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20/20

追憶

大変!大変お待たせいたしました


約1年ぶりの更新です・・・すいません


感想、評価お待ちしております

今年、函館の降雪量は観測史上初の大雪だそうだ




「今日は、晴れてよかったね?」

美貴が言った


「本当だな、昨日は吹雪だったから、どうなるかと思ったよ」

隆が言った


「この分だと、すごそうだね・・・」

美貴が言った


「ああ・・・やっぱやめようか?・・・」

隆がめんどくさそうな顔で言った


「ええ!!、何言ってるの?ちゃんと決めたでしょ!そんなんでいいの!?」

美貴が怒りながら言った


「じょ、冗談だよ、行くよ、行きますとも・・・そんな、怒るなよ」

隆が苦笑いしている


「本当に!しっかりしてよね!」

美貴はまだ怒ってる


「ハハハ、わかったよ、ゴメンゴメン」

隆は美貴の肩に手をまわし、グッと引き寄せた




二人はお互いの顔を見てにっこりとほほ笑んだ



そう、この日は二月二日、隆と美貴はスコップ片手に慎也の墓にむかっていたのだ。




慎也の墓地・・・


二人は呆然と立ち尽くした


「・・・すごいね・・・」

美貴が立ちすくみながら言った


「・・・ああ・・・どこらへんだろう?・・・」

隆はあたりを見渡しながら言った


かなりの雪で、墓地は雪野原、ところどころに墓の頂上部分が顔を出している


「どうする?・・・」

美貴が隆のほうを見て聞いた


「ちょっと、行ってみるよ」

そう言いながら、隆は一歩を踏み出した


ミシ、ミシ 

足元を確かめながら、慎重に歩いて行く


「うん、足もとが固くなってるから、これなら、大丈夫だ!おいで」

隆は美貴に手招きした


「・・・うん」

美貴は不安そうに小さくうなずいた


「心配ないよ、ほ・・・ら・・・・・・・・」

隆は美貴を安心させようと、地面を強く踏んだ、その瞬間、隆は片足が股関節あたりまで埋まった

「!?だ!大丈夫?」

美貴が心配そうに隆に言った


「ははは、調子こいたぁ〜」

隆が笑いながら言った


「はは、今そっちに行くね!?」

美貴が笑いながら言った


「ああ、足元しっかり確かめながら来いよ!」

隆が自分の足を抜きながら言った


「大丈夫!私そんなに重くないから」

美貴が笑みを浮かべながら言った


美貴が隆のもとへやってきた


「ゆっくり、向こうの方に行くぞ!?」

隆が美貴の手をつかみゆっくりと進みだした


「うん、ゆっくりね」

美貴は足元をしっかり確かめながら歩きだした



しばらくして・・・


「どの辺だっけ・・・全然わからん?」

隆が周りを見渡しながら言った


「うん、わかんないね?」

美貴キョロキョロ周りを見ていた


「ねぇ?あそこ見て?誰かいるみたい・・・」

美貴はちょっと離れたところを指差した


「ん?」

隆は目を細め、美貴が指差した方向を見た


そこには、男が二人で何かしている


「雪ハネしてるのかな?」

美貴が不思議そうに言った


「あの辺・・・じゃなかったっけ?・・・慎也の墓」

隆が考えながら言った


「そうかも・・・行ってみる?」

美貴が少し不安そうに言った


「そうだな、ここの関係者かもしれないしね、うまくいったら一緒に探してもらえたりして」

隆が言った


「ハハハ、それはないと思うよ、本当にずるいんだから、ハハハ」

美貴が笑いながら言った


二人はだんだん近づいて行った


「ん?」

