のぞき
すいません、遅くなりました、
あの初恋パーティーから、3日後の午前中
あやしい、三人組が、慎也の家の前で、たむろっていた
その3人組とは、ハル、慎也、横井の事である
「今日も晴天!!」
ハルが空を見上げながら言った
「じゃ行くか!」
ハルが後ろを振り向きながら言った
「はい、楽しみですね」
慎也がニヤニヤしながら言った
「どんな人なんですかね?美貴さんって」
横井もニヤニヤしている
「絶対、隆には見つからないようにな!」
ハルが言った
「え!なんでですか?」
横井がビックリしながら言った
「隆さん、仕事している姿、見られたくないだって、」
慎也が言った
「へ〜、隆さんも見られたくないとこなんかあるんですねぇ〜」
横井が少しビックリしながら言った
「どんな顔して働いてるのかな〜?」
慎也が言った
「多分デレデレですよ〜、きっと仕事どころじゃないと思いますよ?」
横井がニヤニヤしながら言った
「おい!早く行くぞ!」
ハルが横井のバイクの、後ろのシートに乗りながら言った
「はい、じゃ行きましょう」
バイクのエンジンをかけ、3人は来伝に向かった
もう会話で分かったと思うが、隆の職場を覗きに向かったのである
やはり、隆ほどの男を虜にしてしまう女がどれ程のものか、ここにみんな興味があった
そのころ、来伝では・・・
やはり、横井の予想どおり、隆はカウンターに両肘をつき、だらしない顔をしていた、
隆の眼は、テーブルを拭いている、美貴に釘付になっている。
「あ〜可愛いなぁ〜、俺と付き合ってくれないかなぁ〜」
隆の耳元で、店長がささやいた
隆はビックリして、その場に腰をついた、
「そんなに、ビックリすることはないだろ、さてはアンタ図星だね」
隆はあわてて、腰を付いたまま、首を横に振った、だが顔は真っ赤だった
「嘘おっしゃい!あんたの顔見ればわかるんだからね!」
「美貴に言ってこよ♪」
店長は楽しげにカウンターから出ようとした
隆はあわてて
[おい!まてまて!ヤバイって」
隆は、四つん這いで、店長を追い、ズボンに手を掛けた
ズル・・・ドン・・
店長のズボンが脱げ、そのまま転んだ
美貴は店長が転んだ音にビックリして、カウンターにきた
「え!」
店長は下半身下着姿、隆は店長のズボンを持っている
「違う!これは事故なんだ!」
隆はあわてて言った
「いたたた、隆、あんた大胆だね♪」
店長は半分面白がって言った
「おい!何を訳の分かんないことを」
隆はあわてている
「美貴さんこれは、違うんだ!、こんなバアさん、襲うわけないだろ」
隆は必死だった
その様子を見て、店長はちょっとやり過ぎたと思い、ズボンを履きながら
「ハハハ、美貴ちゃん、さっきのは冗談だよ、ほんとに事故なんだよ」
美貴は心配そうな顔で
「あっ!そうなんですか?気をつけてくださいね」
そのころ、入口を少し開け覗いている、六つの目があった
そう、ハルたちだ
「おい!あれが美貴か?めちゃくちゃ可愛いじゃねか、あんなに、いい女初めて見たぞ」
ハルが興奮しながら言った
「すげ〜美人!ここまで来ると、親に感謝したくなるね!!」
横井も興奮しながら言った
「隆さん、デレデレすね〜、あれじゃ仕事所じゃないでしょ」
慎也が半分呆れながら言った
「それにしても、客いねぇなぁ〜この店は!」
ハルがにやけて言った
店の中・・・
美貴は店長の耳元でささやいた
「外からこっちを覗いている人たちがいるんですけど・・・」
店長は外に目を向けた
「あいつら〜、わかったよ、美貴ちゃん、怖がらなくていいからね」
店長は美貴にウィンクをして、裏口から外に出て行った
店長は外に出ていくと、ガラの悪そうなやつらが店の中を覗いていた
一人はしゃがんで、もう一人はその上からおい被さるように、もう一人もその上から頭を横に
しながら見ている
三人は真剣に中を覗いていたため、外の様子には全くきずいていない
店長は覗いている引き戸の、反対側の引き戸を思い切り開けた
バアーンと大きな音がした
その瞬間、反対側で覗いていた三人は、見事に顔が挟まった
「グハァ」
「ギャ!」
「アウ!」
三人同時に悲鳴に近い、叫び声をはなった
痛みと驚きでその場に、座り込んだ三人組
「この馬鹿野郎ども、なにしてる!!」
店長が怒鳴った!
