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ブレイブフォン ~勇者の電話帳~  作者: はちわれ猫
第一章 ミルのブレイブナンバーをGETせよ!
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ブレイブフォン 第3話

ブブが保健室で死にかけていた時、体育館では教頭先生の指示のもと先生達が発表会の打ち合わせをしていた。この学校の教頭は非常に優秀で、校長から絶大な信頼を得ており、先生達からの支持も厚く、発表会の指揮も全て彼に任せられていた。


 教頭「では発表会の最終打ち合わせをしていこうと思うのですが、まずいくつか注意を促しておきます。まずこの発表会は我が校だけのものではく、この地域の全ての人々にとって大事なものであります。発表会の様子は、地元のケーブルテレビを通してこのブレイブタウンのみならずカレッジ地域全域で放送されます。そのことしっかり意識して、生徒達だけでなく、テレビを通してご覧になっておられる方々にも教育者として恥ずかしくない態度で臨むようお願い致します。」

 先生達「はい!」

 教頭「そして最後にもう一つ注意があるのですが…、これは我々では防ぎようのないことなのでもし起きたら次のように対応してください。」

 先生達「はぁ」


 先生達は防ぎようのないこととはいったい何なのだろうと思い、不思議そうに首を傾げながら返事をした。


 教員「まずどのような事案か説明すると、ブレイブフォンの所有者が我々や生徒、そしてテレビでご覧になっている視聴者の方々の予測と遥かに違う人物が選ばれた場合です。皆さんもご存知の通りこの町の所有者はこれまで全てこのブレイブ高校の成績トップの生徒が選ばれていました。今回でいうとレイス・カーメイスがその生徒です。そのためこの町の発表会はこの学校で行われることになっているのですが、もし万が一他の生徒、もしくは生徒以外のこの町の住民が選ばれてしまった時、大混乱を巻き起こす恐れがあります。」

 先生達「えっ、どういうこと?」


 校長の話を聞いて先生達はそんなことがあるのかと不安に感じ騒ぎ始めた。ブレイブピックは二百年以上前から行われているが、これまでそのようなこと一度もなかったので無理のないことである。


 先生達「え、そんなことって本当にあるのかしら?、私今回で3回目の発表会ですけどこれまでそんなこと一度もなかったですよ」

 先生達「そうですね、僕も今回で5回目ですけど一度もなかったです。しかし所有者はデータが送られてくるまで誰も分からないので当然といえば当然の注意ですけどね」

 先生達「あら、(わたくし)なんてこれまで10回も発表会に立ち会ってますけど、これまでそのような注意を受けたことなんて一度もありませんわよ。きっと今日教頭先生の考えすぎですわよ。おーほっほっほっほ」


 先生達はまったく信じず、騒ぎは大きくなる一方だった。その様子を見兼ねた教頭は、強く迫力のある声で騒ぎを一蹴し、説明を続けた。


 教頭「静かに!、確かに今まで我が校の成績トップの生徒以外が選ばれることはありませんでした。そして事前の予測通りの人物が選ばれることは他の地域、いえ、世界各地においても同じことです。多少予測と違うこともありましたが、世間を混乱させるような人物が選ばれることは全くありませんでした。しかし今年に入って少なからずですが予測に反する人物が選ばれる地域があると報告されており、場合によっては暴動などに発展する事態も発生しているのです」


 先生達「…!」


 ブレイブフォンの発表会は毎回ブレイブピックが終わった後、つまり一月から三月にかけてその地域の順番毎に発表されていくが、どうやら選ばれた人物達に問題がある者がいるらしい。そのこと聞いた先生達は急に静まり返り、真剣な表情で、教頭に説明を求めた。


 ルーシー「教頭先生、その選ばれた人物とはいったいどういった人達なんですか」

 教頭「…、特に規則性はなく様々ですが、基本的にマスコミのアンケートによって作らる予測候補ランキングに入ってない人物です。成績もぱっとせず社会においても平凡な評価しかされていない人物、酷い場合には学校サボったりタバコを吸ったりする素行の悪い生徒、更には社会に出ずに家に引きこもり両親の世話になっている者まで選ばれてます」