隆が止まった


「あれって・・・正樹君じゃない?」

美貴が言った


「ああ、そうだな・・・多分」

隆が言った


「お墓の雪ハネしてるね?」


「ああ、してるな」


「それも、慎也君のお墓・・・だよね?」


「ああ、慎也の墓だ」


二人が止まって話していると

正樹がこっちを見た


「ん?」

「あ!隆さん!」

正樹が声をかけてきた


「よう!久しぶりだな・・・」

隆が片手をあげ、近づいて行った


美貴も隆を追うようについて行った

「正樹君、久し振り」


美貴も正樹にあいさつした

「こんにちわ、久し振りです」


正樹がニコッと笑いながら頭を下げた



「小嶋・・・」

正樹の隣にいた男が隆の方を向いて、小さな声で言った


「ん?おまえ!・・・」

隆は驚いた


「小嶋・・・なんて言っていいかわからんが、悪いと思ってる」

その男が下を向きながら言った


「ノブ・・・」

正樹がノブを見ながら言った


そう、そこにはノブがいた

あの時の迫力はなく、ただの小さなおっさんに見えた


なんて声をかければいいのか、わからなかった


ちょっと沈黙が続いた


「いや、ノブが昨日退院してきたんで、真美の墓参りのついでに、横井君に聞いて、慎也君の墓も・・・雪が・・すごかったから・・・すいません、勝手なことして」

正樹が申し訳なさそうに頭を下げた


「いや、こっちが感謝したいぐらいだよ・・・」

隆が言いづらそうに言った


「本当ですか?良かったです、そう言ってもらえて」

正樹が笑顔で言った


また無言になった



美貴が察したのか、声を発した

「ノブ君って、あのノブ君?入院してた?・・・大丈夫ですか?」


「君は?」

ノブが美貴の方を向き言った


「隆さんの彼女だよ、美貴さんって言うんだ」

正樹が明るい声で言った


「そうか、君が・・・」

ノブが暗い声で言った


「小嶋!」

ノブが隆の方を向いて急に膝をついた


「許してくれとは言わない、ただ、どうしても、線香の一本、いや、手を合わさせてもらえるだけでもいい、だからこの場は見逃してほしい、これが終わったら、殴るなり、殺すなり、好きなようにしてくれ!」

ノブは土下座をしながら、隆に言った


ノブと正樹は、真美と慎也の墓に線香をあげに来たのだ

慎也の墓の周りは、まるで、雪が降っていなかったのではないかと勘違いできそうなほど綺麗だった


「ノブさん!」

美貴があわてて近づこうとした


それを、隆が手で遮った


「え?」

美貴がびっくりした


「ノブ、頭をあげてくれ」

隆が言った


「小嶋・・・」

ノブはその場からゆっくりっ立った


「・・・」


また無言になった


「・・・・あ〜めんどくせい!」

隆は、ノブになんて声をかけようか考えていたが、考えるのをやめた


「男同士はこれが一番だ!」

隆はノブの近くまで走って行き、拳を振り上げた


ガゴン!!


隆はノブの顔面に気合の一発をぶち込んだ


ノブは吹っ飛んだ


「どうだ?目覚めたか?正樹にも言ったが、お互い一発づつ殴って、過去のゴタゴタを水に流そうや!慎也が死んだのはお前等のせいじゃねよ、だから、お前も堂々と胸を張って生きろ!言葉でぐだぐだ話したってな、伝わらねえよ!」


「フ・・・そうか、そっちの方が助かるよ、俺もあまり口ではうまくいえん」

ノブは立ち上がりながら言った


ノブはさっきまでの、ノブではなかった

誰が見ても、迫力が違う


「じゃ、お言葉に甘えさせてもらう」

ノブが隆に向って拳を振り上げた


ゴボン!


