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宇宙戦隊リッキー団  作者: りったん
7/10

ブジュカ激怒する

 宇宙サッポロラーメンを食べ終わったリッキーは、ユッキーと共に敵の旗艦探索を再開した。


「ちっくしょう、やっぱりみそラーメンにしとけば良かったなあ」


 しょうゆラーメンを食べたツッキーが不満そうに操縦席に戻る。


 索敵用の席に戻ったキッシーは、


「俺はやっぱり、サッポロよりキタカタ食いたかったなあ」


と言った。


「何だそれ?」


 リッキーが顔を上げて尋ねる。キッシーはリッキーの方を向き、


「俺の遠い遠いご先祖様が食ってたらしいよ。もう手に入らないみたいだけど」


「ふーん。俺は食えれば何でもいいけどね、ラーメンも女も」


 リッキーはニヤリとして言う。


「お前、そんな事、間違ってもリオカちゃんの前で言うなよ」


 ツッキーがたしなめるように言った。リッキーは肩を竦めて、


「俺はそんなドジ踏まねえよ」


と言うと、また通信機に目を向ける。


「そうかねえ」


 ツッキーは操縦桿を握り直し、


「さてと。そろそろわかったか、敵さんの親玉は?」


「もう少しだね。もう一杯ラーメンでも食べててよ」


 ユッキーが通信機を操作をしながら言った。


「俺はもういいや。あとは熱いお茶が一杯欲しいかな」


 ツッキーが言うと、リッキーが、


「つまんねえから、座布団全部没収ート」


と口を挟んだ。キッシーが大笑いして、


「何だよ、それ、意味わかんねえ!」


 


 その頃、ようやくリッキー達の仕掛けたゴムゴム戦法の混乱から脱し始めたロンブの艦隊は、周囲の索敵を完了させていた。


「発見しました! 本艦の右舷十五度の方向に小型の艦船の反応があります」


 レーダー係が玉のような汗を流しながら、キャプテンシートのブジュカに報告した。


 ブジュカはのっそりとシートから起き上がり、


「全艦隊に告げる。全砲門、全誘導弾を以って、敵艦船を宇宙の藻屑もくずとせよ!」


と命じた。


 艦隊の全艦が一斉に同一方向に砲門とミサイル発射孔を向け始めた。


「我がロンブ艦隊をここまでもてあそんでくれた礼はきっちりさせてもらうぞ、異星人共」


 ブジュカはニヤリとし、またシートに寝そべった。


 


 リッキー達も、ロンブ艦隊の展開を察知していた。


「やばい事になってるよ、リッキー! 急がないと、こっちがやられちまう!」


 索敵をしていたキッシーが叫ぶ。


「よおし、ツッキー、今ので敵の親玉ちゃんがリオカのスカートの中のパンツの色くらいはっきりわかったぞ!」


 リッキーが敵旗艦の正確な位置情報をツッキーの操縦席に転送した。


「ギリギリだな、相変わらず!」


 ツッキーは目まぐるしく操縦系のスイッチを動かす。


「完了!」


 ツッキーが叫んだ。すかさずリッキーが、


「じゃあ、やっちゃってくれ、ツッキー!」


「了解!」


 ツッキーのその言葉と同時に、彼らの乗艦であるススキノは空間跳躍に入った。


 ススキノが消えた直後、ロンブの攻撃が始まり、光束とミサイルの嵐が到来した。


 間一髪で、リッキー達は危機を回避し、一気に攻勢に転じるのだ。


 


 ブジュカは、自分達の攻撃が届く寸前に敵の艦船が消えたのを知って驚愕していた。


「何という事だ……」


 そして、嫌な予感に襲われる。


(連中は何をしたのだ? 逃げただけなのか?)


 ブジュカはシートから飛び出し、レーダー係のところまで遊泳した。


「索敵しろ! 連中は逃げたのではない!」


 彼はロンブでも歴戦の勇士である。彼の第六感がそう告げているのだ。


 その時だった。


「うわああ!」


 ブジュカの旗艦の真下にリッキー達のススキノが姿を現した。


 艦底の監視員が仰天して、ブリッジに報告した。


「敵艦船、本艦の真下に現れました!」


 その報告にブジュカは唖然とした。


(奴らは、我が旗艦の正確な位置を探っていたのか?)


