第12死
「え?」
開いた口が塞がらない。
何事もなかったかのように目の前にいる少女たちはこちらに笑顔を向ける。
足元にはさっきの男たちが伸びている姿がある。
これをこの二人がやったのか。
信じられない話ではあるが、どうもそれが真実だろう。
視線を竜一の方へ寄こすと、いまだに震えているのか目を瞑ったままだ。
「あ、え~と、君たちがその人たちを・・・。」
「あ、はい。弱くて良かったですよ」
姉の方は先ほどよりも満面の笑みを浮かべ、妹の方はこくこくと頷いている。
前言撤回だ。
その言葉を聞いて、さっきまで自分の考えていたことが間違っていたことに気付く。
この2人は十分戦力になる。
あそこで怯えている竜一と違って。
あと少し、2人を追いだしていたかと思うと恐怖が込み上げてくるが
ひとまず今は・・・。
「あ、ああ。助けてくれてありがとう。それでさっきの話なんだが・・・。
喜んでチームの仲間として歓迎するよ」
「本当ですか!!やった。すごく嬉しいです」
俺は真っ先に彼女たちを仲間に引き入れようと言葉を発した。
これだけの逸材を逃したら、今後俺たちはどんどん不利になっていくことだろう。
姉の方はそんな俺の言葉を聞いてすごく嬉しそうに飛び跳ねている。
さっき男たちを伸したとはどうにも思えなかった。
これで少しは生き残れる可能性が増える。
そう思った矢先。
「ちょっと待てよ。姉貴」
さっきまで全く言葉を発していなかった妹の方が姉の肩を掴んだ。
「え、どうしたのよ。
これで私たち2人だけで寂しい想いをしなくて済むのよ。やったわ」
「いやさ、姉貴がそんなに喜んでる中あんまり言いたくはないんだけどさ・・・。
こいつ、さっき俺たちのことを断ろうとしていたよな?
それでさっきのクズが入ってきて、
俺たちが対処したら、この手の平返しだ。信用できねぇな。」
妹はその顔からは全く予想できないほどにガラの悪い口調だった。
しかし、そんなことは今はどうでもいい。
彼女の言ったのは正論だった。
確かに俺は2人の申し出を断るつもりでいた。
それが偶然、襲ってきた二人のおかげでその考えを変えたわけで。
おそらく、あのままだったら、俺はこの申し出を間違いなく断っていた。
見抜かれないと思っていたわけではない。
ただ、あまりにもその言い方に反論の余地が
与えられていないことに焦りを感じる。
このままではこの2人は仲間になってくれないのではないか。
そんな懸念が頭を過る。
(考えろ。俺・・・。何かないか。この妹を説得できる何か。)
俺は引き止める策を必死で考える。
しかし・・・。
「優。そんなことは分かっているよ。でもね。こんな危険な場所に
私と優の二人だけって心細いじゃない?
他の人たちは私らのことを敬遠するわけだしさ。
ここは少し不満もあることにはあるけど、目を瞑ってあげよ?ね?」
まさか姉の方から助け舟が出されるとは思ってもいなかった。