隆はノブが吹っ飛んだ距離の倍は吹っ飛んだ


「かぁ〜これはヤバイ、こんな一撃、吉岡さん以来だ!ハハハ」

隆はその場で大の字に倒れこんだまま笑っていた


「ハハハ」

ノブも笑っていた


「ノブ?」

正樹が嬉しそうにノブを見た


「ああ、すっきりした、正樹、俺は決めたぞ!」

ノブは納得した表情で言った


「ああ、あの話だろ?おれは付いて行くぜ」

正樹もうれしそうな表情で言った


美貴は心配そうに隆の傍まで来た

「大丈夫?このやり方が一番分かりあえるのはわかるんだけど・・・心配になる」

美貴が目に涙を浮かべながら言った


「ああ、ごめん、心配した?悪かった」

隆は美貴の肩を借りて立ち上がった


「おい!いきなりだが、俺等あんたについて行くことにした!勘違いしないんでほしいだが、罪滅ぼしのつもりじゃない、俺等はあんたに惚れたんだ」

ノブが言った


「ハハ、そっか、あんたらがいれば無敵だな、だが少し遅かったな・・・」

隆が残念そうに言った


「え?何でですか?」

正樹が不思議そうに言った


「俺は毘沙門天を引退したんだ」

隆は残念そうに言った


二人は驚いていが、すぐに我に返った表情をしていた


「そうか・・・、俺は別にいいぞ」

ノブが言った


「俺も」

正樹がうなづきながら言った


「え?」

隆が不思議そうに言った


「さっきも言ったが、俺等はあんたに惚れたんだ、別に毘沙門天に入りたいわけではないし」

ノブが言った


「そうそう」

正樹がうなづいている


「じゃ、どういう意味だ?」

隆が考えながら言った


「鈍感だな、舎弟にしてくれって言ってんだよ!」

ノブが言った


「ええ〜!」

隆がびっくりしている


「別に、常時くっついているわけでもないし、別にいいだろう?」

正樹が言った


「それに俺等も甲賀を復活させようと思ってるんだ、これで隆さんの舎弟が、総長をやっている族が2つになるって事だね、あと、心配しないでほしいんだけど、毘沙門天には連絡して、傘下に入るって言ってあるから問題ないよ」

正樹がニコニコで言った


「ずいぶん手が早いな?でも俺は、今は普通の一般人だぞ!」

隆が言った


「いや、だから、俺等は別に、あんたがいればそれでいいんだよ、あんたに惚れたから、近くにいてあんたを慕っていたいんだ」

ノブが照れながら言った


「要は、隆さんのグループに入りたいってことだろ?はっきり言えばいいのに・・・」

正樹がノブの方を見ながら言った


「あっ!そういう事ね、やっとわかったよ!・・・仲良くやろうや!」

隆が言った


「おお!あんたは俺が守る、任せとけ!」

ノブが言った


「はいはい、でもやっとこれで函館も安心だね、ここまで大きなチームは毘沙門天以外にはないし、傘下の族も、リトルギャング、甲賀と二つになったし、その上には小嶋隆がいるしさ、いまじゃ、どこの族もビビッて手が出せないだろうね」

正樹がうなづきながら言った


「いやいや、守るって言ったて、毘沙門天を引退してるんだぞ!・・・まぁ〜いっか、好きなようにやってくれ〜」

隆が呆れながら言った


「フフフ、でも良かった、これでみんな仲良くなったね!?」

美貴が笑みで隆に言った


「ああ、そうだな」

隆も笑みで、美貴の頭に手をポンポンと優しく置いた


「じゃ、俺等はお邪魔みたいだし、そろそろ行きますね?」

正樹が言った


「別に邪魔ではないだろう!」

ノブが言った


「ノブは少し、空気を読めるようにならないとな?行くよ!」

正樹が呆れながら、ノブの手を強引に引っ張り歩きだした


「そ、そうなのか?わかった、じゃ、またそのうち連絡しますね、隆さん」

ノブがちょっと離れた所から言った


「ノブ・・・敬語が気持ち悪い・・・」

隆が言った


「俺は、今日から隆さんの舎弟だ、敬語ぐらい使わしてくれ!」

ノブは遠くから叫んだ


「地獄耳・・・はいはい、じゃまたな」

隆が手を挙げて見送った


「フフフ、良かったね?」

美貴が隆に言った


「うん?ああ、そうだな」


隆は、慎也の墓の前に立った


「慎也、元気だったか?こっちもやっと、一つにまとまってきたよ」

隆が煙草に火をつけながら言った


「フフ、私たちも順調だよ♪」

美貴が隆の腕に手を回した


隆はそんな美貴の方を見た


美貴も隆を見ながら笑っていた

「フフ」

美貴はギュッと隆の腕に抱きついた


「ん?どうした?」

隆は満面な笑みで美貴に聞いた


「フフフン〜〜幸せだなぁ〜って」

美貴が砕けた笑顔で恥ずかしそうに言った


「ああ、お前に出会えてよかったよ」

隆も恥ずかしそうに言った


二人はこのまま、しばらく慎也の墓にいた




美貴と一緒にいる時間が、いつもとても短く感じる


美貴と別れる時、いつも笑顔で手を振っていた



俺はこの時、いつも思っていた

時間がこのまま止まればいいのに・・・叶わない理想、いや、叶ったのかもしれない


そう、・・・俺は今でもあの時間にいる

引きずりながら、只々昔のことを考えている



どうする事も出来ないのに・・・


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