思い出
作者多忙の為、連載が遅くなる事がありますが、ご了承ください
少し隆の過去の話をしよう
今から語る過去は本編から2年前、隆が16歳、高校二年生の時の話
季節は初夏、函館東城高校という学校の、お昼休憩・・・
「ぐ〜ぐ〜」
激しい音のいびきが、教室中に響き渡っている
「隆さ〜ん!」
慎也が凄い勢いで、教室に入ってきた
「ぐ〜ぐ〜」
慎也はドキッとした
何故かと言うと、隆の寝起きは相当悪いからである
「久しぶりに、学校来たと思ったら、朝からこの調子だよ!」
と言いながら、慎也の肩を叩いたのはハルだ
「あっ!ハルさん、おはようございます!」
慎也はハルに頭を下げた
「おう、で、何かあったの?」
ハルが片手にパンを持ち、口をモゴモゴさせながら言った
「亜沙美さんの件で」
慎也が言った
「あん?亜沙美さん?さっき来てたぞ、」
ハルは、慎也が入ってきた反対の入口を指差した
「え!?私の件て何?」
と言いながら、教室に入ってきたのは、名前は亜沙美、年は17歳で隆のひとつ上、身長170センチ以上あり、茶色い長い髪で、B86(Fカップ)W56H90のプロポーション、男子生徒の注目の的である
「あ、亜沙美さん、まだいたんですか?コウさんに怒れちゃいますよ、ただで際、隆の事、コウさん疑ってるのに」
ハルが、周りをキョロキョロしながら、おびえた様に言った
コウさんという人は、隆のひとつ上の先輩、亜沙美さんの彼氏で、東城のナンバー2と言われている
かなり喧嘩が強く、獲物を見つけると必ず逃がさない、その上、殴り合いになると、狂ったかのように人を殴りつける、周りからは、狂犬と言われている
こんなエピソードがある、一年前、入学してきたばかりの隆が、コウさんに喧嘩を売り、5分ともたなかった、隆は病院送りになった
ハルや慎也も、そうとう喧嘩は強いが、この話を聞き、この人だけには、近づかないようにしていた
「あっ、昨日別れた、あんな男」
亜沙美が投げ捨てるように言った
慎也が割り込むように
「そうなんですよ、それで、コウさんが隆さんの事疑ってて、「隆を呼んで来い!」って、凄い怖い顔で」
「うわ〜それはやばいなぁ〜・・・」
ハルが顔をしかめて言った
「それにしても、何で別れたんですか?」
慎也が亜沙美に聞いた
「あいつ、早漏なんだよ!」
亜沙美が言った
「そ、早漏って、それだけ」
慎也が笑いを我慢しながら言った
「それ、マジすか?」
ハルも笑いを我慢している
「冗談だよ・・・色々あってね」
亜沙美が言った
「まぁその話は置いといて、なんで、隆が疑われてるのかな・・・それもず〜と前から?」
ハルが不思議そうに言った
「ああ、ず〜と前にね「隆ってかっこいいよね〜」って、言っただけなんだよ」
亜沙美が言った
「じゃ、亜沙美さん、コウさんに誤解だって言って下さいよ」
ハルが言った
その瞬間、教室の戸が、もの凄い勢いで開いた
その場にいた三人はビックリして、言葉が出ない
三人そろって後ろをゆっくりっと、振り返った
教室に現れたのは、やはりコウだった、
教室に居た、ほかの生徒はその空気に耐え切れず、ソソクサと出て行った
「おい!慎也、お前はどれだけ俺を待たせる気だ?」
低い声でコウが言った
「す、すいません!」
慎也は泣きそうな顔をしながら言った
「まぁ、お前は後で、おしおきだな」
妙に高い声でコウの背後から、現れたのは、千春さんだった
千春さんという人は、東城のナンバー3、すぐに人を刺すことから刺魔と呼ばれている
一度、ハルも刺されている
「ち、千春さん!」
ハルがビックリしながら言った
「よう、ハル元気だったか?俺に刺された脚はもういいのか?」
千春がケタケタ笑いながら、嫌味ったらしく言った
「・・・」
ハルは、ビビって声が出ない
「おい!それ位にしておけ!」
ハル達の後ろから、いつの間にか起きていた隆が、椅子から立ち上がりながら千春に言った
「お前、誰に口来てるんだ〜〜〜!」
ハル達をかき分け、千春が隆の目の前まで行き、息が掛かるくらい顔を近づけ睨んでいる
だが、隆も負けていない位の睨みを利かせている
「おい!亜沙美、俺の所に戻れ!じゃないとこいつを殺す!」
コウが少し笑みを浮かべながら亜沙美に言った
「ぜ〜〜〜〜ったい、ヤダ!私は隆が好きなの、あんたなんか大っ嫌い!それにね、隆があんたに負けるとも思えないしね」
亜沙美が挑発するように言った
その瞬間、ハルは思った
(え〜〜〜〜!なんで〜〜亜沙美さん、誤解でしょ!)
