても追いつかない。


 それどころか、嗚咽まで漏れ始めて津波の様な悲しみがいっきに押し寄せてきていて、


「……泣いてもいいんだぞ」


「……怖いよ、怖いよ、怖いよお兄様!」


 わたしの心の叫びを聞いて、兄はわたしを抱きしめると優しく数回撫でてくれた。


 その温度が、そのぬくもりが温かくて、他の何よりもあたたかくて、今まで感じてきた温度の中で一番温かくて、だから――、



 ――――だから、心の底からの安堵の後の深い絶望は他の何よりも残酷に見えた。


「……お兄、様?」


 さっき兄を呼んだ時と、一言一句違わないアニーの言葉。


 でも、アニーがその名前を呼んだ理由は全く違うものだった。


 何かの肉を思いっきり刃物を叩きつけるように切った時に出そうな音、少し遅れて出た水の魔術で勢いよく水を噴射した時の様な音。


 突然その音が耳に入るとアニーを優しく撫でていた手は急に止まって宙にぶら下がり、アニーに少し重い兄の全体重がかけられる。


 ――これはきっと幻覚だったのだろうけど、アニーの肌に触れた兄の肌から伝わっていた温かさが急に消えて温かい飲み物が冷えて凍らされたみたいになっていた。


 いくらアニーが待っても兄の返事は帰ってこない。


 その代わりだったのは分からないが、アニーの耳は別の人の声を聴いていた。


「うーん、兄妹愛なんて美しい! あぁなんと美しいことか! そして、そんな兄妹愛がはかなく散ってしまのはなんと美しく、そうした俺はなんという美しさを生み出してしまったのか! あぁ、なんと罪深い!」


 アニーに、その名前も声も姿も知らない人の発言を理解することは不可能だった。


 ただ、自分に酔ったように話すその人が、この悪夢を作ったことは男の持った赤い赤い包丁がわかりやすく教えてくれて、


「……はぁーい! 初めましてアニーちゃん。俺の名前はグラトニーって言うんだ! 今日はね、とある人に頼まれてアニーちゃんを誘拐しようと思ったんだけど、アニーちゃんの優しい優しいお父さんとお母さんとお兄ちゃんが俺の邪魔するから、殺しちゃった。テヘ!」


「……へぇ?」


「んー? そんなに見つめられちゃうとお兄ちゃんがアニーちゃんの可愛さで死んじゃうよ? まあ、仕事だからアニーちゃんの貞操には手を出したりしないから安心してね? さあ、一緒に行こうか!」


「……」


「ほらほら、黙ってないでさ。あっ、そうだ! 迷わないように手を繋ごうよ!」


「放して!」


 やっぱりその男の言っていることは理解できなかったが、もしアニーの手を掴んだこの手が導くままについていけば嫌なこと――それもとんでもないことになりそうな気がしてアニーはあらん限りの力を込めて男の手を引き離そうとする。


 でも、相手は大人の男、そしてアニーは五歳になったばかりの女の子。


 その力の差なんて誰が考えても同じ答えになるようなもので、


「あらあら、可愛いねアニーちゃんは。そうだなぁ……この仕事が終わって時間があったら腕相撲でもしようか! だから、『乱暴にするのはやめてくれないかな』」


 わけのわからない、その男のふざけた言葉。


 それでも今までの会話の中で唯一アニーを傷つける意思を込めた言葉は、恐怖で鎖のようにがんじがらめにアニーの反抗心を押さえつけた。


「……助けてぇ」


 アニーは無意識に自分自身すら気づいてないくらい小声で呟いていた。


 でも、アニーはこの男以上に強い人を知らなくて、だからこの男が最強で、勝つ方法なんてなくて、このまま男の言いなりになるしかなくて、だから――、


「ねぇ、そのこの手を離してくれないかナ?」


 ――――だから、深い絶望の後の心の底からの安堵は他の何よりも輝いて見えた。








意外と長くなったので前後編に分けて投稿します。


アニー・ガリッヂの過去、とくとご覧あれ!(ただし、全てアンカウンタブルが作った設定です)

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