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迷殺  作者: アキラ
13/13

第13死

が、助かったのも事実。

反対の意思を示していた妹の方も何とか納得したような空気を放っている。


パッと良い言い訳が思いつかなった俺としては渡りに船状態と言っても過言ではない。

貴重な戦力を失わなかったことにも安心した。


「そ、それで、仲間ってことでいいんだよな??」


我ながら、汚いことだとは思うが再度の問いかけ。

さっさとこの二人を仲間に引き入れたかった。


「はい♪これからよろしくです!!」


「・・・・・。」



そんな俺の提案に快活に微笑みながら愛想を振りまくおそらく姉とそれとは対照的にまたもや無言でこちらを睨む妹。



(どこまでも正反対な二人だな・・・。)


「そうか。それじゃあ、これからよろしくな。俺は紫峰伊南だ。君たちは・・・」


「あ、私は宮坂舞で、こっちは・・・。」


「・・・・・。優」


俺が手を差し出すと、舞の方は手をその柔らかい手で握り返してくれたのだが、やはりというか当然というべきなのか、優はぶっきらぼうに名前を名乗るだけだった、





カーンカーンカーン


伊南の仲間に舞・優が加わった同時刻。

ある部屋では見るも無残な地獄が広がっていた。


「い、いやだ、や、やめてくれ!!」


男は助けを懇願するように叫び声をあげる。


「は?嫌なんだけど」


グシャ


「う、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


そんな助けを求める男の願いなど一切聞く耳を持っていないのだろう。

青年は思い切り振りあげた鉄の棒で、男の足を思い切り殴る。

嫌な音が部屋中に響き、男は痛みのあまり先ほどの助けを求める声よりもはるかに大きな声で叫ぶ。


その足はもう何度、殴られたのか分からない程に色は紫色に変色し、

その足の形も普通の足と明らかに違うように変わってしまっている。


男はもう一度鉄の棒を振り上げる青年を見て、後ろにお尻を使って後退る。


色も形も変わってしまった足が地面を這うたびに強烈な痛みが襲う。


「どうしてこんなことをするんだ」


男はあまりにも理不尽な扱いに痛みを抱えながらも青年を批判する。


にやり


その瞬間、青年の顔に恐ろしい程に軽薄な笑みが浮かぶ。


「ひぃ」


男はその青年の顔を見た瞬間、未だ感じたことのない恐怖を感じた。

見てはいけない、悍ましいものを目にしてしまったそんな感覚


男はこの場から一刻も早く逃れたい。

そんな気持ちが先ほどよりもいっそう強くなっていた。


「あははははははははははははははははははははははは」


急に青年は笑い声をあげる。

なにがツボに入ったのかも面白かったのかも、目の前で怯えている男には皆目見当が付かない。

ただただ、その狂気に満ちた笑い声が恐ろしかった。


「どうしてこんなことをするのか。か。あはははははは。面白いことを聞くね」


青年は関心でもしているかのように頭をうんうんと頷かせる。


男は先ほどから震えが止まらない。

足を潰されてうまく動けはしないが、動こうと思えばなんとかできそうではある


しかし、それを阻むように身体が小刻みに痙攣し、その動きをできなくさせていた。


青年はそんな男を見ると一層嗜虐心を含ませた笑みを浮かべ、鉄の棒をまた男に向けて近づけていく。


男はそれが近づく度に呼吸が浅くなり、冷汗が止めどなく溢れ出していく。


(なんで俺がこんな目に)


そんなことを思っている内に青年の持っていた鉄の棒は男の顎を擦る。


(つめた・・・。)



ビュン


男が金属特有の冷たさを感じたのとほぼ同時に、青年の持っていた鉄の棒は風切り音を上げながら、男の顔を打った

青年は顎に触れさしたのと同時に鉄の棒を思い切り動かしていたのだ。


「かはっ」


男の頬から鮮やかな赤が垂れていく。

まさか足の次に顔が来るとは想定していなかったのかもしれない。


男は打たれた頬が余程痛いのか悶絶している。


「ふふふ。いい反応するな」


青年は悦に浸っていた。

その笑みは嬉しいとか楽しいとかそういった正の感情に溢れていた。


「っっっっっ!!」


しかし、そんな男の痛みなど全く気にも留めていないからなのだろう。

青年は先ほどよりも強い力と勢いで間髪入れずに男を殴る。


次は目の端が切れたのか、涙のように頬を伝っていく血


「も、もう、あめてくれ!!!」


男は精一杯口に力を入れて懇願する。

たった2発だけではあったものの、先ほどの足に与えられた痛みよりもこちらの方がいたかった。

正直、口角を動かして、音を紡ぐことさえも痛みを発する。


それでも懇願せざるを得なかった。

これ以上殴られ続けられたら、確実に壊れてしまう。


「や~だね」


しかし、そんな男の懇願などさらさら意に介する気なんてないのだろう。

青年は今度は思い切り振りあげた鉄の棒をその脳天へ向けて下ろすと、嗜虐心に溢れた笑みを浮かべる。


男の視界には無数の光が点滅し、耳もキ~ンという音がこだましている。


「あはは、こんな面白れぇことやめれるわけないだろwww」


男はそんな青年の理不尽な言い分を最後にその生涯を閉じた。



「あ~A,ついつい力が入りすぎて壊しちゃったな」


そして、青年は深いため息をつきながら、もう既に肉塊となってしまった人間だったものを足蹴にしながらつぶやく。

その顔は先程とはうって変わって寂しげで虚しそうな様相を呈していた。

まるで大切なおもちゃが壊れてしまった時のような・・・。



「はぁ・・・。次を探すか・・・。」


青年はその言葉と共に立ち上がると、部屋の外へと足を踏み出した。



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