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迷殺  作者: アキラ
8/13

第8死 仲間④

その部屋はまさに昨日、俺たちが通りかかったあの部屋だった。

あの時、殺しが間近で行われていた。それもあんな凄惨な現場の近くで。


この刑務所の内部には危険人物がこんなにもたくさんいるのだという

真実に今更気付いてしまった。

こんな刑務所から無事に出ることが叶うのか、わからない。

だけど今、俺がするべきことはひとつだった。


「なぁ。竜二」

「な~に、いっくん??」

「あのさ、俺考えたんだけど、もう1人くらいは仲間を入れた方がいいと思うんだ」

この提案は昨日と今日起こったことを総合的に考えた末にたどり着いた答えだった。

現時点での俺の仲間は竜二と美穂の二人しかいない。

竜二の戦闘能力に関しては未知数のところが多いが、

美穂に関しては全くと言っていいほど戦闘には不向きだろう。

だけど、この刑務所の中には人を殺してもなんとも思わないやつが結構いる。

そういう奴がいつ俺たちを標的にして襲ってくるかもしれない。

そうなってしまった場合に、こちらの命を守ることが

出来るだけの戦力は必要になるだろう。

今のこの3人なら、すぐに殺されることはおおよそ間違いなかった。


だからこその提案だった。

そしてそのことを竜二も分かっていたようで、頷いている。

「俺はいっくんのその案に賛成だよ。

人手はたくさんあった方がいいもんね。だけど・・・」

竜二は賛成はしてくれるようだったが、何か気がかりがあるのか言葉を止めた。


「まだ仲間作っていない人なんているのかなぁ。

いっくんも分かると思うけど、昨日の段階で結構な人が仲間を作っていたよね。

ということは現時点でまだ一人でいる人って少ないと思うんだ~。

それに俺はどんな人でも全然大丈夫なんだけど、美穂ちゃんがね~。」

竜二が気がかりに思っていたことを俺も考えてはいた。


昨日、もしも竜二が俺に話しかけてくれていなかったら、

そう考えると怖くなってしまうほどに昨日、

仲間を作ることが難しいことを知った。

ほとんどの人間は共通の話題や趣味で話を広げていって、

そこに仲間意識が生まれるものだ。

そして俺は完全に出遅れたこともあって、

仲間意識を形成することさえできなかった。

元々、俺がこの刑務所に入ってから話をしていたのは楓さんだけだったし、

あの時も楓さんの方から俺に話しかけてきてくれたからこそ、

話せたようなものだった。

俗にいうコミュ障なのかもしれない。

だから、俺にはこの刑務所で話したことのある人は楓さんしかいなかった。

このことが昨日の直接の敗因だったのかもしれない。


ここまで考えてくると、

もうこの時点から仲間探しを行うのは不可能なのではないか。

という考えにも至る。


それにもう一つの懸念点がある。

これも竜二が言っていたこととおそらく同じ意味だとは思うが、

もし仮に新しい仲間を見つけることが出来たとしても、

その人が普通であるという確証はない。

昨日の時点で仲間を作れていない。というのは俺みたいに

出遅れた者や人間関係を築くことを避けていたもの。

それ以外にも考えが歪んでいて仲間にいれたら

自分たちが殺されるかもしれないと思わせるほどの変人くらいだろう。

後者の方であれば、絶対にお断りだ。

だが前者の方であっても美穂の存在が大きな問題となってくるだろう。

俺と竜二の二人であればどんな人が来ても対応できるが、美穂はそうではない。


昨日、接してみて分かったことだが、美穂は人見知りが激しい。

仲間になった俺でさえもいまだに警戒心むき出しでこちらを睨んでいる。

ということは美穂の人見知りにも対応のできる人であり、

かつ仲良くもなれそうな人であることがとりあえずの前提条件だろう。

なぜか、竜二は美穂が入れたくないと言えば、

入れないと心に決めているようなそぶりを取っていた。

だからこそのさっきの発言なのだろう。


こうなってくると、仲間集めもかなり難しくなってくる。

美穂の人見知りが発揮されず、かつ普通の思想を持った人となるのだから。


そんな人がまだ残っているのか分からない。

それにたとえ、仲間になった瞬間は普通の人を演じていたとしても、

楓さんのように歪んだ思想を隠し持っている人もいるかもしれない。

こうなってくると、本当に厄介であり、このまま3人でいることも考えた。

しかし、昨日の凄惨な現場を思い出すと、そうも言ってられないことは自明だ。

「はぁ、めんどくさいな」

そう呟いた時だった。


「あの。今っていいですか??」

そう言いながら、俺たちの部屋に2人が入ってきたのは。


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