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獅子は芍薬を手に  作者: ゆき
2. 覚悟
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9.初夜の前に レオーネ

王妃の件がやっとひと段落つき、彼は久方ぶりに自身の王宮の庭を散策する暇を得た。馴染み深い王宮の草や空気、ひとつひとつを確かめながら。


ーーあ


北の泉のそばまで行ったところで、彼は豪奢な人影を見た。

ー見慣れない影ー


ーー王妃。


ぼんやりと泉を見下ろす王妃は一体何を考えているのやら。後ろからは、王妃の豪奢なドレスと、薄絹のベールを隔てても尚光る結い上げられた見事な黒髪しか見えなかった。王妃の侍女たちが彼に気づき、王妃に知らせようとするのを制す。


ーー振り向かせれば、表情を作るー


絶対に彼が見ることのできない妻の素の顔。彼の前の妻はー恨みや恐れ、悲しみや悩み をその顔に浮かべることはない。

ーどんな顔になるのだろう



ーー突如として王妃が振り向いた。


驚きに見開かれる美しい目、僅かに開いた薔薇色の口唇、白い顔。

初めて見る王妃の素の表情だった。


「陛下!申し訳ございません。少しも気が付かず…どうか、お許し下さいませ」


ベールの奥で、珍しく慌てる妻の顔をちらりと覗く。


「良い。そのように固くなることはない。私が黙っていたのだ」


「そのような…勿体のうございますわ」

妻の顔が少しだけ和らいだようにみえた。ーーなぜだ??


「ここで何をしておったのだ?」


「いえ、何もーーただ、ぼんやりとしておりました。陛下は、お拾いに?」


妻から彼に尋ねるなど珍しい。


「うむ」


「お珍しいことでいらっしゃいます

……それでは、私はこれにて失礼させていただきます。お邪魔をいたしました。お許し遊ばせ」



妻は優雅に礼を取り、侍女たちは彼に深々と辞儀をしてから去って行った。


今日はーー初夜だ









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