「あっ!いや、ラーメンでも、なぁ!」
ハルがあわてて慎也にふった
「えっ!はい、そうなんですよ!」
慎也もあわてて言った
その瞬間、入口から顔を出した隆
三人は自分たちの血の気が引いた音を、初めて聞いた
「何をしているのかなぁ〜、君たちは」
隆は、笑顔を引きつりながら、言った
「あっ!た、隆君、き、奇遇だね、あは、あははは」
ハルが今にも泣きだしそうな顔で言った
「まっ!せっかく来たんだから、何か食べて行きな!」
店長が手をパンパン叩きながら、店の中に入って言った
「いや、い、いいです、今日は、」
ハルがあわてて言った
隆はしばらく睨んでいたが、顔を横に振り、「入れ」の合図をした、
「いただきま〜す!」
横井が店の中に入って言った
「あいつ、勇気あるなぁ〜」
自分のズボンを叩きながら、ハルが言った
「いや、ただのバカです」
顔をさすりながら、慎也が言った
二人も横井の後について行った
店の中・・・
「はじめまして、隆さんと一緒に働いています、橋本美貴って言います!」
美貴はニコニコしながら、勢いよく礼をした
三人はビックリしている、今まで怖がらずに、こんなに堂々と話してくれる子がいなかったからからである
「あの、怖くないですか?」
慎也がビックリしながら言った
まぁ、誰が見てもガラが相当悪い
「まあ、怖くないと言えばウソになりますが、私、人を見かけで判断するのは嫌なんです、そ
れに、隆さんの友達って聞いたので、怖くないですよ」
美貴はニコニコしながら言った
「え、どうして?隆の友達だと怖くないの?」
ハルは不思議そうだ
「えっ!どうしてかなぁ〜?」
美貴が考えながら言った
「俺が怖くないからに決まってるだろ」
隆が奥でラーメンを作りながら言った
「え!?」
三人が声をそろえて言った
「ねっ!美貴さん」
隆が言った
「うん、そうかもね」
美貴が納得した顔で言った
「いや、あいつが一番怖いだろ、普通」
ハルが不満そうに言った
「いや、俺にはわかるなぁ〜、隆さんって何故か怖くないというか、話しやすいというか、なんていうか、良く分かんないんですけど、多分オーラすよ、オーラ!」
横井は一人で納得しながら、勝ち誇って言った
「そこで、勝ち誇っているやつ、自己紹介しな!、私、あんた見たことないよ!」
店長が売上を計算しながら、言った
「あっ!紹介遅れました、俺、隆さんに一番信頼されてる後輩で、横井ともうします、函館生まれの函館育ち、年は今年で16になります、好きなタイプは・・」
横井のマシンガントークが始まった
「あ〜あ、店長、しばらく止まんないよ、横井のやつ」
隆が湯切りをしながら言った
「えっ!そうなのかい」
店長がビックリしながらいった
「将来の夢は、隆さんのように男の中の男に、いつかなれたらいいなぁ〜と思って、日々精進しています、それで今一番はまっているのが・・・・・・・」
横井の話はまだ続きそうだ
「おい!出来たぞ!」
隆はラーメンを持ってきた
「うほ!超〜うまそう」
横井の話が止まった
「いただきま〜す」
ハルが割りばしを割りながら言った
「うまい!!!!」
慎也がすごいビックリしている
「なんだ、その驚きは、俺が作るものが不味いわけがないだろ」
隆が自慢げに言った
「そうなんだよ〜、こいつの作るラーメンは、ほんと美味いんだよ、このラーメンのファン
もいるぐらいなんだよ!」
店長は手を組み、不思議そうだ
「え!じゃ、なんでこんなガラガラなんだよ」
ハルが店長に聞いた
「あんた達みたいに、ガラの悪いやつらが外にいたら、入ってきたくても入ってこれないだろ!」
店長が三人に言い放った
「あっ!そっか、そうだよね」
慎也が頭をかきながら言った
「おかげで、今日の売り上げは、最悪だよ、次やったら営業妨害で訴えるからね」
店長が三人に言い放った
「すいません・・・」
三人が謝った
「じゃ、俺、皿洗いあるから、ゆっくりしないで帰れよ!」
隆は厨房の方へ歩き出した
「あっ!私もやります、」
美貴も隆の後を追ったが、途中で止まり振り返って
「ゆっくりして行って下さいね」
美貴は三人に言って、厨房の方へ走って言った
「・・・・いい・・・・・」
慎也がまじめ顔で言った
「で!今日は何しに来たのさ?」
店長が聞いた
「た、隆の仕事ぶりをね、見にね・・・ハハ」
ハルが、あわてて言った
この人嘘つくの、下手すぎる・・・
慎也は思った
「嘘つくんじゃないよ、美貴を見に来たんだろ」
店長が言った
知ってるなら聞くなよなぁ〜
ハルが思った
