ブレイブフォン 第8話
レイア達が出ていった後ブブはというと自分の部屋に入り、少し落ち着くためにコップに入れてきたアップルジュースを飲んでいた。
ブブ「“ゴクッ、ゴクッ”…ぷはぁー、やっぱりアップルジュースは最高だな。でも交換が上手くいって良かったな。…でもそういえば交換したはいいけど実際に呼び出す時ってどうすればいいんだろう。取り敢えず説明書でも読んでみるか」
番号交換ができたはいいが、実際に呼び出すにはどうすればいいのか分からなかったブブは説明書を読むことにした。だが文章を理解するのが苦手なブブはライナから貰った説明書を読んでみてもよく分からなかった。
ブブ「えーっと、なになに…。まずは呼び出したい番号の登録ページを開きます。すると左画面にそのブレイブナンバーの登録者の基本的なデーターが表示されます。右画面にはいくつかのボタンが表示されますので、その中の“転送”というボタンを押します。その後0.2秒後に呼び出した者が最適と判断された場所に転送されます…と。ってこれじゃあよく分かんないなぁ〜。最適と判断された場所ってどういうとこなんだろ。僕のイメージした場所じゃなくてブレイブフォンが判断した場所ってことなのかなぁ〜。まぁ、取り敢えず母さんのページでも見てみるか」
ブブはレイアの登録ページを開いてみることにした。先程の交換は上手くいっていたようで、ブレイブフォンの電話帳の中にはレイアの名前が登録されていた。当然他の人物の名前はなく、登録番号は1番になっていた。この登録番号は変更はできず、交換した順番に番号は割り振られていくようだ。
ブブ「おっ、ちゃんと交換が出来てたみたいだな。どれどれ、母さんの情報ってどうなってるのかな」
レイアの登録ページを開いたブブは早速情報を閲覧してみた。しかしブレイブナンバーについて知識が全くなかったブブはそこに書いてある情報をよく理解できなかった。
ブブ「えーっと、なになに。氏名、レイア・レイブン、性別、女性っと…。現在の認定資格、“ゴッドハンド”…!」
レイアのページに書かれている資格の名称を見てブブは驚いた。ブレイブナンバーについて全く知識のないブブでも恐らく凄い称号であろうことは予測できたからだ。自分の母がもしかするとかなりの実力の持ち主なのではと考えたブブは、急に怖くなってしまい、ブレイブフォンを閉じてしまった…。
ブブ「なんだよ…、“ゴッドハンド”って…。もしかして母さんて物凄く強かったりするのかな。今まで何回も怒られたことないけど、手を挙げられたことなんて一度もないからなー…。っていうかもしそうだったら勝手に交換したことバレたらどうしよう〜。これじゃあ折角交換したのに怖くて呼び出せないよ〜」
折角交換できたブレイブナンバーだったが、レイアの“ゴッドハンド”という称号が気になり、ブブは呼び出すのが怖くなってしまった。ゴッドハンドとはそのまま神の手という意味だろうが、よくゲームなどでは達人の武闘家などの称号に使われていたため、レイアも相当の実力者なのだとブブは考えた。そして、もし実際にレイアを呼び出せば当然勝手にブレイブナンバー交換したことはバレてしまう。“ゴッドハンド”の実力を持つレイアを怒らせてしまったらどうなってしまうのだろうか。今まで一度も手を挙げられたこともなく、母のことを怖いと思ったことなどなかったが、ブブ生まれて初めてレイアに恐怖していた。
ブブ「…まぁ、いいや。交換してしまったものは仕方なし…、本当にピンチになった時にだけ呼び出せば、母さんも分かってくれるだろう。あっ、そういえばお昼お弁当まだ食べてなかった。学校は午前中で終わちゃったけど、折角だから今から食べようっと」
