ブレイブフォン 第6話
ブブ「あっ、そこの美人なお姉さん。僕今日ブレイブフォンの所有者に選ばれたブルー・レイブンっていうんだけど、良かったらブレイブナンバー交換してくれませんか。僕と交換してくれたら毎日退屈させませんよ」
美人な女性「あらあら、可愛らしい坊やね。でもゴメンなさい、私ブレイブナンバーなんて持ってないのよ。でもあなたみたいな可愛い子と番号交換できるんなら頑張って取ってみようかな。ふふっ、そのときはよろしくね」
ブブ「あっ、…は〜い」
ブブは街角でブレイブナンバー持っていそうな人…、もとい、美人で可愛い女の人に声を掛けまくっていた。そんなことでブレイブナンバーを持っている人など見つかるはずもなく、声をかける人は皆ブレイブナンバーなどとは無縁の人ばかりだった。
ブブ「…!、そこの格好良いお姉さん、良かったらブレイブナンバー交換しませんか」
格好良いお姉さん「…!、ちょっと、それ私に言ってんの」
ブブ「はい、そうです!」
格好良いお姉さん「…ふざけないで!」
“バシィィ!”ブブたまたまブレイブナンバーを所持している女性に声を掛けることができたが、次の瞬間思いっきり頬を叩かれてしまった。
格好良いお姉さん「いきなりブレイブナンバーを聞いてくるなんて失礼にも程があるわ。いくら子供でも許さないわよ。ブレイブフォンを手に入れて浮かれてるみたいだけど、あんまり調子に乗らないことね」
ブブ「ううぅ…、ごめんなさい…」
道行く人に片っ端から声を掛けていたブブだが、ブレイブナンバーを持っている人には全く声を掛けられずにいた。実際にナンバーを所持している人に声を掛けれても、交渉する間もなく断られていた。その明るい性格で一般人には受けのいいブブだったが、ブレイブナンバーの所持者からしてみればただふざけているようにしか見えず、とても真剣に番号交換を迫っているようには感じられなかった。
ブブ「はぁ〜、やっぱりミルの言う通り初対面でブレイブナンバーを教えてくれる人なんていないのかなぁ。折角番号持ってるんだから誰かと交換しないと意味ないのにな〜」
レイス「…やぁ、ブルー。なんだか苦戦してるみたいだね」
ブブ「…!」
番号を交換してくれる人が見つからずブブは愚痴をこぼしていた。そんなブブの前に意外な人物が現れたのだった。
ブブがブレイブナンバーを交換してくれる人を探している間、ミル達3人は学校から少し離れた繁華街のファミレスで昼食を食べ終わりしばらく雑談していた。窓際の席でミルは頼んだドリンクをストローでかき混ぜながら道行く人を見ていた。もしかしたらブブが通りかかるかも知れないと思って探していたのかもしれない。
ミル「…はぁ、今頃何してるのかなぁ、あいつ。まさか本当に誰かとブレイブナンバー交換しちゃったってことは…」
窓の外を見ていてもブブは見つからず、ミルはため息をついて、ストローにかき混ぜられて音を立ててるグラスの底の氷を見つめていた。その姿は少し切なそうだった…。
マイ「…ねぇ、ミル。……ミルってばぁ。」
ミル「…え!、ああ…、ゴメン。どうしたの」
ブブのことを考えていたミルはマイに声をかけられて慌てて返事を返した。どうやらブブとブレイブナンバーを交換できなかったことを相当気にしているらしい。
マイ「何さっきからボーっとしてんのよ…。まぁ、いいわ。それよりあんた、ブブにブレイブナンバー交換してあげなくてよかったの…。ありえないと思うけど、もし万が一誰かと交換でもしちゃったら…」
ミル「…なによ、それだと私があいつとブレイブナンバー交換したいと思ってるみたいじゃない」
マイ「その通りよ。だってあんた体育館の舞台であいつが変なこと言うまでは交換してあげるつもりだったんでしょ」
マイの言う通り体育館でのミルの様子を考えると誰もがブブとブレイブナンバーを交換するつもりだと思っただろう。実際ミルはブブがブレイブフォンの所有者に選ばれた時点で交換すると決めていたはずだ。本当はブブもミルも交換したいと思っているはずだがお互い意地を張りすぎて自分の気持ちを言えないでいるのだろう。