それと同時に慎也が思った
(終わった!)
コウが顔を引きつらせながら
「おい!隆、今日の放課後、校舎裏で待ってる、必ず来いよ!」
隆は、無言のまま、千春と睨み合いをしている
「おい!千春行くぞ!」
コウが廊下に向かいながら、千春に言った
「お前、必ず殺す!」
千春が隆に捨て台詞を言い放ち、コウの後を追った
「あ〜死ぬかと思った〜」
慎也は腰を抜かしたかのように、その場に座り込んだ
「隆、ごめん、あんなこと言って、巻き込んでごめんね」
亜沙美は先ほどの、気丈な態度とは打って変わって半分泣きそうな顔で言った
「ああ?いいよ別に、決着も付けたかったしね」
隆が言った
「ええ!?隆さん行く気なんですか?」
慎也が驚きながら言った
「ああ、行くよ」
隆が言った
「なんで、誤解だろ!行ったところで、またタコ殴りにあって終わりだぞ、それに亜沙美さん!何であんな嘘ついたの、コウさんと別れるのに、隆の事使うなよ!」
ハルが怒鳴りながら言い放った
「おい、ハルやめろ、大丈夫だ、絶対負けない!俺を信じろ」
隆が、ハルの両肩に手をおいて静かに言った
すぐさまハルは手を払いのけ
「何の根拠があって言っている、お前は一回やられているんだぞ、それにな、俺はお前がやられる姿を、もう見たくない」
「隆?言ってないの?」
亜沙美が隆の方を不思議そうに見た
「・・・」
隆は無言だ
「何の話だ?」
ハルが言った
「あん時、最初は隆が優勢だったんだ、だけど途中で後ろから、千春が石で・・・」
亜沙美が言った
「マジで!、それ卑怯すぎますよ」
慎也が言った
「隆、何で言わなかった?」
ハルが聞いた
「負けは負けだ、それに言ったところでどうなる?」
隆が、静かに答えた
「まぁ、そうだけど・・だけどよ・・」
ハルは納得ができず、何をしたいか分らないような動作をしている
「ハル、あとね、私がコウに言ったことは本当なの、私は隆の事が好きなの、好きな人がいるのに、コウとは付き合えないと思ったんだ、だから昨日、コウにはちゃんと言ったつもりだった・・・」
亜沙美が淋しそうに言った
「悪いが、亜沙美さん、俺はあんたとは付き合えない」
隆が言った
「わかってる、隆の中には私がいない事ぐらい、わかってる」
亜沙美が淋しそうに言った
隆は、亜沙美の事を女とは思いたくなかった、要するに、隆にとって女とは、ただやるだけの存在だった、亜沙美と付き合う事によって、そういう存在にしてしまうのが嫌だったんだ、いつまでも尊敬できる人で居てほしかったのだ
放課後・・・
隆は校舎裏に向かっている、顔つきがいつもと違う、緊張している面持ちだ
ハルや慎也にはあんな事を言ったが、やはり不安はある
(また後ろから来るんじゃないか?)隆は用心深く歩いた
先の方に、無数の影が見える
隆の心臓が高鳴った、一歩また一歩踏みしめる、姿が見えてきた
コウ、千春、その後ろに千春の舎弟どもがいる
コウが真剣な表情で腕を組んでいる、
千春と舎弟どもはケラケラ笑っている
千春は隆に気づき、隆の方を向き笑いながら言った
「よく来れたな隆!、家に帰って女と乳繰り合ってた方が良かったんじゃね〜の?」
千春は高笑いをしながら言った
隆は、そんな千春を無視しコウに近づいて行った、
「隆!やっと決着がつくな、お前をやって、亜沙美を自分の手に取り戻す!」
コウが言った
「コウサン、今日はタイマンですか?それともここに居る全員とですか?まぁ〜どちらでもいいですが」
隆が言った
「安心しろ、こいつらには手を出させない、今日こそ・・・・」
コウの口が止まった
コウは急に膝をつき背中を抑えた、コウの抑えた手は血で真っ赤だった、そうコウの背中にはナイフが刺さっていた
「お、おまえら〜、」
コウが千春たちの方を向き低い声で言った
「ハハハハハハハハ、バ〜カ、俺はコウお前をやるチャンスをず〜と覗っていたんだよ、これでナンバー2だね、俺は吉岡もやってナンバー1になるんだよ、ハハハハ、その前に隆、お前をぶっ殺す!」
千春はナイフ片手に余裕の表情だ
「千春〜!お前だけは、絶対許さない!お前だけは絶対につぶす!」
隆は本気で怒っている、怒りで凄い顔をして千春に言い放った
「おお、おお、すごい怖い顔、だけどお前この人数、一人でやれるの?俺はコウみたいに甘くないよ〜」
千春が笑いながら言った、
ナイフを持った男が5人、絶望の光景だ
その時だった
ゴッ!