…ブブは完全に現実逃避をし、今朝ミルに届けてもらった弁当を食べ始めたのだった。
レイア達が近所に挨拶出掛けてから大分時間が経っていた。現在夕方の午後5時。もうほとんどの家に挨拶に回り、残りはミルの住んでいるアルレイド家の家だけだった。
レイア「はぁ〜、疲れた…。挨拶する先々で発表会でのブブの態度について突っ込まれるんだもの…。謝りすぎて鬱病にでもなっちゃいそうだわ〜。っていうか頭下げすて腰が痛い…。心より身体の方が先に壊れそうね…」
アラン「ははっ、その割には一生懸命謝ってたじゃないか〜。相手の方達もお前の気迫のこもった謝罪を聞いて、ある程度はブブのこと認めてくれたみたいだったぞ」
どうやらレイア達は挨拶に行く先々で発表会でのブブの態度を怒られていたらしい。そのせいでレイアは何度も謝罪することになり、心身共に疲れ果てていた。だが少しでもブブの評判を良くするために、レイアは身を削る思いで謝罪して回ってきたのだ。よっぽどブブのことを思っているのだろう。
レイア「そりゃあ大事な一人息子ですもの。少しでも息子の汚名を返上してあげないと…。はぁ〜、でも来週には全世界にあの発表会の映像が放送されるのか〜。そればっかりは私達じゃどうしよもないわよね〜。自分の力でブレイブピックでいい成績残して名誉挽回してもらわないと…」
アラン「そうだな。でもきっとあいつなら大丈夫だよ…。おっと、それよりそろそろアルレイドさんの家が見えてきたぞ。これからが大変なんだろ」
レイア「ええ…、なんとしてもミルちゃんを説得しなきゃ…。もうっ!、ブブの奴が発表会であんなこと言わなかったらこんなことにはならなかったのに」
ミルの家に到着したレイア達だったが発表会のブブの発言での一番の被害者の宅だったためかなり緊張した面持ちで呼び鈴をならしていた。レイアはミルが小さい頃から何度もブブがいたずらした際に代わりに謝りに来ていたが、今回ばっかりは流石に簡単には許してもらえないだろう。そう感じて気合を入れ直しているレイアにミルの母でるミーシャが玄関に迎えに出てきた。
“ガチャ”
ミーシャ「あら、レイア、それにアランさん。こんばんは。この度はブブちゃんがブレイブフォンに選ばれまして、おめでとうございます」
彼女がミルの母親であるミーシャ・アルレイドである。髪は緑色で、サラサラしたロングヘアーが特徴である。外見はおっとりした雰囲気で、その見た目通りかなり大らかな性格をしている。感情の起伏が少なく、いつもマイペースで顔が少し笑っている。レイアとはミルが小さい時からの付き合いで、かなり仲がいい。
レイア「…!。いえいえ、こちらこそあのような不束な息子が選ばれてしまい、誠に申し訳ございません。それに発表会でミルちゃんにあんな失礼なこと言っちゃって…。つまらない物ですが…、お詫びの品としてこちらを受け取ってください」
普段の性格通りミーシャはブブに対して全然怒った様子はなかった。ミーシャの性格は熟知していたレイアだったが、少し驚き、ブブのことを謝罪して、お詫びとして買ってきたケーキを渡した。
ミーシャ「あらあら、そんなこと気にしなくてよかったのに。それよりそんな堅苦しいこと言ってないで、中に入って。折角だから紅茶でも飲みながらお話しましょ。ほら、アランさんもどうぞ」
アラン「あっ、ああ、はい。では失礼します」
レイア「あんた…、いい加減その性格直した方がいいと思うわ…」
相変わらすのミーシャの態度にレイアは呆れてしまった。こうなることは分かってはいたが真剣に謝っていた自分が馬鹿らしく思えた。
