表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/81

第8話 地獄の番犬(1)

「地獄の番犬ケルベロス……」


アンナの呟きに応じたかのように6つの瞳がこちらを捉える。

その色は獲物を見つけたときの獣の喜びに染まっていた。


「グルルルル……」


唸り声が大広間に響き渡り、唾液が3つの口から溢れ出す。


「グオオオオォォォォォ!」


真ん中の首が吠えた。

巨大な黒い影が一瞬でこちらに迫ってくる。

速い。


「くっ」

「つっ!」


俺は転がるように、いや転がって突進を避ける。

アンナは流れるように、それでいてものすごい速さでバク転した。


ケルベロスの背後から少し離れて二人で位置をとる。

俺らは言わずとも示し合わせた狙いは出口。

律儀にこんな明らかやばい奴の相手をするよりかは逃げた方が生存確率は高い。

だがケルベロスはお見通しと言わんばかりにこちらへ方向転換、背後を見せた瞬間に食らいついてやるといった風で釘づけにされた。

地獄の番犬の名は伊達ではないようで、死者を地上へは出さんとばかりに赤い瞳で睨みつけられる。

逃がしてくれなさそうだ。


「伝説の魔獣がお出ましとはね」


アンナがレヴナントに囲まれていた以来の汗を拭う。

それだけやばい相手ってことだ。


(パパ、魔獣ってのは魔物よりとっても強いの)


メリーが解説してくれる。

要するにボスキャラ登場って訳か。

俺は必死にケルベロスの弱点が何かないか記憶を探る。

確かオルフェウスは竪琴の演奏で眠らせたはずだ。

しかし俺は音楽はからきしだし、アンナも今は潜んでるメリーも長けているとは思えない。

それに、


「グルルルルルルル……」


獰猛に唸る、狩猟スイッチの入ったこの番犬に通用するのだろうか?

それにあくまで伝説にすぎない。

幻想を過信しすぎる危険はスケルトンで習ったばかりじゃないか。


そもそも相手の動きを見ているのでいっぱいだ。

冷や汗が背中を流れる。



今度は突進ではなく跳びかかってきた。

ケルベロスダイブとでも言うべきそれは、

大広間の天井に届きそうなぐらい高く、

それでいて落ちてくる巨体から感じる風圧は人をペチャンコにするくらいわけないと語っていた。


落ちてくるケルベロスは必死になれば距離をとって躱すことはできた。

落下攻撃は。


四本の脚で巧みに着地した三頭犬は、振り返る要領で尾を叩きつけてきた。

あの長く、しなやかな鞭のような尾だ。


アンナはまるで長縄跳びのように跳んで避けたが俺はそうもいかなかった。


「かはっ」


筋肉で出来た尾による衝撃が俺の腹にみしり、と直撃する。

数十メートル吹っ飛ばされ広間の壁にぶつかる。

ぶつかった俺を中心にヒビが入り、破片が飛び散った。


ズルズルと床に落ちたが瓦礫の中からなんとか立ち上がる。

口の中から鉄の味がする、と思ったら血だ。

ぶっ、と行儀悪く血の混じった唾を吐く。

生きているが危険だと体の痛みが訴える。


「クロウ!」


アンナが心配して声をかけてきたが視線はケルベロスへ向いたままだ。

こちらに寄ろうとした瞬間、奴は無防備な背中を鋭い爪で割くだろう。


だがアンナは一瞬の隙を突き、俺の予想を上回るスピードでジグザグに俺の下へ移動してきた。

盗賊を生業とするぐらいだからボギーという種族は、ボギーである彼女は本気で走れば速いだろうと思っていたがビックリだ。


俺はそんな光景にちょっと笑いそうになったが、すぐにそんな気は消し飛んでしまった。



ケルベロスの左の首の。


開いた口に。


黒い球が回転している。



「アンナ!」


黒い球が放たれる。

アンナの無防備な背中を狙って。


嫌らしいことに追尾ホーミングしてやがる。

俺は腹の激痛を無視してアンナの方へ走り、彼女を抱えて横っ飛びする。



ズガアン!



黒い球がさっきアンナのいたところを直撃。

広間の床が無残に砕け、破片が舞い上がる。


無理に動かしたのと、受け身もとらず着地したせいで体が更に悲鳴を上げる。


「クロウ!しっかりして!」


彼女の瞳はいまや凛々しさは無く、迷子になった子供のように怯え涙が浮かんでいた。


ゆっくりとケルベロスが近づいてくる。

奴の口元が僅かに上がっている。

笑っているのだ。

止めを刺してやるの(チェックメイト)だと。


「アンナ逃げろ!」


血を吐きながら俺は叫ぶ。


「盗賊の身であろうと命の恩人を置いて逃げるほど馬鹿じゃないよ、あたしは!」

「いや馬鹿だ!俺の事はいいから早くしろ!」


アンナは俺の腕を抱いて逃げようとしない。

今度はケルベロスの右の首から炎がちろちろと舌のように覗いている。


ああ、俺たち焼かれるんだ。地獄の炎に。



高温の風が一瞬頬を撫でる。

これからもっと熱い炎が抱きしめに行くよ、と教えてくれるように。

ケルベロスの口から火炎放射器のように炎が広範囲に吐かれた。




しかし炎は俺らの身を焼くことはなかった。



ずっと影の中に隠れていた俺の相棒。


パパと俺を呼ぶ可愛らしい黒白モノクロな女の子。



メリーが俺らをかばうように両手を大きく広げ、黒い大きな渦巻く円で地獄の炎を防いでいた。



ケルベロスサーガのプロテクトギア好き。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