ミル「………」
マイ「図星みたいね…。全く、昔からあんた達って素直じゃないんだから。でもまっ、あいつのことだから最終的にはまたあんたに泣きついてくるわよ」
ミル「そ、そうかな」
マイ「そうよ。昔っから学校サボった日のノートも夏休みの宿題もあんたに頼んでたじゃない。だからちゃんと謝ってきたら必ず交換してあげるのよ」
ミル「う、うん。そうする…」
マイ「ところでレド。あんたさっきから携帯で何やってんの?」
レド「うん、ああ…“ジャッジメント・オブ・カレッジ”のカードを使った占いだよ。今日の俺はナイーブになりやすいらしいから出来るだけ外に出て明るく振舞えってさ」
マイ「ああ…、そうなの…」
レドは意外にも占いがすきだった…。
ブブ「…レ、レイス!。ど、どうしたんだよ、こんな所で」
意外にもレイスに声を掛けられたブブはえらく動揺していた。ブレイブフォンの所有者No.1と言われていたレイスを差し置いて、自分が所有者に選ばえてしまったことを気にしていたのだろう。もしかしたらレイスに怒られてしまうのではないかと心配していたのだ。
レイス「いや…、ブルーのことがちょっと気になって。もしかしてブレイブナンバー交換してくれる人見つからないんじゃないかと思って」
ブブ「うぅ…、そうなんだよ。実はさっきからずっと声かけてるんだけどさ…。ブレイブナンバー持ってる人なんて全然いなくてさ…。どうしようかと途方にくれていたんだよ」
レイスはブブが所有者に選ばれたことを特に怒っている様子はなかった。それどころか選ばれたブブを心配して見に来たようだった。
レイス「ブレイブナンバーを持っている人はそう簡単には見つからないよ。見つかったとしてもそう簡単はに交換してくれないだろうし…。僕の母さんだったら多分探し出せると思うんだけど」
ブブ「えっ!、そんなことできるの。そう言えばレイスの家って凄い名門なんだったよね。…!、もしかしてお母さんに僕と交換してくれる人も探してもらえるの!」
ブブはレイスの言葉に期待を期待をあらわにした。もう無理だと諦めていたところだったので、最後のチャンスだと思いレイスに頼もうとした。
レイス「ああ…、僕もできればそうしてあげたいんだけど、やっぱり探し出すのには凄い時間がかかるんだ。僕が選ばれた時のために探していた人も所有者が僕でなかったと知ったら断られるだろうし…。ブレイブナンバーの所持者はブレイブフォンの所有者以上に人を選ぶからね。なんせ一度交換してしまったら他の人とはもう交換できないだから…」
ブブ「やっぱりそうか〜…、そんな都合よく見つかるわけないよね」
レイス「それで考えたんだけど…、もし良かったら僕とブレイブナンバー交換しないかい。実は僕も高校入ってすぐの時に手に入れてたんだよ」
ブブ「えっ!」
レイスの母さんでもすぐに探すのは無理だと聞き気を落としていたブブに、レイスはいきなりとんでもない提案をした。なんと自分とブレイブナンバーを交換しようと言いだしたのだ。
レイス「僕は今回皆を期待させといて結局ブレイブフォンの所有者には選ばれなかった。だからせめて僕の代わりに選ばれたブルーの力になりたいんだ!」
ブブ「レイス…」
レイスは散々周囲に期待せておきながらブレイブフォンの所有者に選ばれなかったを気にしていたようだ。その代わりという訳ではないが、せめてブレイブメンバーとして町の人達の期待に応えたかったのだろう。レイスの真剣な表情にブブは気圧されているようで、このままレイスと交換するかのように思われた。
レイス「僕じゃ役不足かい、ブルー」
ブブ「…何言ってんだ、レイス。役不足もなにも、レイスは男じゃないか!」
レイス「へっ…!」
ブブの理解しがたい発言にレイスは戸惑いを隠せなかった。ブレイブピックは特に女性が有利ということはなかった。むしろ戦闘面では男性の方が優勢になろうであることは誰にでも予測できるはずだった。レイスは少し怒ったようにブブに理由を問いただした。