ミーシャの話し方には独特の雰囲気があり、全く相手を威圧しない態度に、レイア達はつい言われるがままに家の中に入ってしまったのである。そして大所のダイニングテーブルに座ってミーシャが紅茶を入れ終わるのを待っていた。
ミーシャ「はい、お待ち遠様。折角だからあなたが持ってきてくれたケーキも一緒に食べる?」
レイア「いいえ、帰ったら夕飯も食べなきゃいけないし、それはあんた達の家族で食後にでも食べてちょうだい。それより…、ミルちゃんどうしてる?」
ミーシャ「…?、別にどうもしないけど。部屋に篭って音楽でも聴いてるんじゃないのかしら」
レイア「良かった…。ちょっとお話がしたいんだけど、呼んできれくれない。ブブのことも謝っときたいし」
ミーシャ「ふふふ、駄目」
レイア「な、なんでよ」
レイアはミルにブブとブレイブナンバーを交換して貰えるよう頼むつもりで呼んで来てもらおうと思ったが、意外にもミーシャに断られてしまった。恐らくレイアの考えていることは見透かされていただろうが、ミーシャの性格ならむしろブブと交換して貰えるようミルを説得して貰えると考えていたため、レイアはかなり焦っていた。
ミーシャ「どうせブブちゃんとブレイブナンバーを交換して貰えるよう頼むつもりなんでしょ〜。隠しても駄目よ。ブブちゃんとミルが生まれた時からの付き合いなんだから」
レイア「なによー、分かってるなら尚更協力してくれてもいいんじゃな〜い」
ミーシャ「ダ〜メ。折角来てくれたのにミルのことばっかり気にして私に全く構ってくれない気〜。ちゃんと私のこと満足させられたら呼んできて上げてもいいわよ〜」
レイア「…分かったよ。で、何をすればいいの」
ミーシャ「うふふ、まずは大富豪なんてどうかしら」
ミーシャはどこからかトランプを取り出し、大富豪をしようと言い出した。ミーシャはカードゲームが大好きだった。本当は“ジャッジメント・オブ・カレッジ”などのトレーディングカードゲーム等の方が好みだったのだが、レイア達がそんなもの出来るわけがないのでトランプにしたのだった。因みにトランプフォンも持っているが、通常仕様のためブブとフレンド交換して貰えなかったようだ。ミルのトランプフォンは、まだ届いたことを知らされておらず、フレンド交換だできていなかったが、もし知れば当然交換を迫るため、ミルは貴重な五人の枠をまた費やしてしまうだろう。
レイア「はぁ〜、相変わらずあんたってカードが好きなのね。分かったわ。あなた、これもブブのためよ。頑張りましょう」
アラン「…!、お、俺もやるのか」
レイア「当然でしょ。二人で大富豪やって何が面白いのよ」
ミーシャ「決まりね。じゃあ始めましょう」
こうしてレイア達は暫くトランプに明け暮れることになったのだった…。
…レイア達がトランプを始めてから一時間ほどが経ち、ゲームの内容はババ抜きに変わっていた。それまでにも色々なゲームを遊んだようで、神経衰弱、七並べ、ページワン等、トランプのゲームをほとんど遊びつくしていた。
アラン「お、また上がりだ。ラッキー、今日は何だかついてるな〜」
レイア「何よ、またあなたの上がりなのぉ!。…あっ、クソまたババ引いちゃった」
ミーシャ「ふふん、アランさんには今日は完敗だけど、レイアちゃんには負けないわよ」
三人は割とトランプに熱中していたようだ。特にレイアとミーシャはお互い勝敗にムキになって、アランが上がった後二人でババを引き合っていた。そしてババ以外を引けばミーシャの上がりというところまできていた。
レイア「さあ〜、早く引きなさい。絶対ババを引かせてあげるんだから」
ミーシャ「ふぅ〜、なんとかこれで上がってみせるわ〜」
