真相
先ほど館内放送が流れた
東京羽田で風が強いらしい、一時間出発が延びた
俺たちは、飛行場一階のカフェに場所を変えた
気まずい空気が流れる中、静かに吉岡が口を開いた
「この話は、今から約二年前の話だ、お前が毘沙門天に入る前の話だな、ノブって覚えてるか?」
「ええ、あのでっかい奴ですよね?」
隆が言った
「あいつはもともと、甲賀と言うチームの総長をしていたんだ、色々と問題があって、抗争になったんだが・・・まぁ〜小さな族で、やる前から結果はわかっていた、俺たちは甲賀と言うチームの根性と勇気に魅了された、傘下に入ることを勧めたが、ノブは断固断った、俺らは諦め、その場を去った、だがその抗争が原因で、ノブは警察に捕まり年少に入った」
吉岡が煙草を吸いながら話を続けた
「あとから知った話だが、ノブが警察に捕まったのは、千春が一枚噛んでいたらしい・・・その時から、奴はノブに目をつけていたんだな、まもなく千春も大麻で捕まり年少に入った、要は、千春の作戦どうりだったんだよ、大麻で捕まったのを隆のせいにしたのは、口実だな、奴は毘沙門天を憎んでいたからな」
「そこで、千春とノブは出会った、千春はノブに近づき、一緒に毘沙門天を潰そうとノブを誘ったんだ、と、ここまでは奴の作戦どうりだったんだが、その誘いをノブは断った、ノブが毘沙門天と戦った理由は、自分の姉をさらわれたからだ、」
「え?そんなことしたんですか?」
ハルが慌てて聞き返した
「そんな事すると思うか?」
吉岡が半笑いで言った
「いや、思わないですけど・・・」
ハルが言った
「さらったのは、その辺のチンピラだ、誰かに金で雇われてやったらしいがな、これも千春が絡んでるんだ」
「え?何でわかったんですか?」
「ノブの姉ちゃんは、抗争が終わった後に、警察が保護した、その時に捕まった奴らの中に、俊詞って言う、千春の手下がいたからな、ピンっときたよ」
周りのみんなは固唾をのんで聞いていた
吉岡が話を続けた
「ノブは、姉ちゃんをさらったのが毘沙門天じゃないことは、抗争のちょっと前に分かっていたんだ、だが、始まった喧嘩、終わらせられるわけがなく、男として最後まで戦ったんだ」
「男だね」
亜沙美がボソッと言った
正樹は静かに口を開いた
「ノブは、年少出たら、あいつらと一緒に走りてぇな〜って、面会に言った時、言ってました、毘沙門天の事は恨んでなんかいなかった、むしろ憧れていたんです」
「じゃなんで!」
横井が勢い良くいった
「おい!話は最後まで聞け!」
吉岡が言った
「すいません」
横井が謝った
「で、千春はノブに会うたびに、誘いの話をしたそうだ、だがノブは断り続けた、そんな感じで約一年半が経過した、千春はいろいろ考え、思いついた作戦が人質を取る事だったんだな、2・3日後に面会に来た俊詞に、もう一度姉をさらうように指示を出したんだ・・・」
吉岡が力いっぱい煙草を消した
「マジ!?それで・・・」
横井が静かに言った
「くそ!なんて、えげつない奴だ!」
ハルが言った
正樹は目に涙を浮かべながら静かに口を開いた
「ノブの姉は真美って言うんだ、俺と真美は付き合っていたんだ・・・二つ上だけど、童顔でどちらかと言うと年下に見られる、おっちょこちょいで静かな感じの子だ、真美はさらわれたショックで引きこもりがちだった、それで、元気が出でればいいなぁと思い、バイクでドライブに誘ったんだ・・・
真美の部屋・・・
「今日は久しぶりに天気がいいなぁ〜」
正樹は真美の部屋のカーテンを開けながら言った
「うん、天気いいね」
真美は正樹の方を見ながら笑顔で言った
「久しぶりにどっか行くか?」
正樹は思い切って誘ってみた
「え?でも・・・」
真美は考えてた
「いいから、行こ!」
正樹は真美の手を取り外に向かった
「暖かいね!?」
真美は空を見上げながら言った
「な?元気出ただろ?」
「うん」
真美は笑顔で言った
正樹は外に止まっていた、バイクにエンジンをかけ、ヘルメットを真美に渡した
「海でも行こう?」
「うん、行く!」
真美の久しぶりの笑顔だった
二人はバイクで海岸線沿いを走り、しばらくドライブを楽しんだ
正樹は帰り道で、宝石屋を見かけ止まった
