友人
「おい!帰るぞ!」
隆は声を荒げて言い放った
「へ?俺、今大当たり中なんですけど・・・」
このとぼけたヤツが一個下の後輩で、名前は慎也
「じゃ好きにしろ、俺は行くからな!」
出口の方へ隆は歩きだした。
「わかりましたよ!行けばいいんでしょ、行けば!」
慎也はため息をつきながら
「おい、おっさん、この台打っていいぞ!」
「おっ、にいちゃん、いいのか?ありがと」
隣に座っていた年輩の男が嬉しそうに言った
慎也はブツブツ言いながら、隆の後についていった。
「本当に隆さんだったら勝手なんだから〜」
「悪かったな、自分勝手で、ほらジュースでもおごってやるから機嫌直せ」
隆は慎也に110円を手渡した。
「ジュース!?ジュースで俺の機嫌が直ると思ってるんですか?」
慎也はふくれながら、隆に言った
「あん?直らんのか?」
隆は睨みつけるように言った
「あ、もう直りました、ハハハハ・・・・」
ちょっと泣いていた・・
「おい、またやってるの?お前らだったら」
後ろから誰かが話しかけてきた
「あっ、ハルさん! 聞いてくださいよ〜」
話しかけてきたのは、隆の幼馴染で晴紀、通称ハル
「おい、また慎也いじめてるの?飽きないねぇ〜」
ハルは呆れた表情で言った
「そんなことより、ハル、今日久しぶりにみんな呼んで走る?」
「おっ、いいね〜おれのXJ最近出番なくて・・」
そう、俺は暴走族の総長をやっていた
話が盛り上がってきた時に慎也が釘を刺すように言った。
「いやいや、隆さん、今日仕事行かなかったらマジ、クビですよ」
隆はおでこに手を当てて
「あっ、忘れてた・・・・いきたくねぇ〜」
慎也はちょっとふくれながら
「隆さんが行かないから、俺代わりにずっと働いてるんですよ〜」
「え!マジ!どうして?」
ハルが驚いて慎也に聞き返す
慎也が泣きそうな顔で
「いや、隆さん携帯持ってないから、店長から俺に電話が掛かってくるんですよ〜」
「何で?」
不思議そうにハルが言った
「隆さん履歴書に俺の電話番号書いたんですよ〜」
「マジ?それはひどいわ〜ハハハハハハハハ」
ハル爆笑
「笑い事じゃないですよ〜」
ハルは急に真面目な顔になって
「隆!それは行かないとだめだ・・・ぷぷ」
途中で笑いがこぼれた
「わかった、わかった、行くよ、何時からだっけ?」
隆は二本の指で軽く手首を叩きながら言った
「18時からですよ」
「18時かぁ〜それまで時間あるから、女とこでも行くかな〜」
隆は慎也の方に小指を立てながら言った
「隆さん!もしかして愛さんの所?」
慎也がうかない顔で言った
「おお!?良くわかったな?」
隆はビックリしながら言った
愛とは、隆のお気に入り彼女だ
「愛かぁ〜マジでカワイイよなぁ〜、隆に近づいてくる女はイイ女ばっかりだ」
ハルがうらやましそうに言った
隆は女に困ったことが余りなかった
だが近づいてくる女は、自慢したい、名前が売れる、いきがれる、
そんなことしか、考えない女ばかりだ、要はヤンキーばかり、
でも隆はそれを知っていて逆に利用している。
今隆には3人の女がいる、好きな時に行ってヤッテ終わりだ。
隆は本当に本気で、女性を好きになったことが今までにまったくないのだ。
今、思えば淋しいやつだ・・・