後ろの方で、すごい音が響いた
千春はビックリして、後ろを振り返った
そこには、舎弟が一人倒れている、その横に居たのはハルだ
「ハル!」
隆はビックリしながら言った
「ほ〜いい度胸だなぁ、お前もついでに殺してやるよ!」
千春が言った
だが、ハルは余裕の表情だった
「おい!千春、お前も腐ったな」
ハルの後ろから声がした
千春はビックとし、ハルの後ろに目をやった
「よ、吉岡」
千春がビビりながら言った
そう、そこには東城のナンバー1、三代目毘沙門天総長、吉岡が立っていた
「おい、慎也、コウを運べ」
吉岡が後ろに居た慎也に指図した
「はい!」
慎也はコウの傍に行き、肩を貸した
「大丈夫すか?」
慎也がコウに言った
「ああ、悪いな」
コウは慎也の肩を借り近くの病院に向かった
「吉岡さん、どうしてここに?」
隆が不思議そうに言った
「ああ、こいつらに、泣付かれてな、見るだけのつもりで来たんだけど・・・」
吉岡が千春を睨みながら言った
千春は、目を合わせようともしない
「で!おまえらも俺とやるつもりか?」
吉岡が千春の舎弟どもに言い放った
「か、勘弁して下さい!俺達これから、用があるんで、先帰ります」
舎弟達は一斉に散った
「お、おい、裏切り者〜」
千春が情けない声で叫んだ
吉岡という人について少し説明しておこう
吉岡がこの学校のナンバー1になったのは一年の時、一気に三年を締め上げた、伝説の男である、隆もこの人に憧れてこの学校に入った、外見も、ものすごくいい男であり、女性からの人気もかなり高い、本当にパーフェクトな人間である
「おい!千春、かかって来いよ、俺の事やるんだろ」
どすの聞いた低い声で吉岡が言った、すごい迫力だ
千春が本気でビビってる、ナイフを持ってる手が、プルプル震えている
「吉岡さん、こいつだけは許せないんです、俺にやらして下さい」
隆が言った
「隆、わかった、元はと言えばお前の喧嘩だしな、まかせるよ」
吉岡が笑みを浮かべて答えた
吉岡は隆の事が好きだった、昔の自分によく似ているからだ
「ありがとうございます」
隆が言った
「なめやがって、やてやるよ、隆覚悟しろ!」
千春が、言い終わる前にナイフを待って、隆を刺そうと走ってきた
隆は、それをかわし千春の後頭部に思いっきりけりを入れた
ガン!
千春はその場に倒れた
すぐさま立ち上がり
「このやろ〜」
千春が隆に向ってナイフで切りかかった
隆はその腕を取り、関節を膝で思いっきり蹴りあげた
ゴキ!
腕が折れた
「ぎゃ〜〜いてぇ〜いてぇよ〜、悪かった、かんべんしてくれ〜」
千春はナイフを落とし、その場に膝をついた
隆は容赦しなかった
千春のあごを、思いっきり蹴りあげた
「あ〜〜〜!俺は許さないって言ったよな〜!」
隆は、目が血走っている、そのまま馬乗りになり、千春の気が失うまで殴りつけた
そのあとの事はよく覚えていない、ただこの事件をきっかけに、隆、コウさん、千春、ハルは退学になった
それから、千春に会うことはなかった、あの日までは・・・