「真美!」
「うん?どうしたの?」
「昨日給料出たんだ、前から欲しがってた指輪買ってやるよ!」
「え?本当?」
「ああ、ちょっと待ってろよ」
正樹はバイクから降り真美の方を向いた
真美はすごく嬉しそうな顔をしていた
正樹はその場に真美を残し、宝石屋の中に入って行った
「これ下さい」
正樹は指輪を指差しながら言った
「はい、かしこまりました」
店員が指輪をケースに入れ、包んで正樹に渡した
正樹は真美の喜ぶ顔を想像した
その時、外から悲鳴が聞こえた
「いや〜〜」
正樹は外に出た
真美が数人の男に押さえつけられ車の中に連れ込まれていた
「なにしてる!?真美を放せ!」
正樹は一人の男に飛びかかった
「うるせえ!引っ込んでろ!」
正樹は蹴りを入れられ吹っ飛んだ
「正樹!助けて!」
その言葉と同時に男どもは、車に乗り込んだ
正樹は走って車の方へ向かった
手が車のドアノブにかかる寸前に車は発進した
正樹は倒れたバイクを起こし、その車を追おうとした
だが、バイクのタイヤは、ナイフで引き裂かれパンクしていた
「くそ!!」
正樹はバイクを蹴り倒し怒鳴った
「なんで、あいつだけ!」
正樹はこのあと、真美の親に連絡を入れ、ノブの所に向かった
「おお、正樹!元気か?」
ノブが陽気に笑いながらガラス越しにいた
正樹はノブの顔を見たとたん涙があふれ出した
「ん?正樹なんかあったのか?」
ノブは不安そうな顔で言った
「ノブ!ごめん!真美が、真美が・・・」
正樹は泣きながらノブに謝った
「正樹!落ち着け何があった?」
「真美がさらわれた」
正樹が言った
「!」
ノブはビックリした
「ごめん!俺が付いていながら・・・」
正樹は涙が止まらない
「わかった、とりあえず、俺もあと三日で出られる!それまで、あまり動くな!」
ノブは冷静だった
「でも真美が・・・」
「お前が一人で動いても、あまり意味がない」
「なんで?」
「多分、俺がらみだろ、大体見当はついている、俺に任せろ!」
「また?」
「いや、分らんがな」
「わかった、早く出て来てくれ」
「警察には?」
「多分、親父さんに言ったから・・・」
「そうか、わかった、とりあえず無理かもしれないが、三日間は体を休めろ、またひと悶着あるぞ」
「ああ、だけど・・・」
「とりあえず、お前はもう帰れ!」
ノブは立ち上がった
「もういいです」
ノブは刑務官に言った
正樹も立ち上がり面会室から出て行った
正樹はこのあと三日間、自分なりに、真美の消息を追ったが、ノブの言った通り、かすかな手がかりさえも見つけられなかった
ノブの親父さんも正樹のあとにノブに面会に言ったそうだ、親父さんも何か感じる物があったようで、警察には連絡をしないで、先に面会に来たみたいだ、
その時ノブは、「俺のせいだ、俺が何とかする、警察には言わないでくれ」と親父さんに頼んでいたらしい
ノブは姉の事を思っていた、真美がさらわれて助け出された時、いやと言うど警察の事情聴取、真美の心の傷がぶり返す結果になっる、それをノブは考えていた
三日後・・・
ノブは少年院から出てきた
正樹が迎えに来ていた
「ノブ・・・」
「ケツ乗るぞ!」
「ああ・・・」
「とりあえず、家だな」
「わかった」
正樹のバイクの後ろにノブがまたがった
正樹はバイクを発進させた
ノブの家の前に付くと、そこに五・六人の男が立っていた
正樹がブレーキをかけた瞬間、ノブは飛び下りた
ノブは中心にいた男にすごい勢いで向かって行った
「よお!お勤め御苦労さん♪」
妙に甲高い声でその男が言った
「千春!やっぱりお前か!!!!」
凄い勢いで、ノブが千春の襟元を持った
周りにいた男どもが、ノブに向かってきた
「まぁ〜待て」
千春が言った
「お前の、大切なお姉さま、汚しちゃうよ〜」
高い声で千春が言った
「真美は無事か?」
ノブは言った
「手離せよ」
千春は低い声で言った
「くっ!」
ノブは千春の襟元から手を放した
正樹は近くの公園にバイクを止め、ノブのもとへやってきた
「ノブ!紹介してくれ!」
正樹はノブが真美を助けるために仲間を呼んだものだと思っていた
「・・・」
ノブは無言だ
「ん?」
正樹が不思議そうな顔をしている
