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獅子は芍薬を手に  作者: ゆき
幸福の王女
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4. 宴の中で ナレ

彼は王宮の建物のひとつーー麗明殿 ー今日の宴の会場だー の片隅にいる。従姉の眩いばかりに美しい姿が遠く霞むように見える。彼女は今、芙蓉の顔を彼の父に向けているのだ。

ー大事なお知らせがあるのー彼女の言葉が蘇る。


こんなことだったなんて。


今日、彼女と西の大国ナタレーシェの王太子との婚約が発表されたのだ。いつかは、こんな日が来るとはわかっていた。


ーでも

受け入れられなかった。


「こんなところにいたのね」


何度も頭の中で再生されていた、甘いしっとりとした杏のような声が聞こえた。顔を上げると、そこに王女がいた。

何て美しいんだー溜息が漏れるそうになる。慌てて非礼に気づいて溜息をのみこみ、優雅に跪くと型通りに言上する。


「王女殿下。ご生誕の日を臣下として、王族の端として、ここに畏みお慶び申し上げます。王女殿下の健やかなるご成長を神も賀したもうておられると存じます」


王女は頰を染めたー何と愛らしいのだろう。




「あの、ピアン。あの、僕と一緒に踊ってくれる?」

彼は崖から飛び降りるような一大決心をして申し出た。


「嬉しいけれど...ごめんなさい。先にルミール公爵と約束してしまったの」

従姉は美しくも残酷な笑顔で心の底から申し訳なさそうに首を横に振った。

やがて、彼が16年間付き合っていて一度もみたことがないほど目尻を下げたルミール公爵がやって来た。そして、彼に軽く会釈をするとー彼も王族だからー 従姉を連れて行ってしまった。



祖父のような歳のルミール公爵と踊る従姉の姿をぼんやりと眺める。雪のように白い顔。芙蓉の顔。芍薬のような立ち姿。華やかな従姉ー

とにかく、溜息が止まらない。

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