アラン「おいおい二人共。ちょっと熱くなりすぎなんじゃないのか…。たかがゲームなんだし」
レイア「あなたは黙ってて!」
ゲームに夢中になりすぎていたレイアは本来この家に来た目的をすっかり忘れてした。アランの鎮めの言葉も無視し、なんとか勝負に勝とうと必死になっていた。
ミーシャ「どちらにしようかな、裏の神様の言う通り…っと。…あっ、やったぁ〜、これで上がりよ」
レイア「あ〜ん、また負けた〜」
無念にもレイアは勝負に負けてしまった。レイアはトランプだけでなくゲーム全般が苦手であまり勝負に勝った試しがない。特にギャンブルはに弱く、そのくせ負けず嫌いのためなかなかやめられず、昔カジノで50万ほどすったことがある。
レイア「くっそ〜、もう一回勝負よ!」
ミーシャ「だ〜め、流石にもう疲れちゃった。それにもう満足したしね。久しぶり生でやるカードの感触が楽しめてたわ。ネットでやるカードゲームじゃイマイチ物足りないのよね」
レイア「何言ってんの!私はまだ満足してないの。さぁ、カード切るから貸しなさい」
案の定負けず嫌いのレイアはまた勝負しようと言い出した。この手の性格の持ち主は自分が勝つまで納得しないのでかなりタチが悪い。
アラン「お、おい、ここ来た目的忘れたのか。これ以上トランプなんてしてる場合じゃないだろ」
レイア「…!、そ、そうだったわね。ゴメンなさい、あなた」
アラン「い、いや、別にいいんだよ。ところでミーシャさん、そろそろミルちゃん呼んできてもらえませんか」
ミーシャ「いいですよ。大分楽しませもらいましたし。アランさんまで付き合わせちゃって、ごめんなさいね」
アラン「いえ、私も楽しかったです。また出来ればお相手願いたいです。できればポーカーなんかで」
ミーシャ「ふふ、喜んで。それじゃあ呼んできますね」
アランのおかげでレイアは目的を思い出し勝負への熱は覚めていった。ミーシャも満足したようでミルを呼びに階段の方へ向かっていった。
ミーシャ「ミル〜、今レイアちゃん達が来てるんだけど、ちょっと下りてきてくれな〜い。……ちょっとミル〜、聞こえてるの?。返事ぐらいしなさ〜い。………」
ミーシャが階段の下からミルのことを呼んだが、下りてくる気配はなく返事もなかった。割と大きな声で呼んだが聞こえなかったようだ。
ミーシャ「あら〜、あの子ったらまた耳にイヤホン突っ込んで音楽聴いてるのかしら。ごめんなさいね。すぐ部屋に行って呼んでくるから」
一階から呼んでも全く反応がなかったためミーシャは2階にあるミルの部屋まで呼びに行くことになった。その頃ミルはミーシャの予想通りイヤホンで音楽を聴いていたのだった。
ミル「“ギュわ〜ん、ジャジャジャジャジャジャジャ〜ン、ギュうぃ〜ん♪”う〜ん、やっぱりviolentwindのblazeのギター は最高よね〜。本当に嵐を巻き起こしてるって感じよね〜」
ミルは大好きなバンドのviolentwindの曲を聞いていた。そのバンドメンバーのblazeというギタリストのギターが好きみたいで、曲のギター音に合わせて鼻歌を歌いながら、自分自身もギターを弾く振りをしていた。チブブという名前のペットの猫を膝に乗せて、ギターの弦を弾く方の手で弦の代わりにチブブの首を撫でる様にして弾く振りをしていた。
チブブ「…にゅわ〜ん」
首を撫でられて気持ち良かったのか眠そうな鳴き声をあげていた。するとミルは気付かなかったがドアをノックする音が聞こえてきた。恐らくミーシャが呼びに来たのだろう。
“コンコン”
ミーシャ「ミル〜、またイヤホンで音楽聴いてるの…。もう、勝手に入るわよ。いいわね」
