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迷殺  作者: アキラ
9/13

第9死 仲間⑤

その二人はごくごく自然に入ってきた。

あまりにも自然に入ってきすぎて、違和感を感じることが出来なかった。


だから俺たち3人は彼らに声をかけられた瞬間、覚悟した。

(殺されるのではないか)と。

この反応は日常生活を送っている人々にしてみれば、おかしいだろう。

だけど、昨日と今日で既に何人かの犠牲者が出ているこの状況下における

反応としてはいたって正しいものであろう。


俺たちは来る最後を思い描いた。

しかし、いくら待っても2人にそんな素振りはなかった。

むしろ、彼らはこちらの反応に戸惑いを見せている。


その反応を見て、やや早計かもしれなかったがこの二人に

俺たちを殺す意思はないのだと判断した。



そしてこちらの動きを察してくれたのか、

彼らはすっと息を吐くと俺たちを見据えた。

「あ、驚かせてしまったようでごめんなさい!!

ついつい気配を消して行動していたものだから。悪気はないの。

本当にごめんなさい」

入ってきた二人のうちの一人はそんな謝罪の言葉を述べながら、頭を下げる。

それに続く形でもう一人の方も頭を下げてきた。


こんなことをされてしまうと、逆にこちら側に

罪悪感が沸いてしまうというものだ。

「あ、いや、頭をあげてください。突然入ってこられたことには驚きましたが、

何か用があってきたのでしょう。

それなのに驚いてしまってこちらの方こそ、すみません」

俺はこの罪悪感を払拭しようと、こちらも頭を下げることにした。

ただまだ信用に足りない二人なので、

外行きの仮面を被りながら口に出すことにした。



そして、俺たち3人と入ってきた2人で向かい合って話を聞くことにした。

2人は双子か姉妹だろう。

さっきまではそんなことに気を止める余裕がなかったこともあり、

2人の顔をじっくり見ていなかったが、

やや落ち着きを取り戻した俺は彼らを見た。

その結果、彼らがそうだという風に認識した。


二人は綺麗な顔立ちをしていた。

外ではモデルと言ってもおかしくないほどだった。

そしてどちらの顔も鏡が間にあるのかと言っても

おかしくないくらい、そっくりだった。

いやそっくりというよりは同じといった方が正しいかもしれない。

目や鼻、口といった顔のパーツの全てが同じであった。

ただ一つだけ顔に相違点をあげるとするならば、

表情筋が硬いか柔らかいかだろう。

おそらく姉と思われる方は表情筋が柔らかいのか、

この刑務所という場所には似つかわしく無い笑みを浮かべていて、

温かい気分にさせられる。

それに対して、妹だと思われる方は表情筋が硬いのか、笑顔の一つもない。

だから心なしか冷たい空気が彼女の周囲を纏っているような感じがする。

それに加えて、全く声をあげないこともその冷たさを助長している感もあった。


もしもこの二人が無表情のまま、

顔だけ出していたらどちらがどっちかなんて判別できないだろう。

ただそれは顔を対象にすると。という前提条件があってこその比較だ。

二人がどっちかなのかを判別するのは、その身体を見れば一目瞭然の事だろう。

姉だと思われる方は女らしい体形をしていて、

なおかつ胸も一般よりも大きい方だ。

しかし妹と思われる方には無駄な肉が一切なく、

どちらかというと男みたいな体形で顔とのアンバランス感が否めない。

もちろん胸も平坦だ。


と俺は彼らが話し出すまでの間、勝手な分析をしていた。

しかし、いくら立っても彼らが次の言葉を発することはなく、

少しだけいら立ちが募り始めた。

だから俺はめんどくさく思いながら、切り出すことにした。


「それで貴方たちの用とは何なのですか?」


その言葉を聞いた彼らはお互いの顔を見合わせ、頷きあうと、

さっきと同じように姉と思われる方が口を開いた。

「いきなりこんなお願いを申し上げるのは、差し出がましいことは思いますが、

どうか私たちを仲間にしてくれませんか!!」


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