「ハハハ、お前だれ?」
千春が言った
「あっ!俺、ノブの幼馴染で正樹って言うだ、よろしく」
(なんか、変な奴らだけど、いないよりマシだな、早く真美を探しに行かないと・・・)
正樹は焦っていた
「あ〜よろしく、これから、俺たちの為によ〜く働いてくれよ!ハハハ」
千春が不気味に笑った
「?」
(なんか変だな・・・)
正樹は戸惑っている
「何が目的だ!」
ノブが低い声で言った
「もう〜、わかってるくせに〜」
千春が言った
「毘沙門天か?」
「ああ、お前の力がどうしても必要なんだよ」
千春の隣にいた、男が言った
「お前は?」
「ああ、千春さんの舎弟の俊詞て言うから、覚えといて」
俊詞が言った
「まさか、お前たち・・・真美をさらった張本人?」
正樹が茫然としながら言った
「ハハ、今頃わかったの?ぼくちゃん」
千春が、からかうかのように笑った
正樹がキレた
「テメ〜ら!!!」
正樹は千春の方に向かって行った
ノブはすごい勢いで正樹の体を押さえつけた
「ノブ〜!何で止める!」
「真美は向こうの手の中だ、ちょっとは考えろ!」
ノブは正樹に言い聞かせた
「決行は明後日、お前らがしっかり言う事を聞けば、あの女には手を出さない、約束しよう!」
俊詞が笑みを浮かべながら言った
「・・・ああ、わかった、だが約束は守れよ、一回きりだ・・・」
ノブが言った
千春は、顔一杯の笑顔を作った
「よし、最初っからそう言えば、こんな事にはならなかったのにね〜ハハハ」
千春が高笑いしている
「じゃまずは、そこのお前!毘沙門天の四代目、小嶋 隆の女をさらってこい!」
千春は正樹を指差した
「あん?なんで俺が?」
正樹が言った
「あの女、お前の女だよなぁ〜たしか」
俊詞が言った
正樹はビックとした
(何で知ってるんだ?)
「ハハ、図星だな、ハハ、あの女が、正樹って言ってたから、ピンと来たよ」
俊詞が言った
「てめ〜!!!」
正樹がものすごい形相で、睨んだ
「なんだ〜その眼は、言う事聞けない子は、殺しちゃうぞ!」
千春は低い声で言った
「くっ!わかった!あさってまでに連れてくるよ」
正樹が観念した
「正樹!」
ノブが言った
「しょうがないだろ!」
「・・・」
ノブは黙った
「見張りに俊詞と2・3人付ける、しっかりさらって来いよ」
千春は捕まる事を恐れていた、だから、自分の部下でなく、まったく関係ない正樹にさらわせることが目的だった
「ノブは俺の側から離れるな、最強のボディガードだ、ハハハ」
千春は笑いながら言った
こうして、あの抗争は幕を開けた
正樹は、指示されるまま愛をさらい、ノブは言われるがまま、千春の警護にあたった
真美の無事を祈りながら・・・
静かに正樹が口を閉じた
「ここまでが、あの抗争までの話だ!」
吉岡が言った
「そんな事があったなんて知らなかった・・・」
ハルが静かに言った
その場にいる全員が沈黙した
「で!?愛に謝りに来たというわけか?」
隆が言った
「はい・・・許してもらえるとは思ってないですが・・・事実を知ってもらいたかったんです」
正樹がうつむきながら言った
「は!まぁ、それが事実でも、俺らの怒りは消えない、こっちは一人死んでるんだぞ!許してもらえない?当たり前だ!で!その、ノブはどこにいる?ノブが詫びを入れに来るのが筋だろ!冗談もいい加減にしろ」
隆が怒鳴りながら言った
「・・・」
正樹はうつむいたままだ
「おい、隆・・・落ちつけよ、慎也が死んだのは、何もこいつらのせいではないだろ」
ハルが言った
隆もそれはわかっていた、だが、怒りのぶつけどころがなく、変なプライドがあり、どうしても、正樹を許すことができなかった、
「でも、正樹君、多分ここに来るのって、すごく勇気が必要だったと思うよ、本当に死ぬ覚悟で来たと思う、それだけはわかってあげて」
美貴が隆に言った
「・・・」
隆は黙ったまんま煙草に火をつけた
「隆、まだこの話は終わってないんだ、続きがあってな、抗争が終わってからの話なんだがな」
吉岡が静かに語りだした
正樹は千春に頭を石で殴られ、病院にいた
抗争が終わった次の日の朝だった
正樹が目を開けると、見慣れぬ天井があった
(ん?ここはどこだ?・・・ああ病院に運ばれたんだっけ・・・)