 ルーシー「…!、ま、まさか…、ラ、ライナ先生」

 ライナ「…ああ、私もお前と同じことを考えていた…。もしかしたらあいつが選ばれるんじゃないかと…。確かにあいつが選ばれでもしたらこの町は大混乱になるだろうからな」


 ルーシーとライナは自分達がよく知る生徒の中で教頭が言ったことに当てはまる生徒のことを思い浮かべていた。特にライナは先程その生徒の破天荒さを目の当たりにしたところだったので余計心配だった。先生達の間に不安が立ち込め始めた時、それを遮るようにこの学校の校長がやってきた。


 校長「はははははっ、あまり皆を怖がらせるのはやめたまえ、教頭」

 教頭「こ、校長先生、しかし実際に多くの地域で起こっていることです。それに事が起きてからでは遅すぎます」

 校長「分かっておる、だからこそそういった事態にも対応する為にも君に指揮を任せているのだ」

 教頭「な、ならば私の言うことしっかりと聞いて…」

 校長「そうではない、わしが言いたいのはたとえ誰が選ばれようともこの町の人々ならば立派に勇者としての努めを果たしてくれるということだ」

 教頭「あ…!」

 ルーシー「校長先生…」


 校長の言葉は不安で駆り立てられていた先生達を安心させ、平静を取り戻させた。実際この町の治安の良さは世界でも有名で、ここ10年間犯罪は全く起きていない。


 校長「では教頭、さっきいった事への対策もしっかり説明し、はやく打ち合わせを勧めてくれたまえ。このままでは発表会に間に合わんぞ」

 教頭「は!」


 教頭の心配していた事案に関しては、もしもの場合はすぐに担任の先生達は生徒の収拾にあたり、それ以外の先生達は職員室で住民からの電話対応にあたることになった。先生達は仮に誰が選ばれたとしてもしっかり受け止めて、生徒や住民達の説明にあたろうと心に決めていた。そしてそのことは今回ブレイブフォンに選ばれるであろう人物が彼であることを予期していた。

 







 先生達が打ち合わせをしている間保健室では、治療が終わったブブとミルが保健室の発表会の様子をテレビで見ようと待ちわびていた。ブブはまだほとんど動けないでいたが、リリィの治療のおかげで徐々に回復し、ベットに腰掛ける程度には回復していた。ミルは訪問者の用の椅子に座り、リリィは自分の机で書類を書いていた。


 ブブ「いやぁ〜、やっぱりリリィ先生の回復魔法は凄いな〜、もう動けるようになっちゃったよ」

 リリィ「こらこら、まだ回復が始まったばかりなんだ。あと一時間くらいは安静にしてないとまたベットにおねんねだぞ」

 ミル「そうよ。これ以上先生に迷惑は掛けられないんだから、もうちょっと大人しく寝ていなさい」

 ブブ「ちぇ〜、分かったよ。確かにまた動けなくなってあんな情けない姿を晒すのはゴメンだからね」

 リリィ「はははっ、確かにミルにおんぶされたお前の格好か滑稽だったな。しかしそれなら怪我治すよりもミルを怒らせないよう注意するほうがいいんじゃないか」

 ブブ「嫌だな〜先生、あれだけのことがあったんだもん、もう怒らせたりしないよ。ねぇ、ミル」

 ミル「ふん、どうだか。まぁ私もできるだけ気を長く持つよう気をつけるから、本気で怒らせないようにはしてほしいわね」


 ミルはブブに悪さをするなと言って起きながら、いざブブが大人しくなると何だか寂しい気がして寛容な態度をとった。ブブがミルを怒らせてばかりなのは実はミルの方にも原因があったのかもしれない。


 ブブ「それにしても暇だなぁ〜、発表会が始めるまで後30分もあるし…、先生、始まるまで何か他の番組見てていい?」

 リリィ「おいおい、ただでさえ保健室で楽々と休ませてやってるんだ。これでテレビまで見せたら完全に生徒にサボらせてるみたいじゃないか。少しは遠慮しろ」

 ミル「そうよブブ、そんなに退屈なら今からグラウンドの整備でもやってきたら…、あっ!そうだ!あんたにいい物見せてあげるわ。これで退屈しないで済むわよ」

 ブブ「えっ、何々?。ミルの寝相の悪さを激写した証明写真!」


 ブブは小さい頃よくミルの家に泊まりいっていて、一緒に寝たりすることが多かったためミルの寝相がとてつもなく悪いことを知っていた。急に殴られてベットの外どころか壁にぶつかるまで吹っ飛ばされたり、抱きつかれて喜んでいたらそのまま窒息死しそうになるほど締め付けられたりと、普通なら羨ましいことながら散々な目にあっていた。


