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学祭

あの夢を見てから一週間が立ち、隆の精神状況も大分安定してきていた

そんな、いつもと変わらない朝、隆は緊張した面持ちで、誰かに電話をしていた


「すいません、わがまま言って」

隆が携帯に向かって話している


「ああ、お前は一度決めたら、何を言っても駄目だからな、まぁ〜好きにすればいい」

電話の向こうから、低いトーンの声が聞こえた


「ありがとうございます」


「ああ、で?いつなんだ?」


「明日の夜九時から、いつもの集会場所です」


「わかった」


「じゃ、お願いします」


「ああ、じゃあな」


「はい、失礼します」


隆は電話を切ると、安心した表情で、自分の部屋の窓を開けた

朝の日差しを浴び、伸びをした

隆はそのまま窓から顔を出し、空を眺めていた

そんな時、遠くから、聞き覚えのある、バイクのエンジン音が、隆の耳に飛び込んできた


「ん?この音は・・・慎也?」


隆の家の前に一台のバイクが止まった

バイクは、確かに慎也のバイク、ワインレッドのゼファー(バイク名)だ


「隆さ〜ん、」

元気のいい声が聞こえてきた


「横井!慎也の単車になんか乗って、どうした?」


「はい、慎也さんのお母さんが「家にあってもしょうがないから、乗ってあげて」って・・もらちゃいました」


横井は嬉しそうに言った


「そっか〜、良かったな!」

隆はにっこり笑って、横井に言った


「はい!」

横井もにっこり笑って言った


「で?自慢しに来ただけか?」


「いえ、学祭いきますよねぇ〜?一緒に行きましょうよ」


「はぁ?なんでお前まで?」


「美貴さんが「暇だったら来て」って・・・」


この日は、美貴の学校の学園祭があって、隆は美貴と約束をしていた


(せっかく、二人で楽しめると思ったのに・・・なんで、横井が・・・)


「早く行きますよ、美貴さん待ってますよ」


「ちぇ、わかったよ、今行く!」


隆は面白くない顔をして言った

窓から、顔を引っ込めようとした時

横井の後ろに、一台の車が止まった


「?」


「横井、だれ?」


「さあ?」


横井はバイクを降りて、車の運転席側に回った

「おっさん、何か用か?」

横井が窓越しに言った


その瞬間、ドアが思いっきり開いた


ゴン!「グハ!」


横井は窓に顔を近づけていた為、開いたドアに激突した


車からスーツの男が出てきた


「隆、降りて来い、話がある」

スーツの男が言った


「野嶋、何の用だ?」

隆が睨みながら言った


「てめ〜、ぶ殺すぞ!」

横井が、鼻を押さえながら言った


「あん?面白いやってみろよ」

野嶋が挑発した


「横井やめろ!命令だ!絶対やめろ!」

隆があわてながら言った


「え?はい・・わかりました」

横井が不思議そうな顔で言った


「かかって来ないのか?つまんないなぁ〜」

野嶋が言った


「今降りて行く、待ってろ」

隆が言った


隆がすぐに、家から飛び出てきた

「で!?何が聞きたいの?刑事さんよ」

隆が言った


横井がビクッとした

(マジで・・・良かった殴んないで)


「まぁ、車に乗れ」

野嶋は、車に乗りながら言った


隆は、この前の事件で、3日間警察所に拘留され、質問攻めにあったばかりだ、挙句の果てに、犯人扱いされ、あの時の精神状況には、口では言い表せれないぐらいの辛さを味わった