「よお!正樹?わかるか?」
そこにはノブが座っていた
「ノブ・・・あっ!真美は!つぅ!」
正樹は飛び起きたが、急に起きたせいか、頭に激痛が走った
「おい、寝てろ、真美はまだ見つかってない、な〜に、大丈夫だよ、俺のねいちゃんだからな」
ノブは言った
「何言ってるんだ、心配じゃないのか?」
正樹は大きな声で言った
「心配だよ、だがな、手掛かりがないんだ・・・だからお前が起きるまでいたんだ、俺と離れてる間に、何かわかったことなかったか?」
ノブが言った
「やっぱり、警察に言った方が・・・」
正樹が言った
「ああ、もう警察は動いている」
ノブが言った
「?」
正樹が不思議そうな顔をしている
「昨日の抗争で一人死人が出た」
ノブが頭を抱えながら言った
「!、隆か?それとも千春?」
「いや、どっちでもない、隆の隣にいた慎也と呼ばれてた奴だ、それも自分の彼女の前で」
「!、あいつが・・・ん?彼女?」
正樹は不思議そうな顔で言った
ノブは昨日の抗争の事を説明した
正樹は自分がさらってきたのが、慎也の彼女で、後輩を守るためにかばって千春に刺されて事、すべてを聞いた
「・・・」
正樹は茫然としていた
正樹は自分を責めた、自分の女の前で半殺しにあい、刺されて死んだ
悔いが残っただろう、自分だったらと考えたら・・・
いろんな思いが、正樹の頭を駆け巡った
「千春〜!!!!あいつを探そう!俺がこの手で必ず殺してやる!ゆるさない!」
正樹が感情をむき出しにした
「ああ、でもどうやって・・・」
ノブが言った
「大体見当は付いている・・・愛を連れていく時に連れて行った場所だろう」
正樹が言った
「!、その時、真美はいなかったのか?」
ノブが聞いた
「わからない、ここで待てと言われて、中には入れなかった・・・」
正樹が言った
「そこだな!間違いない」
ノブが言った
「そうと決まればこうしてられないな!」
正樹が言った
「ん?待て待て、お前は来るな、というか、来れないだろその体で」
ノブが言った
「何を、このくらい、!つぅ・・・」
正樹が頭を押さえた
「俺に任せろ!場所を教えてくれ!」
ノブが言った
「港のはずれ、いまは使われていない倉庫、17番と書いてあった」
正樹が言った
「ああ、わかった、まかせとけ!」
ノブは言いながら走って行った
「くそ!こんな怪我・・・つぅ・・痛い・・・」
正樹は頭を押さえた
病院の外に出たノブはバイクにまたがり、港にむかった
(真美、今行くからな・・・)
ノブは倉庫の前に付いた
「ここか?」
ノブは覚悟を決め倉庫の扉を開けた
開けた瞬間、誰かが飛びかかってきた
「!」
ノブは振り降ろされたバットを手で受け、カウンターで顔面にパンチを入れた
「ぐ!ノ、ノブ、」
「相手が誰だか、確認してから殴るようにした方がいいぞ、殺すぞ!」
ノブが静かに言った
「な、何しにきた?」
「ん?千春はここか?」
ノブが言った
「ああ、奥にいるよ」
その男が言った
ノブは奥に向かいながら、歩き出した
その瞬間、さっきの男が、後ろから、ノブの頭にめがけバットを振り下ろした
「ゴホ!」
ノブはバットよりも先に、腹部に振り向きざまの蹴りを入れていた
その男は、その場に倒れ、気を失った
ノブが奥に向かうと一つの部屋があった
中から笑い声が聞こえた
「ここか?」
ノブは勢いよくドアを開けた
笑い声が消え、中にいた、全員がこっちを見た
その中に千春がいた
顔中アザだらけで見るだけで痛々しい
「ノ、ノブ!どうしてここが・・・ああ、ねいちゃんだよな?」
千春がそわそわしながら言った
「ああ、返してもらうぞ!」
ノブが低い声で言った
周りにいた連中も何故かそわそわしている
「ああ、この奥の部屋にいる、昨日は助かったよ、ありがとう」
千春はオドオドしながら言った
千春たちのいた部屋の奥に、もう一つドアがあり、奥に部屋があるみたいだ
「ここにお前たちがいることは誰にも言わない、だから、もう、俺たちに構わないでくれ、約束だ!」
ノブが言った
「ああ、わかった、約束するよ」
千春が言った
ノブは奥の扉を開いた
薄暗い部屋だった
奥の壁に誰かがよし掛かっている
(真美!?)