「あの子は、いい子だよ〜、女の私から見ても、いい女だよ」
店長が厨房の方を見ながら言った
厨房では隆と美貴が二人並んで、皿を洗っている、
「隆さん幸せそうですね〜」
横井は二人を見ながら言った
「邪魔しちゃ悪いから、もう帰りましょ」
慎也が言った
「ああそうするか」
ハルが席を立ちあがった
「またきなさい」
店長が少し淋しげだ
「はい!また来ます」
横井が言った
「じゃ!」
ハルが引き戸を開けた
カランカラン涼しげな音が鳴り響いた
「それにしても、隆本当に幸せそうだねぇ〜、あんな幸せそうな顔初めて見たよ」
店長が厨房を見ながら独り言を言った
本当に幸せだった、仕事に来れば、美貴に出会える
家に帰ると、すごく大切な仲間がいる
毎日が楽しくてしょうがなかった
「あっ!そういえば美貴さんっていくつなの?」
「私?19歳、4年大学の2年生」
「へ〜いっこ上なんだ〜」
こんな、日常的な会話でも嬉しくてしょうがなかった
夜9時・・・
「はい、今日は店じまい!」
店長がのれんを中に入れるため、外に出ていった
「あ〜疲れた」
隆が伸びをしながら言った
「疲れましたね」
美貴が隆に言った
「家って近いの?」
隆が聞いた
「歩いて20分ぐらい」
美貴が最後の皿を拭きながら言った
「結構歩くね」
「うん、でもダイエットだと思えば」
美貴は大きく手を振って歩く真似をして、隆に見せた
「送っていくよ?歩きだけど・・」
「え!ほんと?」
美貴は嬉しそうだ
「実は、一人で帰るの怖かったんだ」
「じゃ、仕事の日は、毎日送ってあげるよ」
隆は、かなりの勇気を振り絞って言った
「え!大丈夫?そんなこと言って」
「大丈夫だよ!約束は守るよ」
「うん、わかった、じゃ、着替えてくるから待ってて」
美貴は嬉しそうに更衣室に行った
隆は、はっとして、外のドアに目をずらした
すると、店長がドアの隙間からニヤニヤしながら見ていた
「お前は、あいつらと一緒かよ!」
隆は言った
「ごめん、ごめん、なんか良い感じだったから、入りづらくてね」
店長がニヤニヤしながら、店に入ってきた
「あっ!襲うんじゃないよ!」
「馬鹿か!!」
隆が怒鳴った
「おまたせ〜」
美貴が来た
髪の毛を下ろした美貴もかわいい、白のワンピースを着ている、すごく似合っている。
一言で言うと、清楚!
「じゃ行こう」
隆がはりきって店を出た
「おつかれさまでした」
美貴は店長に礼をして出て行った
「おつかれ」
店長はまだニヤニヤしている
「ねぇ、美貴さんて誰か迎えに来てくれたりしないの?」
「誰かって?」
隆は思い切って聞いてみた
「彼氏とか」
「あっ、彼氏はいないんだ〜」
神様ありがとう、こんなに神に感謝した日はないだろう
「あっ、そうなんだ〜ごめんね変なこと聞いて」
隆は申し訳なさそうな顔で言った
だが、心の中では、ガッツポーズしていた
「ううん、いいの別に全然気にしてないよ」
「美貴さん、親とかは迎えに来てくれないの?」
「親には、バイトしていることは、内緒なんだ」
「え!そうなの、なんで?」
「うちの親って、固いんだよね〜」
美貴はため息をつきながら言った
「へ〜そうなんだ〜」
「ね〜、隆さん、私の事、美貴さんって言うのやめて、今から美貴って呼んで」
「え!なんで!」
「なんか、他人見たい」
美貴は淋しそうに言った
「わかったよ、じゃ俺の事も隆でいいよ」
「う、うん、わかった、なんか照れくさいね」
「うん」
隆は顔が真っ赤だ
恥かしさからか、しばらく無言が続いた
「あの」
隆が無言に耐え切れず、とりあえず声を発してみた
「ん?」
美貴は隆の方を向き、顔を横にして聞き返した
「明日、暇?」
隆は勢いで言ってしまった
「仕事、終わった後?」
「うん」
「うん、夜の11時までだっだらいいよ」
「じゃ、どっか行こうよ」
隆は生まれて初めて、デートに誘った
「うん、いいよ、じゃ明日はデートだね」
美貴が嬉しそうに言った
隆は嬉しさの余り、死んでしまいそうだ
「じゃ、ここでいいよ、送ってくれてありがとう」
「え!家まで送るよ」
「ううん、いいの、あと1分もかかんないから、それに隆と歩いてるの、親に見られたらうるさいし、ごめんね」
「あっそうなんだ、わかったよ、じゃ」
「じゃ、明日楽しみにしてるね」
美貴は手を振って夜の闇に消えていった
隆は嬉しさのあまり、その場で飛び上がった
「やった〜」
隆は、こんなに喜んだことは、多分今までになかっただろう
この時は、本当に嬉しかった、明日が楽しみでたまらなかった