 ミル「馬鹿…そんな恥ずかしい写真あっても自分から見せるわけ無いでしょ。これよ、これ。ジャ、ジャーーーんっ!」


 ミルがカバンのなか取り出したのはブブもお気に入りで大事に使っているトランプフォンだった。しかもブブの持っている限定仕様とはまた違う限定仕様のトランプフォンだった。なにやらトランプのジャックのようなイラストが、画面左上と右下に貼ってあり、機体の裏には銃のトリガーの様な物がついている剣のマークが入っていた。


 ブブ「そ、それは、伝説のイラストレーター“剣と銃の狭間”が描いた幻の勇者ブレイブル・ミレイアスのイラストと、そのブレイブル・ミレイアスの使っていた剣と銃が融合した最強の剣ガン・ブレイバーのイラストが貼ってある超レア仕様のトランプフォン!、い、いったいそれをどこで……!」


 伝説のイラストレーター“剣と銃の狭間”とは、主に剣と銃のイラスト、場合よっては設計までしているこの世界の有名イラストレーターである。ゲームや漫画が好きな人なら誰しもが知っていて、その実力は世界レベルだと認められている。ブレイブル・ミレイアスとガン・ブレイバーは、この世界に伝わる幻の勇者と最強の剣のことで、その勇者は世界一勇敢な心でどんな困難にも立ち向かい、その剣はどんな闇をも切り裂き、そこに潜む悪を撃ち滅ぼすと言い伝えられいている。


 ミル「へへーん、これはこの前あんたに“トランプフォンも持ってないなんてミルは遅れてるな”なんて馬鹿にされて頭にきたから先週お母さんに頼んでカレッジシティまで買いに連れて行ってもらったのよ。ちょうど三連休あったし。そしたらなんかしらないけどトランプフォン購入者一億人目記念か何かで普通とは違うもの貰えたのよ。しかもタダで。でも流石にその日お店にはなくて、後日送ってくれることになってたんだけど、昨日学校から家に帰ったら届いてたのよ。へぇー、でもこれそんなに凄い仕様だったんだ。流石私の持って生まれた豪運ね!あっ、番号とメアドは前のと同じにしといたから気にしないでね。ブレイブナンバーの手続きもあって、ちょっよ面倒くさかったんだけど」


 カレッジシティとはこのカレッジ地域最大の都市のことで、世界で流通しているほとんど商品が手に入ると言っていいくら商業が発展している。地元の町で手に入らないものは、皆この街に購入しに来るのである。


 ブブ「ほ、ほんとに凄いよ…、その仕様は購入者がある一定の人数に達した時や、なにか特別な番号になった時に購入した人しか貰えなくて、一億人購入してるなかで多分持ってる人は3千人未満じゃないかと言われてるんだよ…」

 ミル「へ〜、でもブブの持ってるトランプフォンも凄いんじゃなかったっけ?あの綺麗な女の人の写真が貼ってあるやつ」

 ブブ「あれはトランプフォンの購入者1万人目までの人が貰える携帯で、値段はミルみたいにタダじゃなくて通常通りだったよ。予約購入じゃなくてトランプフォンの開発会社があるセブンブリッジシティの専用販売店で購入しなくちゃならなくて、僕は発売日の一週間前から街に泊まり込んで、並び始める奴が出始めてからはずっと順番取りしてたなぁ〜。たしか三日前くらいからだったかなぁ〜」


 セブンブリッジシティは街の中に大きな橋が7つあることから、トランプのセブンブリッジというゲームにちなんでつけられた。世界最大のゲームシティで、パソコン、PCゲーム、テレビ、テレビゲーム、携帯ゲーム、などのあらゆるゲーム機とそのソフト、そして周辺機器まで何でも置いてある。更にはカードゲーム、麻雀、ジェンガ、そしてモデルガンなどのサバゲー用品などゲームに関わる物なら何でも置いてある。 