隆は、強がっているような表情をしているが、内心不安で一杯だった


「横井ちょっと待っててくれ」


「はい」

横井は心配そうな顔で、隆を見た


隆は車に乗った


野嶋は場所を変え、口を開いた

「この前は、悪かったな」


「ん?ああ、本当だよ・・・」


「千春捕まったみたいだなぁ〜?」


「何を他人事のように言ってるんだよ、どうせ、あんたが捕まえたんだろ?」


「まぁな」


「何が言いたい、何が聞きたいんだ、さっさとしてくれ」


「千春を恨んでるか?」

野嶋は煙草に火を点けながら言った


「はぁ?当たり前だろ、出てきた瞬間に殺してやるよ」

隆は鬼のような、表情で言った


「そう言うと思ったよ、だがな隆、恨みからは何も生まれない、そればかりか、周りの人間にも心配をかける」

野嶋は言った


「何?説教?聞きたくね〜な!話がそれだけならもう行く、お前と違って忙しくてな!」

隆はドアノブに手を掛け降りようとした


「まぁ待て」


「なんだよ!」


「・・・やっぱりいい、行け!」


「なんだ、お前?じゃあな」

隆は車のドアを開け降りようとしたとき


「隆!」


「あん?」


「この前の事件で、警察がピリピリしている、次何かやったら、本気で引っぱるつもりだ、気をつけろ!」


「ああ、忠告ありがと、じゃあな」

隆が車のドアを閉め走って行った


「・・・」

野嶋はバックミラー越しに隆の走って行く姿を見ていた


「ふ〜また言えなかったなぁ〜」

野嶋が頭をかきながら、煙草の煙をはいた






ガチャ


助手席のドアが開いた


「!?」

野嶋が慌てた

「聡志さん!」


「よう」

そこには、隆の父の聡志がいた


聡志は、野嶋の横に乗り

「何も余計なこと言ってないだろうな?」


「ええ、言うつもりで来たんですけどね・・・」


「ほっとけ」


「でも・・・言った方が・・」


「いつ言ったて同じことだ」


「ですけど」


「あ〜、うるせな〜いつからお前はそんなにお節介ヤロ〜になったんだ」


「すいません、でも隆の気持ちを考えると・・・」


「慎也の件もあるしな、今は・・・なぁ」


「・・・」


「あいつらを見ていると、昔の俺たちを見ている様だ、あの時は楽しかったな〜」

聡志は遠くを見ながら言った


「・・・」


「いいか、お前は絶対に黙ってろよ!」


「・・・わかりました・・・」

野嶋がうなずきながら言った


聡志は優しい目で

「悪いな、あと一年我慢してくれ・・・」


野嶋はうつむいた




学校の周りは、すごい賑わいを見せていた


「遅い〜!」

大学の入口のところで、美貴が怒りながら言った


「悪い、色々あって」

隆が謝った


「色々?まさか女の匂いが・・・クンクン」

美貴が隆の匂いを嗅ぐ真似をした


「そんなわけないだろ、行くぞ」

隆が美貴の頭にポンと手を置き先に行った


「ちょっと待って」

美貴が隆の方に駆け寄って腕を組んだ


「これで、行くのか?」

隆は腕や手をつないでいるのを、人に見られるのが恥かしかった


「うん、ダメ?」


「・・・いや、別にいいけど・・・」

隆の顔が真っ赤だ


「あの〜、俺もいるんですけど・・・」

横井が後ろで言った


「あっ、横井君も来たんだ」


「えっ!」


「冗談、フフフ」


「あ〜ビックリした」

横井はホッとした


「あっ、あとね、横井君に私の友達紹介するね、多分来る頃なんだけど・・・」

その時、こちらに向かって一人の女が走ってきた


「美貴〜」


「久美子〜こっち」

美貴が手を挙げて言った


久美子は三人の前に来て挨拶をした

「初めまして美貴の友達で久美子って言います、よろしく♪」


久美子が隆と横井の前で挨拶をした

スラっと長身で長い黒髪、かなりの美人だ、美貴と二人で並んでいると、どっかのスーパーモデルのようだ


多分、ちょっと前の隆なら、狙っていただろう、だが今の隆には、美貴以外の女は目に入らなかった


「あっ、こんちわ〜」

隆は手を上げ、軽い感じで挨拶をした


「あっ!この前・・・」

横井はビックリしながら言った


「え!?覚えてくれてました、嬉しいです」

久美子が頬を赤らめながら言った


「ん?知り合い?」

隆が不思議そうに横井に聞いた


「いや、この前、仕事中に店の近くで、チンピラみたいな奴らにからまれていたんで助けました、隆さんも美貴さんも休みの日」

横井が言った


「美貴の彼氏がどんな人か興味があって、見に行く途中にナンパされて困ってたんです」

久美子が顔を真っ赤にし、照れながら言った


「へ〜そうなんだ、そんな話はじめて聞いた、あっ!だから、横井君を紹・・・」

美貴が納得した表情で話していると、途中で久美子が美貴の口を押さえた


「ちょっと美貴!」

久美子が慌てていた


「助けたって、お前が!」

隆がビックリしながら横井に聞いた


「俺だって、やる時はやりますよ、これでも喧嘩の才能を慎也さんが認めてくれたんですから」


「へ〜そうなんだ、ちょっと見なおした」


「うん私も」

隆と美貴は二人でうなずいていた


「この前は、大丈夫でした?」

横井が久美子に聞いた


「は、はい、この前は本当にありがとうございました」

久美子が丁寧に頭を下げた


「全然、気にしないでください、でも美貴さんの友達だったんですね、ビックリしました」


「すいません、急に出てきて、ビックリしますよね〜」

二人の会話を隆と美貴は横目で見ていた


「じゃ行こう♪」

美貴がそんな二人をほっといて隆の腕を組み直し進んで行った

隆も引きずられるように進んで行った