ノブが走りだした
奥の壁には、真美が下着姿で目をつぶってよし掛かっていた
「真美!無事か?」
ノブは真美の肩を揺さぶった
すると、真美の口元から一筋の血が流れた
「!」
「昨日、犯そうと思ったら、舌噛んで死にやがった、馬鹿な女だよそいつは、ハハハ」
ノブの後ろから声がした
ノブはその場で立ち上がり、握りこぶしを震わせながら、後ろを振り返った
そこには、シンナーを吸いながら、笑っている俊詞がいた
「何がおかしい?ん?お前がおかしいのか?」
ノブは静かに言った
「ん?お前もラリってるの?」
俊詞はフラフラしながら言った
ノブは怒りで何かがキレた
「まぁ〜死んでから、二回やったけどね、ハハ、ハハハ」
俊詞は大笑いしている
ノブはその瞬間、俊二の口の中に渾身の一撃を入れた
「ゴバァ」
俊詞の口の中にあった歯がほぼなくなった
俊詞はその場に崩れ落ちた
俊詞の後ろで見ていた、千春がビビりながら後ずさりをしていた
「違うんだよ、こいつが勝手にやったんだよ、俺のせいじゃない・・・」
千春が後ずさりをしながら言った
「何を言っても無駄だ、お前はこの場で死ぬ!」
ノブが顔をあげた
ノブは怒りで、顔の血管がむき出しになっている、尋常ではない顔だ
「おい!おまえら助けろ!」
千春が後ろを振り返り叫んだ
後ろに5・6人の男がいた
「全員でかかれば怖くない、行け!早く!」
後ろにいた男どもは、千春の恐ろしさを知っている、ここで逃げればあとで、ひどい目に会う
全員が考えていた
「うおおお〜」
後ろにいた男達はノブに向かって言った
ノブは男どもに飛びかかられ、もがいていた
「馬鹿ヤロ〜お前たちも騙されているだけなんだぞ」
ノブは叫びながら正面にいた奴を殴った
「!」
ノブは背中に違和感を感じた
ノブはゆっくり後ろを振り返った
そこには、男たちの一人が、ノブの背中にナイフを突き立てていた
その瞬間、前からも衝撃を感じた
「へへへ、お前も死ねよ」
千春がノブの腹部にナイフを刺した
ノブはその場に膝をついた
「くっ・・・」
千春が、膝をついたノブの顔面に向かって横から蹴りを入れた
「があ・・」
ノブは死を覚悟した
その時
「ノブ!無事か?」
正樹が奥のドアから飛び込んできた
「正樹!?・・・来るな、こっちに来るな」
ノブは真美の無残な姿を正樹には見せたくなかった
「ハハハ、死にぞこないが一人増えただけか?ハハハ」
千春が笑いながら言った
だが、千春の言う通り、状況はあまり変わらなかった
それは、正樹もわかっていた、だが居ても経ってもいられず、病院から抜け出してきたのだ
「お前も死ね」
千春はナイフ片手に走ってきた
「正樹!逃げろ!」
ノブが叫んだ
「そこまでだ!」
正樹の後ろから20人ぐらいの警官が入ってきた
「ナイフを捨てろ!」
千春に銃を向けながら、一人の男が言った
「の、野嶋!、何でここに!?」
千春が言った
「この、包帯の男をつけてきた、まぁ〜町の中をこんな姿で走っていたんだ、違和感たっぷりだ」
野嶋は言った
「くそ!」
千春がナイフを捨てた
「おい!そこの三人を病院には運べ!あとは、全員逮捕しろ」
野嶋が周りに指示した
「はい」
周りにいた警官が、千春とその周りにいた男どもを連れだした
「真美!」
正樹は真美のもとに走ってきた
「真美!真美!」
正樹は、倒れている真美に向って何回も叫び続けた
「もう、死んでいる」