ノックしても反応がなかったため仕方なくミーシャは勝手に部屋に入った。それでもミルは気付かず音楽を聴いていたためミーシャは少し頭に来てイヤホンを引っこ抜いた。
ミル「ルンルンルン〜♪、……!。うわぁ、な、何よ母さん、ビックリするじゃない」
ミーシャ「も〜う、耳にイヤホンして音楽聴くのやめなさいっていつも言ってるでしょ〜。今だって何回呼んだと思ってるのよ〜」
ミル「だってその方が気持ちよく聴けるんだもん。別にいいでしょ。どうせいつも大した用じゃないんだから」
ミーシャ「あら、そう。なら今日も大した用じゃないのね。折角レイアちゃん来てるのに」
ミル「えっ!。レイアさん来てるの。もう、だったら早く言ってよ。早く挨拶しなきゃ」
イヤホンを忘れたことに文句を言っていたミルだったが、レイアが来ていると聞くとせっせと階段を下りていった。実はミルは小さい頃からレイアのことが大好きで、ブブの家によく行っていた時はブブと遊ぶことよりレイアに会えることの方が楽しみだった。ブブは折角ミルが遊びに来ても一人でゲームばかりしていたため、見かねたレイアがミルの遊び相手なってあげていたのだ。料理を教えてもらったり、近くの街に連れて行ってもらったりしていた。ミルが拳法を始めたのもレイアの影響だった。
“ダダダダダダッ”
ミル「ごめんなさ〜い、レイアさん。折角来てくれてたのに気付かなくて。あっ、アランさんも来てくれてたんだ。こんばんは」
ミルは階段から下りるとすぐにレイア達の所に行き挨拶をした。
レイア「あっ、ミルちゃん。いいのよ、私達の方から訪ねてきたんだから。それより、今朝はごめんなさいね。ブブの奴があんなミルちゃんを傷付けるようなこと言って」
ミル「あ、もういいんです。全然気にしてないですから…。ブブの奴がああなのはいつものことですし。それより今日は何しに来たんですか」
レイア「あ、それなんだけどね…」
ミーシャ「もう〜、ミルちゃん。お母さん置いてさっさと下りていかないでよ〜。本当にレイアちゃんのこと好きなんだから〜。母の面目丸つぶれよ〜」
レイアがミルに頼み事を言おうとした時ミーシャが遅れて階段から下りてきた。ミルにほっとかれたことを少し怒っているようだった。
レイア「ちょうどいいわ。出来ればミーシャからもお願いして欲しかったことだから。ちょっとこっちに座って」
ミル「………」
レイアに言われるままにミルはテーブルの反対側に座った。どうやらレイアの少し真剣な表情を見て何を言われるか察していたようだ。ミーシャもミルの隣に座り、どうやらレイアの頼み事に協力するようだ。
レイア「単刀直入に言うわ…。ミルちゃん、ブブとブレイブナンバーを交換してあげて欲しいの」
ミル「……そんなこと」
レイア「強がってもう誰かと交換したみたいなこと言ってたけど…、多分嘘だと思うのよ。このままじゃああの子一人で旅立つことになっちゃうのよ。あんな事言われて絶対嫌だと思うけど…お願い!」
レイアは手を前で叩いて合わせ、頭を机につくぐらいにまで下げてミルに頼んだ。レイアの必死の願いにミルはどうするか迷っていたが、答えを決められないでいた。
アラン「私からも頼むよ。あんな息子だから、ミルちゃんぐらいしか頼める人いないと思うんだ」
ミーシャ「ミル。あんた本当はブブちゃんと交換したかったんでしょ。もう発表会でのことは許してあげて、交換してあげたら。小さい時からの大事な友達でしょ」
ミル「別にもう起こってないわよ…。でも、ブブの奴が交換して欲しくないって言ってるんだから仕方ないじゃない。大体こういうのってブレイブフォン持ってる人の方からお願いしてくるものじゃないの。もし私から交換しに行って、断られでもしたらもっと最悪じゃない…」