 ミル「……二年の時あんたが十日ぐらい連続で学校サボってたのそのせいだったのね。まったくいい根性してるわよ…」

 ブブ「ふふん、その通り。ミルが豪運でそのトランプフォンを手に入れたのなら、僕は気合と根性、そして執念、何よりゲームへのかけがえのない愛でこのトランプフォンを手に入れたのさ…、ゲームは運だけじゃないからね」

 ミル「別に褒めてないんだけど…、それになんか引っかかる言い方ね」

 リリィ「おいおいお前達、ゲームっていってもそれは携帯だろ。通信機能がメインなんだから、そんなゲームやら何やらに入れ込むもんじゃないぞ。まぁ先生も音楽を聴くために音質機能のいいものを買ってはいるが…」


 携帯電話に色々こだわりすぎてる二人に注意を促そうとしたリリィだったが、時代の最先端を追い求め続ける若者二人の熱き情熱の前に、弱々しく引き下がらせられるのでった。


 ミル「…何言ってるんですか先生!。これからは携帯でなんでもできる時代になっていくんですよ!。もうすでに携帯でインターネットは繋げるし、テレビだって見れる、さらにはGPS機能まで、もう通信機能なんてただのオプションなんですよ!」

 ブブ「そうそう、言うなれば“携帯何でも機”っだね」

 ミル「お、たまには面白いこと言うじゃない、ブブ。それに先生、200年以上前からあるブレイブフォンだって、通信機能なんてすでにただのおまけみたいなもんになってたんじゃないんですか」

 リリィ「はい…、お二人方の言う通りです。先生が間違ってました…。すみません」


 リリィは二人の言い分の前に言い返すこともできず、謝ってしまった。確かにブレイブフォンのことを言われると通信機能なんてあってないようなものだったので、リリィも二人の考えに納得してしまったのである。


 ミル「あっ、こっちこそゴメンなさい先生、つい熱くなっちゃいました。……、それよりブブ、せっかくトランプフォン買ったんだから何かオススメのゲーム教えてよ。というか昨日色々試したんだけど全然やり方分かんなくて、まだ一つもダウンロード出来てないのよ」

 ブブ「えっ、なんだよそれ、仕方いないな〜、僕も今ハマってるゲームあるから、それをダンロードしてあげるよ。トランプフォン専用アプリで、持ってれば誰でも無料でできるから、貸してみて」

 ミル「ごめん、お願い」


 先程携帯について熱く語っていたミルだっかが実はアプリもダウンロードできないほど機械音痴だった。なのでブブにダウンロードしてもらうことになったのだが、ミルはなにやら嬉しげであった。


 ブブ「はい、ダウンロードできたよ。今大人気のカードゲーム“ジャッジメント・オブ・カレッジ”。せっかくだから早速やってみなよ。で、フレンド交換しようよ」

 ミル「えっ、いいの!私カードゲームなんて実際やったことないからきっと凄く弱いよ?」

 ブブ「何言ってんだよ〜、どんなゲームだって初心者の時から強い人なんていないよ。それにミルの限定仕様のトランプフォンとフレンド交換できればゲーム内で限定レアカードの入ったパックが貰えるからね。それだけでありがたいんだよ〜。それに当然ミルの方にも僕のトランプフォン限定のレアカードのパックが送られるから、楽しみにしててよ」

 ミル「うん、楽しみ!」


 ブブの言葉にミルはとても喜んだ様子だった。といっても今までカードゲームなんてやったことのないミルがいくら限定とはいえ、そこまで喜ぶのは少し疑問だった。だがリリィはその疑問の答えに気付いたようだった。


 リリィ「…はは〜ん、さてはミルの奴ブブと一緒に遊びたくてトランプフォンなんて買ったんだな。で、望み通りフレンド交換まで出来てあれだけ喜んでるってわけか…、まったく、可愛い奴だよ」


 リリィはそう思うとにたつきながらミルの方を見ていた。それに気付いたミルは照れを隠すをようにリリィから目をそらし、トランプフォンの操作に集中するふりをした。


 ミル「えーっと、ここをこおしてこうすると…、あっこれだ!。ブブ、フレンド交換の画面まで来たよ。はやく交換しよ」

 ブブ「OKー、じゃあ手っ取り早く赤外線通信でやるから、センサーをこっちと合わせて。……よし、じゃあせーので送信ボタンを押して、…せーの!」


 “ピー、通信完了!、通信完了!、プレゼントがあります♪、プレゼントがあります♪”、交換を開始して数秒後に通信完了の効果音がなった。そして二人のフレンド画面にお互いの名前が追加され、先程話していた限定パックが送られていた。