レイス「ちょ、ちょっとそれはどういうことなんだ!なんで男じゃいけないんだ」
ブブ「だってミルより美人か可愛い女性じゃないと見返せないじゃないか。それに男のブレイブナンバーなんか聞いても今度はレドに笑われちゃうよ」
レイス「な、何言ってるんだ。そんなこと気にしてたらいつまで経っても見つからないよ。それにちゃんと男女のバランスも考えてメンバーを集めいないと」
ブブ「分かってるよ。でもまず一番目に交換するのは女の子じゃないと駄目なの。まぁ、その後だったら交換してもいいけど…。でもレイスだってどうせだったら可愛い女の子と交換したほうがいいよ。女の人でもブレイブフォンに選ばれた人もいるんでしょ」
レイス「なっ!」
ブブの無神経な発言にレイスは怒り心頭した。どうやらブブはミルだけでなく誰に対しても無神経なところがあるようだ。それにやはりブレイブピックに対する意識の違いも大きかっただろう。小さいころから両親にブレイブピックについて聞かされ、父親や祖父もブレイブフォンに選ばれているレイスと、今日いきなり何の予兆もなく突然選ばれてしまったブブとでは、意識の差があっても当然だった。
レイス「ブルー…、どうやら僕は君のことを過大評価していたみたいだ。急にブレイブフォンの所有者に選ばれてしまったとはいえ、ここまで不真面目に取り組めるとは思ってもいなかったよ。そんなんじゃいつまで経っても仲間なんて見つからないね。じゃあ、僕はこれで」
ブブ「………」
ブブのあまりの不真面目な態度に等々レイスは愛想を尽かしその場を立ち去ってしまった。レイスは何故かブブのブレイブフォンを見たときブレイブメンバーとして呼ばれている気がしていたが、ブブの言葉を聞いて自分の馬鹿馬鹿しい勘違いだったと確信した。だが機械であるブレイブフォンに何かテレパシーの様なものを感じたものは、過去のブレイブピックにも大勢いたのだった。もしブブのブレイブピックに対する意識が上がっていけばレイスと番号交換する日も来るかもしれない。
ブブ「なんだよ…、あいつ…」
ブブは結局誰とも番号交換できないまま家に帰ることとなった…。
ブブが気を落として自宅へと帰っているころ、ブブの家ではアランとレイアがブブがブレイブフォンに選ばれたことについて掛かってくる電話に追われ、挨拶に出掛ける準備をしていた。
レイア「あ、…はい、ありがとうございます。本当に家の子が選ばれるなんて光栄なことで…、はい。あっ、ではまた後で自宅の方にお伺いさせていただきますので…。はい…、では失礼します」
“…ピッ!”
レイア「ふぅ〜、…って一息ついてる場合じゃないわ。今のうちに留守番設定にしないと…」
先程からひっきりなしに掛かってくる電話だったが、どうやら一段落したようだった。レイアはこの隙を逃してはいけないとすぐに固定電話と携帯電話を留守番電話設定にして、急いで出掛ける準備をしだした。
ブブ「ただいま〜」
ちょうど電話が一段落した時ブブが家に帰ってきた。レイアは学校が早く終わったことを知らなかったため、ブブが予想より早く帰ってきたを驚いた。
レイア「ブブ!、あんたもう学校終わったの。それよりあの発表会での態度は何なの!。さっきからそのことへの抗議の電話が一杯掛かってきて大変だったのよ。あんたがミルちゃんに馬鹿なこと言うまではお祝いの電話もたくさん掛かってきてたのに」
レイアはブブの発表会での発言を叱り始めた。あんな発言をすれば怒られるのは当然ではあったが、ブブはまったく気にしていなかった。
ブブ「し、知らないよ、そんなの。急に選ばれて僕だって困ってたんだから。文句なら僕を選んだ人に言ってよ」
ブブは不貞腐れたようにレイアに反発した。ブレイブフォンに選ばれたはいいが、誰とも番号交換できず、おまけにレイアだけでなくレイスにまで怒られてしまうことに納得できなかったようだ。
