第11死 仲間⑦
男たちは鬼気迫る表情で俺たち5人に刃物を向けながら迫ってくる。
「こんなことをしたくはなかった。したくはなかった。したくない。」
男の一人は何やらぶつぶつと言っていて、
もう一人は無言ではあったものの目が真っ赤であった
今回ばかりは殺しに来たに違いないと咄嗟に悟ってしまう。
それほどに彼らからは殺意のようなものが渦巻いていたのだ。
そしてこんな時に限って、俺の手元には拳銃がなかった。
これは本当に絶体絶命の状況なのかもしれない。
昨日のあのアナウンスが本当であれば、1日に殺せるのは1人までだ。
だとすれば、ここにいる5人のうちの誰か2人が殺されれば、
彼らは閉じ込められるだろう。
けれども、そんな保証はどこにもありはしない。
昨日と違い俺たちの距離はひどく密接している。
5人を一気に殺そうと思えば、容易にできるだろう。
それにこんな場所にあの織が落ちてくることはおおよそ考えられないし、
もし落ちてきたとしても巻き添えを食らってしまうのは確かなこと。
どちらにしても、俺たちが生き延びることのできる選択肢はこの二人と戦って
生き延びることしか残されてはいない。
しかし、武器もない。守らなければいけないものがあるこの状況下
相手は殺す気満々だ。
竜一の方をちらりと見るも、怯えているのか腰を抜かしている。
これでは隙をついて逃げることもできなそうだ。
もうこのまま俺たちは殺されてしまうのかもしれない。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
男の一人が刃物を勢いよく振り上げた。
その視線の先にあるのは、俺だ。
男の刃物の先が俺を捕える。
(やばい。殺される…。)
瞬間、俺の脳裏に走馬灯のようなものが浮かぶ。
(もう無理だ)
俺は覚悟を決めて、目を閉じた。
(どうか俺以外の奴らは、逃げてくれよ・・・。)
しかし、いつまで経っても刃物が自分の体を刺した
感触も痛みも音も聞こえてこない。
ドスッ
代わりに聞こえたのは、何かを強く殴ったような音と男の呻き声だった。
しかし、その呻き声はどうも竜一の声音とは違う気がした。
(何が起こっているんだ?)
俺は恐る恐る固く閉じていた目を開ける。
瞳に映った光景、それは衝撃のものだった。
呻き声を上げながら倒れ込んでいる男の傍らに笑顔でたたずむ少女の姿があり。
その隣では、もう一人の男を寝技を駆使して押さえつけている少女の姿があった。
男たちはどちらも意識を絶たれたかのように動きを無くす。
二人の少女はこちらを振り返ると、姉の方は安心させようと笑みを深めた。
「もう安心していいですよ。」
「やれやれだよ。まったく・・・。」