 ミル「やった!、通信終わったわ、無事成功したみたい。あっ!、これがさっき言ってた限定パックね。さっそく開けてみよっと。……わー!凄く綺麗な女の人のイラスト!、これブブのトランプフォンに貼ってあった人でしょ、すごく綺麗ね〜、描いた人も天才だわ。ありがとう、ブブ!」

 ブブ「それはこの世界の王女様で、アリア王女だよ。といっても、今の時代に王族の人の顔や名前知ってる人なんて少ないけどね。それを描いたのはどうやら王宮の専属画家みたいで、名前は知られていないんだよ。僕も色々調べてみたんだけどね。それより僕の方にもミルの限定パック来てるよ。ほら、さっき言ったブレイブル・ミレイアスとガン・ブレイバーのカード。他にも3枚入ってたよ。僕の方は全部さっき言った伝説イラストレータ“剣と銃の狭間”が描いたものだけどね」

 ミル「ふ〜ん、あ、私の方にもあと4枚カードが入ってる。ブブの携帯の裏に入ってる家紋みたいなやつと、豪華な神殿に凄く綺麗な庭園、あっ!、このメイドさんも凄く可愛い!、…やっぱり全部イラストレータの名前書いてないけど、同じ人が描いたのかな?」

 ブブ「多分ね。きっと王宮にあるものをモチーフにして描いたんだよ。それより、実はこのフレンド交換で限定パックが貰えるのは、その携帯と交換した5人目までだからね。だからミルはあと4人分限定パックが送れるわけだけど、ちゃんと向こうも限定パック送れる人と交換しないとダメだよ。嘘ついて交換迫ってくる人もいるから気をつけてね。因みに僕はミルが最後の一人だったから、もうその心配はないけどね」


 “ジャッジメント・オブ・カレッジ”のカードゲームは全世界に熱狂的なプレイヤーが数多くいて、中には卑劣な手段を用いてレアカードを手に入れようとする人もいた。特にミルのようにゲームにあまり詳しくないが、たまたま限定仕様を手に入れた者をそのことを知る前に通常のトランプフォンと交換させたり、もう規定人数以上の交換をしているトランプフォンとフレンド交換させる事例が、数多く発生していた。実際センサー使えば交換するまえに簡単に確認できるので、知識さえあれば被害に遭うことはほとんどない。そのため機械にあまり詳しくない者ばかり狙われているのかも知れない。


 ミル「確かに私そういうのに疎いから騙されちゃうかものね…。よし、じゃあ交換する時はブブが一緒にいてくれる時だけにするよ。ところで、ブブは他は誰と交換したの?ちょっとフレンド画面見せてよ」

 ブブ「いいよ、はい。全部ゲーム内の名前だし、一人を除いて皆ゲームの大会で一回会っただけだから、全然分からないと思うよ」

 ミル「えーっと、何々。レドにアレイスターにモトチカ、それにえーっと、しゃ、社長?、そして最後がミル、私か。レドってあいつのことよね。あいつもトランプフォン持ってんの?」

 ブブ「うん…、なにも限定仕様のついてない通常仕様だったんだけどね…、“交換してくれなきゃ死んでやる〜”って泣きつかれたから仕方なく交換してあげたんだ…。まぁいざという時ため最後一人を残しといて良かったよ。まさかミルがあんなレアな限定仕様手に入れるとは思わなかったもん」

 ミル「…ふーん、そうなんだー、レドも持ってるのかー。ところでブブ」

 ブブ「えっ、何?」

 ミル「さっきレドは通常仕様だって言ってたけど、もし私も通常仕様だったとしても交換してくれたわよね…」


 ミルは急に目を据わらせて疑ったようにブブの方をジーっと睨みつけた。ブブはヒヤッとして少しおどおどしながら答えた。


 ブブ「と、当然だよ。ミルとフレンドになれるんだもん。レ、レアカードなんて全然惜しくなんてないよ。むしろミルにプレゼントできて喜んでたと思うよ」


 ブブの少し取り乱したような言葉を聞くと本当に交換したか怪しかったが、ミルはブブにとってレドと同じく小さい時から付き合ってる特別仲のいい仲間である。なんだかんだで交換したのではないだろうか。