 ブジュカは怒りのあまり、頭の血管が切れそうだ。


「異星人の巨大戦艦はどこだ!?」


 ブジュカが怒鳴る。涙目のレーダー係はもうグッショグショの股間に大きな染みを浮き出させて、


「この恒星系の外縁部です。外宇宙へと逃走しているようです」


とモゾモゾしながら告げた。


「そういう事か。囮か。何とも下劣な作戦を!」


 ブジュカはリッキー達が「捨て石」にされたと判断した。それは半分当たっている。


「本隊を逃すな! 長距離砲始動! 一撃で沈めろ!」


 ブジュカは、作戦の卑劣さに激怒していたのだ。


 


 ブジュカの旗艦の真下に出る事に成功したススキノ。


 ツッキーとキッシーはホッとしていたが、ユッキーは気絶しそうだ。


「本当は旗艦のブリッジ付近を狙ったんだけど、少しずれたな」


 リッキーはキャプテンシートに戻りながら言った。そして、


「さあてと。歓迎の花火が上がらないうちに、コバンザメ作戦開始と行きましょうかね!」


「了解!」


 ツッキーは操縦桿を引き、敵旗艦に接近する。


「あれ?」


 キッシーが旗艦の底にある巨大な砲塔が動き出したのに気づいた。


「俺達の船より大きな大砲が展開しているぞ」


「何?」


 リッキーも目を凝らして、窓の外を見る。上昇しているススキノの十メートルほど向こうに見える砲塔が輝き出すのが目に入った。


「何だ、あれ?」


 ツッキーも気づいて呟く。


「メーター振り切るくらいのレーザー反応だよ! 長距離用だと思う!」


 ユッキーが悲鳴のような声で言った。


「そういう事か!」


 リッキーはシートの肘掛けにある大きめのボタンを力任せに叩いた。


 ゴワアアンという振動が伝わる。宇宙空間なので、一切の音が聞こえないが、リッキーはススキノの艦首に装備していたアンカーを飛ばしたのだ。


 アンカーは一直線に巨大砲塔に迫り、激突した。


 途端に大爆発が起こり、ススキノは大きく跳ね飛ばされる。


「うわわ!」


 ツッキーは必死で操縦桿を握り、艦体を立て直した。


 


 ブジュカは、長距離砲が破壊されたのを知った。


「おのれえ! 異星人め!」


 ブジュカの旗艦は超高密装甲なので、長距離砲が爆発した程度では、ビクともしない。


「爆発箇所付近の区画を切り離し、誘爆を阻止しろ」


 ブジュカはそう命じると、出入り口へと遊泳する。


「総司令、どちらへ?」


 副司令が尋ねた。ブジュカは振り向いて、


「出迎えをする。会ってみたくなったのだ、ここまでできる敵とな」


と言うと、ブリッジを後にした。


 


 コバンザメ作戦で旗艦に張り付いたススキノは、敵艦の装甲をツッキーが発明した特殊溶液を出すドリルでぶち抜き、ヘルメットを着用したリッキー達が侵入した。


 そこはどうやら使用されていない格納庫らしく、たくさんの小型艦艇が固定されていた。


「こっちだ」


 リッキーが走り出す。


「どうしてそっちなんだよ?」


 ツッキーが尋ねる。


「女の匂いがする」


 リッキーは振り返って嬉しそうに答えた。


「何考えてるんだよ」


 ツッキーは呆れてユッキーとキッシーを見る。


 ユッキーとキッシーは肩を竦めた。


 


 リッキー達の活躍で、危機を逃れた事を知らない地球連邦政府の超巨大戦艦は、太陽系を後にしていた。


 慌しくなった大統領執務室である。


「銀河系各星域へ行っている艦隊から連絡が入りました。あと数時間でこちらに到達するようです」


 白いモーニング姿のザキージフが告げた。


「そうか」


 ネクタイを締め直している大統領ゴーウンが応じた。


「我らの地球を蹂躙した異星人共に目にもの見せてくれましょう」


 ザキージフがニヤリとして言うと、


「お前が戦うのではあるまい」


 ゴーウンは不機嫌そうに言った。ザキージフはギクッとした。


 


 一方、ウェディングドレス姿のリオカは、控え室に集まったユマ、ミユ、ミコに心配されていた。


「大丈夫なの、リオカ? ザキージフのオヤジ、手が早そうよ」


 ミユが言う。ユマが大きく頷く。


「私も、式のお手伝いをする事になりましたから、いざという時は力になります」


 ミコが言った。リオカはそれでもニコッとして、


「大丈夫! きっとリッキーは異星人に勝って、私を迎えに来てくれるから」


 リオカの健気さにミコがウルッとしたので、


「ミコさん、泣かないでよお。私、頑張って堪えてるんだからあ」


 ユマも涙ぐんでいる。


「ありがとう、皆」


 リオカも目を潤ませた。


 これほどリッキーの事を一途に信じるリオカが、リッキーが女目当てに敵旗艦を探索中だと知ったら、大変な事になるだろう。

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