表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷殺  作者: アキラ
6/13

第5死 仲間②

竜二が俺のことを連れて行ったのは、自身の部屋だった。

「さ、入って入って」

そう言いながら竜二は俺のことを中へと誘導していった。

中は俺たちの部屋と同様、トイレとベッド、

それに各自が使うように配置されている棚が置いてあり、

その中には何冊かの本が入れられていた。

そして、この部屋に入ったときから気づかないふりをしているのだが、

どうもそうはいかなかったようだ。

「あ、竜二さん、お帰りなさい!!」

その声と共に部屋の隅にいた少女は竜二の体に飛び込んでいった。

彼女の存在には部屋に入った瞬間に、異常なほどに刺さる視線から

感じ取ることができていたのだが、

もしかしたら精神に問題のある人なのかもしれないと、

とっさに視線を外すことにしていたのだ。

しかし、どうやら先ほどの発言から、そんなことはなさそうだ。


彼女は竜二の腹部に顔を猫のように擦り付けていて、

普通の人が見れば仲のいい兄妹にしか見えない。

だが、ここは刑務所であり、つまりはそんな可愛らしい態度を取っていたとしても

犯罪を犯しているという事実には変わりがない。

というか、この懐きようからして、竜二と同部屋の囚人であることも確かだ。


と、そこまで考えて、先ほどの竜二の条件が頭をよぎった。

(もしかして、竜二の言う条件ってこの子に関係することなのでは)


そう考えていたことが竜二には分かってしまったのかもしれない。

竜二は少女を自分の体から離すと、こちらに向き直った。

「いっくん、さっき俺が言った条件っていうのはね、

君が今考えていることと同じだと思う。単刀直入に言うね。

俺と組むならこの娘 雨宮美穂ちゃんも仲間に入れてあげてほしいんだぁ。」

竜二の言ったその言葉は、予想通りだった。


そう来るだろうなと竜二と彼女の触れ合いから薄々感じてはいた。

しかし、俺にとってこの少女を仲間に入れるという選択をすることは

リスクしかないように感じて仕方がなかった。

ただでさえ、仲間になってくれるのが竜二一人だけでかなり心もとないというのに、

それに加えて、こんな小さな女の子を仲間に入れるのは、

足手まといにしかならない気ガする。

だからと言って、この条件が呑めないと竜二に言えば、彼は仲間にはなってくれないだろう。

そうなれば、またさっきの場所に戻って仲間集めしなければならないわけなのだが、

どう考えてももう仲間になってくれるような人が見つかる算段はない。


そうなれば、最悪の場合一人でこのゲームを生き抜いていかなければならなくなる。

それだけは避けたかった。

だから俺はかなりしぶしぶではあったが、

竜二と雨宮美穂と呼ばれた少女の二人をそれぞれ見てから、決意した。

「わかったよ。竜二。その条件を呑むよ これからよろしくな。え~と」

「美穂。美穂でいい」

俺が少女に握手を求めるべく、名前を呼ぼうと思い、どう呼ぼうか悩むのだったが、

少女は俺の差し出した手をぎゅっと握ると、呼び方を決めるような言葉を言いながら、

微笑みを浮かべてくれた。

俺は少しだけ呆気にとられたが、美穂の手を握り返した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