 ミル「…まっ、信じてあげるわよ。小さい時からの付き合いだしね〜。あっ、もうすぐ50分よ。そろそろテレビつけといてもいいんじゃない」

 リリィ「そうだな〜、多分発表会に前ようの特別番組だろうし、10分ぐらいならいいか。よし、テレビ点けてよし!」


 “ピンポンパンポン〜”、リリィそう言った時ちょうど校内にアナウンスが流れ始めた。どうやら生徒達に体育館に来るよう連絡するための放送らしい。


 放送「ただいま、午前8時50分です。本日は9時より体育館でブレイブフォンの所有者の発表会が行なわれます。生徒の皆さんは、速やかに体育館に集合し、担任の先生の指示のもと、綺麗に整列して待つようお知らせいたします。繰り返します。ただいま、8時50分です………」


 放送は2回繰り返され終わると同時に廊下が体育館へと向かう生徒達の声や足音で慌ただしくなってきた。ブブとミルは保健室からテレビで中継を見ることになっていたためそのまま保健室に残っていた。するとドアの方に誰かが走って近づいてくる音が聞こえてきた。


 ミル「うん?誰かこっちに走ってくる音がするわよ。体育館は逆方向なのに」

 リリィ「本当だな。トイレでも行きたくなったんだろ」

 ブブ「あ〜、そりゃ急がないともうすぐ式始まっちゃうもんね〜。それとも漏らしそうなのかな」


 “バンッ”


 レド「誰が漏らしそうだって〜、ブブ」


 ブブ達が話していると急に保健室ドアが開き、大きな声を出しながらレドが入ってきた。


 ブブ「レ、レド!、どうしたんだよ、保健室なんかに来て。もしかしお腹壊して胃薬でも貰いに来たの?」

 レド「馬鹿、なんでだよ!、窓からお前がミルにおんぶされてるの見えたから、多分ここだろうと思って見に来たんだよ」

 ブブ「ああ、そう言えばさっきレイスの奴も心配して見に来てくれてたな〜。やっぱり僕ってクラスの人望が厚いんだなぁ」

 レド「えっ、レイスが。そういえばトイレに行くって言って一回出て行ったな。まさかあいつがお前の心配するなんてな。本    当にそれだけで来たのか?」

 ブブ「いやー、確かミルのブレイブなん…!痛ったーーーー!」


 ミルはレイスにブレイブナンバーを聞かれたことを喋られそうになって思いっきりブブの足を踏みつけた。


 ミル「ほ、本当にそれだけだったわよ。トイレに行くついでに見に来たんだって…。なんか私の馬鹿力のこと考えたら心配になっちゃんだって。失礼な奴だけど、意外と優しい奴よねー…」


 ミルは適当なことを言ってなんとか誤魔化した。そして足痛めているブブの方を怖い顔で睨みつけ、“喋らないでって言ったじゃない”っと威圧感でコンタクトを送った。それに対してブブは、“ごめん、忘れてた。でも今の仕打ちは酷すぎるよ”と、反抗的な顔でコンタクトを送った。


 レド「…なんだか変だぞお前ら。まぁいいや、ところで二人とも発表会には出ないのか?」

 ブブ「うん、僕はまだ体がちゃんと動かないからここでテレビで中継見るんだ」

 ミル「そ、私も怪我させっちゃった責任があるからここで付き添って見るんだ」

 レド「えー、ブブはともかくミルはせこいっすよ、リリィ先生〜。だって別に元気なんでしょう」


 レドは不満そうにリリィに抗議した。しかし流石リリィは教師だけあって、すぐに適当な言い分を思いつき、レドを納得させてしまった。


 リリィ「まぁそう言うな、レド。ミルはブブに一時的に動けなくなるほどの酷い怪我をさせてしまい、その責任を感じてわざわざ看病を買って出たんだ。最後まで看病させてやれ」

