奇跡の生還
どれだけ歩いただろうか、、、
僕は、途中何度か振り返りそうになった。
「もう、ソラには会えないんだろうか。だいたい『おくりびと』ってなんだよ。意味分からない。」
ソラの存在が気になって仕方がない。
あれこれ考えているうちに見覚えのある場所までたどり着いてきた。
「ああ!ここは、交差点じゃないか!さっきまでお花畑に居たはずなのに、、、。」
どうやら本当に人の世に帰って来られたわけだ。
ざわざわ ざわざわ ざわざわ
なんだか騒がしい。
人が一点に集中して集まっている。
僕も行ってみよう!
駆け足で交差点の中心まで走って行った。
「!!!」
そこには、横転した軽トラックと、血だらけの学生鞄、脱げた靴が残ってあった。
あれは!僕の私物だ!驚いた!
僕が交通事故にあって死にかけた現場じゃないか!
報道陣まで来ている。
なんだか、自分が死にかけたにも関わらずこうして現場に立っているなんて、、、変な絵だ、、。
それにしても、僕は血だらけのハズなのにどうして誰も僕を見ないのか、、、。
不思議に思った僕は、近くに居た男の人に話かけてみた。
「あのー、すみません。」
「…………。」
無視?
その人はただ黙って現場の様子を見ているだけだった。
「わかった。僕は勇退離脱してるんだ、きっと。」
だとしたら、早く病室に戻らなければならない。
ここから近い病院は、○○記念病院だ。
ココから先は何となく思った通りに進んで行った。
「ここ、集中治療室、、僕かなり重態らしいな。」
中に入ると、酸素マスクをさせられた僕が医療器具に囲まれて眠っていた。
「僕が僕自身の本体に戻ればいいのか、、、。」
僕は眠ってる僕の身体に乗っかかった。
______!!
ああ、明るい
「先生!!!!!木元さんが目を覚ましました!!!!!」
看護士らしき人が叫んだ。
「本当ですか!!!直ちにご親族に連絡をしてください!!」
僕は奇跡の生還を遂げた。
3ヶ月間眠っていたらしい。
あれ、お花畑での出来事、、、なんだったんだろう。夢?
横になっていた身体を起こすと肩から花びらが一枚、落ちてきた。
この花びら!!!!!
ソラと出逢った場所に咲いていた花だ!
やっぱり、夢じゃなかったんだ。
僕は凄い体験をした。
忘れられない体験をしたんだ!
それから、僕は退院をして、普通の生活ができるまで回復していった。
命が助かったのは、優秀なお医者さんが担当したからだって家族や友人、教師は言う。
ただ僕ひとりだけがソラが僕を人の世に導いてくれたのだと思っている。