レイア「ミルちゃん…」
どうやらミルはもうブブのことは許していたみたいだが、今度は自分から交換を頼みに行くのが怖かったらしい。確かにブレイブフォンの所有者が交換を迫っていって断られるより、ブレイブナンバーの所持者が交換を断れる方が精神的にはきついだろう。だが実際にブレイブピックに出場するようなブレイブナンバーの所持者はむしろ自分から積極的に申し込むことが多い。ブレイブフォンの電話帳に登録制限があるのもあるが、やはり早期に交換した人物ほど多様する所有者が多いからだ。そのため優秀なブレイブナンバー所持者は自分でブレイブフォンの所有者を選定し、その人物に自分からアピールしていくのだ。
ミーシャ「何情けないこと言ってるの、ミル!。実力のあるブレイブナンバーの所持者はむしろ自分から交換してもらいに行くのよ。ちゃんと自分で自分に相応しい所有者を探し出して、自分を選んでもらえるよう必死にアピールしていくものなの。そうよね、レイアちゃん」
レイア「え、ええ…」
大層な言葉を吐いたミーシャだったが、実際にブレイブナンバーを持ってるわけではなく、説得力に欠けると思いレイアに同意を求めた。レイアも自分から交換を迫ったことはなかったのだが、ミルを説得するために適当に相槌を打った。
ミーシャ「それに一度ブレイブフォンに選ばれた人がもう一度選ばれることはないから、今回を逃したらもう二度とブブちゃんとブレイブピックに出られなくなっちゃうのよ。それでもいいの?」
ミル「……よくない」
ミーシャ「それならさっさとブブちゃんと番号交換してきなさい。今日中に交換しとかないと明日にはもう町から旅立っちゃうのよ」
レイア「あ、そんな。わざわざブブの所まで行かなくても、私が今から連れてくるわよ。元はといえばあいつが悪いんだし。それにミルちゃんは本当は最初から交換してくれるつもりだったんでしょ。あいつがあんな事言わなければ何も問題なかったのにね」
ミル「いえ、ちゃんと私から行きます。やっぱり自分の交換する相手は自分で決めたいし…。それにこの機会を逃したら多分私誰ともブレイブナンバー交換することないと思うから…」
レイア「ミルちゃん…」
ミルは自分の気持ちに正直になってこれからブブと番号交換をしに行くことにした。これから先ブレイブピックが行われてもブブ以外の人物と交換することはないと思ったのだ。それなら今ブブと交換してブレイブピックを目指そうと考えたのだ。
ミーシャ「よし、流石私の娘。夕飯待っててあげるから、さっさと行ってきなさい。ブブちゃんもきっと喜んでくれるわよ」
ミル「うん…。ありがとう、お母さん」
ミーシャ「もう〜、急にしおらしくなっちゃって〜。ブブちゃんが羨ましいわ〜」
ミルは今からブブとブレイブナンバーを交換しに行くと考えると緊張して急に女の子らしくなった。そして少し気持ちを落ち着けた後レイア達とブブの家に向かうことになった。
ミル「それじゃあ、行ってくるね。お母さん」
レイア「ありがとうね、ミーシャ。もうミルちゃんを傷付けないようブブにはちゃんと言っとくわ」
アラン「本当に家の息子のためにご迷惑ばかりお掛けして申し訳ありません。ブブにはちゃんとミーシャさんやミルちゃんの期待に応えるよう言い聞かせておきます」
ミーシャ「いいえ、こちらこそミルのことをよろしくってブブちゃんに言っといてください。存分にこき使ってもらうのよ、ミル」
ミル「うるさいな〜。ブブに言われるまでもなく自分からしっかり働くわよ」
ミーシャ「ふふふ。それじゃあ、行ってきなさい」
こうしてミル達はブブの家へと向かって行った…。