 レド「そ、そうだったのか…、今回はいつも以上に大怪我だったらしいな…。ミルも反省してるだな。そうとは知らず勝手なこと言ってすまなかった」

 ミル「い、いや別にいいのよ。悪いの私だし…、こいつのことは私に任せといて」


 ミルはリリィの頭の回転の速さに驚嘆していた。しかし流石に罪悪感を感じていたのか先程ように素直に喜べなかった。


 レド「ああ、お前だったら安心して任せられる。じゃあ頼ん……!ってお前それ伝説イラストレーター?剣と銃の狭間?の描いたイラストが貼ってある、超レアな限定仕様のトランプフォンじゃないか!なんでそんなもの持ってるんだ。いや、そんなことはどうでもいい!、……頼む、フレンド交換してくれ!」


 レドはミルの持っているトランプフォンを見るとすぐさま交換を迫った。レドもブブ程ではないがゲーム好きで、当然ミルの交換することで貰える限定パックは欲しかった。


 ミル「えー、確かあんたのトランプフォンって通常仕様だったわよね……ヤダ!」

 ブブ「ほぇっ!」


 ミルはレドの頼みを断った。ついさっきまでゲームになどほとんど興味のなかったミルだったが、自分の携帯がものすごいレア仕様だっと知ってしまったために、少し意地汚くなってしまったのかもしれない。実際興味のないものほどそれが貴重だと分かった時に、その価値の高さについつい固執してしまい、性格が歪んでしまうことはよくある。だが実際にカードゲームにおいてもっとも価値があるものは一緒にプレイしてくれるプレイヤーである。ブブもフレンド交換は渋ってはいたが、それはそのことを理解し容認してくれる仲間がいてこそである。あまりレアカードに固執して、一緒にプレイしてくれる仲間をないがしろにしている者は、ゲーマーの間で悪い噂が広まって、一緒に遊んでくれるプレイヤーがいなくなり、孤独感にかられて引退してしまうのである。まぁだがレアカードに固執してしまうようなら初めからこのゲームをやらないほうがいいかもしれない。もしかしたらそういったプレイヤーを追い出すためにレアカードというのは存在しているのかもしれない…。


 レド「そ、そこをなんとか頼むよ!。小さい頃からの仲じゃないか、俺とカード…、どっちが大事なんだ!」

 ミル「カードよ…、だってあんた小さい時から私とブブが喧嘩した時ずぅーっとブブの味方ばっかりしてるじゃない。そんな女の子を寄ってたかって苛める奴とフレンド交換なんてお断りよ」

 レド「そ、そんな!。あれはお前が女のくせに強すぎるのが悪いんじゃねぇか!。大体俺がブブの味方したところでボコボコされてたのはいつも俺達じゃないか!この町一番の拳法の使い手のくせにそんなこと言うなんてカッコ悪いぞ!」

 ミル「もう〜…、分かった、分かったわよ。じゃあ今日から一週間昼飯奢ってくれるなら交換してあげるわよ」

 ブブ「こ、こいつ…、僕には“通常仕様でも交換してくれたわよね”とか言いながら一週間も昼飯奢らせるつもりなのか」


 ブブがミルが交換を容認したことに少しホッとしたが昼飯一週間はやり過ぎだと思った。この学校の食堂は品揃えが豊富で、高いものなら千円以上するものもあった。きっとレドは一万円近くは奢らされることになるだろうと、ブブは思っていたが、実はそれ以上になるのだった…。


 レド「あ、ああ、それでいいんだったら喜んで奢らされていただきます」

 ミル「うん、じゃあ今日のお昼別のクラスの友達呼んで教室で待ってるから、早い目に来てね。あんた約束は守る男だからそ    の時に交換してあげるわ」

 ブブ「って友達の分まで奢らせるのかよ…!」


 どうやらミルは友達の分まで奢らせるつもりらしい…。まぁ男女二人で食堂なんかに行けばかなり目立ってしまうので当然といえば当然だった。ブブはその友達の人数ができれば一人であることを静かに願っていた…」

 リリィ「おい、レド。いいかげん喋ってばかりだと式に遅刻するぞ。いいから早く行け!」

 レド「お、そうだった。じゃあミル、昼休み必ず行くから約束な!」


 そう言うとレドは体育館へと向かって行った。ブブは女の恐ろしさを目の当たりにし、自分は絶対女にいいようにはされないぞと心に誓っていた…。







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