レイア「だからってあんなこと言って言いわけないでしょ!。言っとくけどあの映像は後で全世界の人々が見れるように配信されるんだからね。あんなの見ちゃったら誰もブレイブナンバーなんて交換してくれないわよ。あっ、それよりあんた誰かとブレイブナンバー交換してもらえたの。いくらミルちゃんでもあんなこと言っちゃったら交換してくれなかったんじゃないの」
ブブ「べ、別にミルなんて交換してくれなくても大丈夫だよ。そ、それにちゃんと交換してくれる人もいたしね。ミルなんかよりよっぽど美人で可愛い子。だから心配しなくていいよ」
本当は誰とも交換できていなかったがブブは強がってレイアに嘘をついた。実際心の中では相当焦っていて、もう母にでも頼もうと思っていたぐらいだったが、それももう出来なくなってしまった。しかしブブにはこの状況を打破できる秘策があったのだった。
レイア「…本当かしら。ミルちゃん以外にあんたと交換してくれる子なんて見当も付かないんだけど…」
レイアはブブの言っていることが恐らく嘘であろうことは見当が付いていたが、特に突っ込むことはなかった。実はレイアにもブブとブレイブナンバーを交換してもらうための秘策があったのだ。なんだかんだでやはり息子が可愛いようだ。
レイア「まぁいいわ、それより母さん達これからご近所さんに挨拶しに行ってくるから、あんたは家で大人しく明日から旅立つ準備しておきなさい。さあて、それじゃあしっかりお化粧しなくちゃね〜」
レイアは嬉しそうに化粧をしにいった。発表会で通常では考えられないことをしたとはいえ、やはり自分の息子がブレイブフォンに選ばれたことは嬉しいらしい。訪問した先で何を言われるか分からないが、ブブのためなら喜んで頭を下げる覚悟がレイアにはあった。
ブブ「おっ、早速絶好のチャンス到来。母さんは化粧しだすと長いからな。よし、今のうちに…」
レイアが化粧に行くとなにやらブブが怪しげな行動をしだしだ。なんと大所へと向かいテーブルの上に置いてあるレイアのカバンの中を物色しだしたのだ。
ブブ「う〜ん、なんか色々入ってるな〜。カバンの中ぐらいちゃんと整理しと…!。ってよし、あった」
なんとブブはレイアのカバンの中から携帯電話を取り出し、ポケットの中に忍ばせた。そしてそのまま2階にある自分の部屋へと行こうとしていた。
アラン「お、なんだブブ、帰ってたのか。いや〜、出掛ける準備してたら気がつかなかったよ」
部屋へと向かおうとするブブに、普段の仕事では着ないかなり高級そうなスーツを来たアランが書斎から出てきた。アランの何かの式典にでも出るかのような格好に、ブブは驚いて何故そんな格好をしているか聞いた。
アラン「いや〜、なんせ自分の息子がブレイブフォンに選ばれたんだからな〜。これぐらいの格好していかないと町の人達に申し訳が立たないよ。でも父さんはお前が選ばれて本当に嬉しかったぞ〜。色々あると思うが明日から頑張れよ。ちゃんと美人な人の番号聞いてくるんだぞ」
ブブ「父さん…」
レイアやレイスとは違い寛大な心で迎えてくれているアランにブブは言葉を詰まらせてしまった。発表会であんな恥ずかしい姿を晒したのに何も咎めもしない父の心の広さにブブは感動していた。しかも美人な人の番号を聞いてこいと言う自分のことを一番理解した発言がブブの心を奮起させ始めた。
ブブ「父さん!。僕ブレイブピックなんて興味なかったけど、やっぱり折角だから優勝目指して頑張るよ。いつも僕のこと理解してくれてありがとう」
アランの理解ある言葉のおかげブブにやる気が戻ってきた。どうやらブブは叱られるより褒められる方が合っているらしい。その為、教育面で厳しいレイアより、あまり自分に対して口出しせず、どちらかというと見守ってくれているアランの方が相性は良かった。
ブレイブピックに対して少しやる気の出てきたブブは、機嫌が良くなったのか鼻歌を歌いながら自分の部屋へと入っていった。しかし部屋の中でしようとしていたことはとんでもないことだった…。