野嶋は正樹の肩に手をかけた
「うわ〜!!!」
正樹は死んだ真美の体を抱きしめその場で泣き続けていた
「その後、ノブは一命を取り止めた、だが、精神的に病んでおり、傷の回復が遅れているそうだ、千春と俊詞は殺人、拉致監禁、婦女暴行、共同危険行為、傷害、その他色々で少年院に逆戻りだ、多分しばらくは出て来れないだろ」
吉岡が言った
その場にいた全員が、無言だ
亜沙美と美貴は涙を流してる、コウは話の途中から子供がぐずり始めたので、カフェの外で遊んでいた
ハルは神妙な面持ちだ
隆と横井は怒りで、拳を震わせていた
「これが、あの抗争の裏で起きていたことです、こんな事があったから許してくれとは言いません、ただ、事実を皆さんに知っておいてほしかっただけです、愛さんには心からお詫びします」
正樹が言った
「うん、あなたのせいではないし、全部千春が悪いのはわかってたし、大丈夫!」
愛が明るく言った
その時館内放送が流た
愛が乗る便の搭乗手続きが始まった
「じや、行くか?」
吉岡が煙草を消し立ちあがった
みんなも一斉に立ちあがりカフェを後にした
「おい、待てよ」
隆が前を歩いていた、正樹に言った
正樹は止まり隆の方を向いた
その瞬間、隆は正樹の顔面を思いっきり殴った
正樹は吹っ飛んだ
ハルと横井が隆を止めた
「隆!あいつだって辛いんだぜ、許してやれよ!」
ハルが言った
「隆さん!ハルさんの言う通りですよ!」
横井が言った
「うるさい!そんな事はわかってる!」
隆が怒鳴りハルと横井を蹴散らした
「正樹!俺の事も殴れ!お互い一発づつ殴って、過去のゴタゴタを水に流そう!だから、お前も堂々と胸を張って生きろ、言葉ではうまいこと言えねえから、殴りあって終わりでいいじゃねか?あん?」
隆が言った
正樹の目には涙が浮かんでいた
正樹は立ち上がり、隆の顔面に向かって思いっきり殴った
ゴン!
「くぅ〜、きくね〜思いの強い奴の一発は!ハハハ」
隆は笑った
正樹も笑った
正樹はやっと安心できた、本当に嬉しかった
「心配して損した、横井行くぞ」
ハルは笑いながら横井に言った
「やっぱ隆さんはかっこいいなぁ〜」
横井も笑いながらハルのあとを歩いて行った
「フフフ、良かった」
「本当、男って本当めんどくさいよね〜」
美貴と亜沙美も笑っていた
「もう時間だ行くぞ」
吉岡がみんなに声をかけた
ロビー・・・
「愛さん元気でね、頑張って」
美貴が言った
「うん、美貴ちゃんもね、隆と仲良く!」
愛が笑いながら言った
「愛、いままでありがとな、幸せになれよ」
隆が言った
パン
亜沙美が後ろから隆の頭を叩いた
「愛、こんな、男にだまされるなよ!」
「フフフ、はい、亜沙美さんも・・・」
愛が言った
「痛い、心が痛い」
亜沙美が胸を押さえながら笑いながら言った
「おい、まさか、まだ、隆の事・・・」
コウが心配そうに亜沙美に言った
「またかよ、冗談だよ」
亜沙美は呆れながらコウに言った
「フフフ、隆、こちらこそありがと、楽しかったよ、幸せにね」
愛が笑いながら言った
「じゃ、みんなこの辺で、たまには電話するから」
愛は旅立っていった
愛は最後まで笑顔だった
笑顔でいることさえも、辛いのはみんな知っているのに・・・
辛い時は泣いてもいいんだよ・・・愛
作者多忙の為、更新が長引きました
次の更新も、長引く可能性がありますので
ご了承ください
感想、評価をお待ちしています