「あっ!ちょっと待って下さいよ〜」

横井が二人に行った


「じゃ私たちも行きましょう♪」

久美子が言った


二人は隆たちを追うように進んで行った


校舎の周りを囲うように、生徒たちのやってる出店がかなりの賑わいを見せていた

そんな中を、四人は楽しそうに回っていた


だが、周りの男子生徒たちの目は冷ややかだった


明らかにその目は隆と横井に向けられている


「おい、あれ、美貴ちゃんと腕組んでるよ」


「うっそ〜彼氏?マジで〜超ショック!」


「久美ちゃんまでいるよ〜」


「うらやましすぎる!」

男子生徒同士が話しをしている


そう、嫉妬の目だ


だが、隆にはその嫉妬の目も心地良かった


横井は気まずそうに小さくなっていた


あとから、知ったのだが美貴と久美子は、去年のミスコン1位2位で実はファンクラブまであるというから、驚きだ


「あっ、これ美味しそう」

美貴が出店で作っていた、たこ焼きを指差していた


「ん?」

隆が不思議そうな感じで見ていた


「おいしいに決まっているだろ、俺が作っているんだから」

出店で不思議なたこ焼きを作っていた男が言った


「先輩!」

美貴が言った


「ん?隣にいる、怖そうなお兄さんは?彼氏かい?」


隆はムッとした


「はい」

美貴は照れながら言った


「そうかい、良かったね〜、やっと信用できる人に巡り合えたんだね」

先輩は優しい表情で美貴に言った


「フフフ、そうかもね」

美貴は隆の方を見ながら言った


「あっ、紹介が遅れました、純也って言います」

先輩は隆に言った


「はぁ、隆です」

隆は素気なく言った


「私の一番仲のいい先輩なんだ、すごく信用できるの」

美貴が隆に言った


「へぇ〜」

隆はヤキモチを焼いていた

(なんかムカつくな、こいつをむしょうに殴りたい)

隆は今までヤキモチを焼いた事がない、これがヤキモチだとも気づいていない


「でも、良く歩けるね?この目線の中、まぁ、こんな美人を連れてるんだから、しょうがないかぁ」

純也は嫌味っぽく言った


「・・・あん?何が言いたい?」


「ん?何かゴメンね、気分悪くした?」

純也が隆に言った


「・・・別に・・・」

隆が言った


美貴は気づいた隆がヤキモチを焼いている事に

「先輩!これひとつ下さい」


「お!ありがと、ちょっと待ってよ」

純也は不思議なたこ焼きを袋に包んだ


「はい!これ食べて、機嫌直してね」

純也は隆にたこ焼きを手渡した


「いくらですか?」

美貴が財布を開けながら純也に聞いた


「いいよ、僕が御馳走するよ」


「本当ですか、ごちそうさまです」


「うん、仲良くね」

二人は出店から出た


「あれ、あの二人は?」


「どこ行ったんだ?」


「う〜ん、いっか、たこ焼き食べよ」


「ああ」


二人はちょっと離れたベンチに二人並んで座った

「さっき、ヤキモチ焼いてたでしょ」


美貴は笑みを浮かべながら言った

「ん?ヤキモチなのかな?ただお前がほかの男と仲良くしていると腹が立つ・・・ヤキモチだな」


「うん、ヤキモチだね」

美貴は嬉しそうだ


「フフフ、なんか嬉しい」


「ん?俺はムカつくけどな」


「でも、あの人は大丈夫だよ、昔からいろいろ相談に乗ってもらったりしてたし、何かお兄ちゃんみたいな存在なんだ」


「相談?」


「うん、前に付き合ってた人の事とか、色々」


「そっかぁ」

隆は少し淋しい表情をしていた


「食べよ!」

美貴がたこ焼きのパックを開けた

異様な形をした、たこ焼きが出てきた


「美味しいのかなぁ〜」

隆が不安そうな顔をした


美貴が一つ取り、隆の口元に近づけてきた


隆は覚悟を決め、食べた

アム


「・・・不味い、中にイチゴかな?ありえん」

隆は吐き出した


「本当?どれどれ」

美貴もひとつ口に入れた


「・・・」

美貴は口の動きを止め、かばんの中を急いで探していた

かばんの中からテッシュを出し吐き出した


「不味い〜私のはサクランボが入ってた〜信じられない」


「ははは」


「ん?なんで笑ってるの?」

美貴が不思議そうに言った


「いや、だから、あそこの店だけ客がいなかったんだな」


「そう見たい、この味じゃね・・・フフ本当にまずいね」

美貴は笑みを浮かべながらたこ焼きのふたを閉めた


「よし!じゃ、二人を捜しに行こうか?」

隆が立ち上がろうとした


その時、美貴が隆の腕をつかんだ


「ん?」

隆が振り返った


「もうちょと・・・せっかく二人になれたんだから・・・」

隆が美貴の隣に座った


「そうだな」

美貴は隆の肩にもたれかかった

隆は煙草に火を点けながら、自分の肩にもたれかかった、美貴の横顔を眺めていた


「もう秋だね」

美貴は淋しそうに言った


「ああ、寒くないか?」


「うん、大丈夫」

隆は美貴の肩に手をまわした


「大好き」

美貴が言った


「ああ、俺も愛してる」


「フフ」

美貴が満足そうに笑った


「どうした?」


「幸せだなぁ〜って」


「そっかぁ、良かった」

隆も満足そうだ


「ちょっとこうしてよ」

美貴が言った


「いいよ、お前が飽きるまでこうしてよ」

二人はしばらくこのベンチで時間が過ぎるのを楽しんでいた

二人とも幸せを楽しんでいた、一緒にいられる時間を楽しんでいた


お互いの愛の確認「好きだよ」「愛してるよ」それだけでも満足だった、安心できた、勇気が出た、


これからもずっと二人でいよう、そう思えた・・・


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