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宇宙戦隊リッキー団  作者: りったん
3/10

小惑星群へ

 リッキー達は所長室を出て、監獄の一番外側にある自分達の持ち物や衣服を保管してあるロッカールームに行く事になった。


「リッキー」


 一番最後に所長室を出ようとしたリッキーに美しき獄長コーンラが声をかける。


「何ですか、所長?」


 リッキーは何だろう、面倒臭いな、と思いながら振り返る。


「待っているぞ」


 何故か所長は頬を染めてそう言った。リッキーは、やっぱり俺達死ぬんだ、と思ってしまう。


「どういう意味ですか?」


 リッキーはそれでも理由を訊いてみた。


 異星人がここに攻め込んで来ないという保証はない。


 どこにいても殺されてしまうのなら、やるだけやるさ、と思ったまで。


 だから、戦いに行くのに何の後悔もない。


 しかし、所長の表情はそれよりも怖い。何の意図があるのか読めないのだ。


「デ、デートしてくれるんだろう?」


 まるで少女のように恥ずかしそうに言う所長。そのエロエロな制服からは想像がつかない。


「え?」


 さっきの冗談を真に受けたのか? やっぱり面倒臭い女だ。リッキーは心の中で溜息を吐く。


「だから、待ってるよ、リッキー」


 所長は艶っぽい目でリッキーを見やる。リッキーは思わずある部分が反応しそうになったが、


「戻れたらね」


と言うと、もう一度敬礼して所長室を出た。


「いけず」


 所長はそう言いながらも、クスッと笑った。


 


 地球圏を脱出し、異星人達の艦隊から逃げ切った超巨大戦艦は土星の軌道を通過して天王星を目指していた。


 その中の連邦政府大統領執務室には、大統領のゴーウン、政府高官のザキージフがいた。


「作戦は着々と進行しております、閣下」


 ザキージフはニヤリとして言った。ゴーウンはゆったりとした回転椅子に身を委ね、


「本当にうまくいくのか、ザキージフ?」


「ええ、もちろんです。もししくじったところで、死ぬのは囚人四人だけ。大した事はありません」


 ザキージフの嬉しそうな言い方に、ゴーウンは嫌悪の表情を見せた。


「まさかとは思うが、異星人の侵攻、お前が仕組んだのではあるまいな?」


 ゴーウンはザキージフを睨み据えて尋ねる。ザキージフは笑顔のままで大統領を見ると、


「そのような事をして、私に何の得がありますか、閣下。お戯れはお止めください」


と言った。その時、彼は大統領のスーツの襟に光る小さな何かを発見した。


「失礼致します」


 ザキージフは大統領の襟に付いていたものを毟り取った。


(盗聴器か?)


「どうした、ザキージフ?」


 いきなり襟を触られて、ゴーウンは驚いたようだ。ザキージフは頭を下げて、


「申し訳ありません。大きな埃が付いておりましたので」


「そうか」


 ゴーウンは愚鈍ではないが、ザキージフを疑いながらも買っている。だからそれ以上追及しなかった。


(この盗聴器、誰が仕掛けたのだ?)


 ザキージフはゴーウンにわからないようにそれを踏みつけて破壊した。


 


 超巨大戦艦の居住区。そこは人工的に重力を発生させており、地球上と同じ生活が営まれている。


 その居住区の一角にある救護センター。更にその中にある休憩室に、四人の美女が集まり、ミーティング中だった。


 メンバーは、大統領令嬢リオカ、人気モデルのユマ、天才研究員のミユ、修道女のミコである。


 彼女達は、リッキー、ツッキー、ユッキー、キッシーの四人のために立ち上がったのだ。


 リオカは白のスカートスーツ。黒髪とのコントラストが美しい。


 ユマは普段通りのカジュアルな青のボーダーのパーカーに黄色のマイクロミニ。可愛さが増していて、ツッキーが見たら大変だろう。


 きりっとした雰囲気のミユは、研究員らしく、グレーのパンツスーツ。ユッキーも彼女の凛々しさに惚れたらしい。


 ミコは白の法衣を着ている。戦艦の中にも教会があり、そこで働いているからだ。キッシーは彼女の祈る姿が大好きらしい。


「盗聴器が見つかったみたいね」


 ミユが言った。ミコが、


「大丈夫でしょうか?」


とソワソワしている。リオカはヘッドフォンを外してニコッとし、


「大丈夫よ。盗聴器が見つかったって、ザキージフに私達の事がわかる訳ないから」


「でも、これで盗み聞きができなくなったわね」


 ユマが椅子の背もたれで伸びをして言う。


「それも織り込み済み。ザキージフが盗聴器を仕掛けた犯人を捜そうとしてくれた方が、都合がいいの」


 リオカはニヤッとして言った。それを見たミコはギクッとしてしまう。


「貴女、リッキーとしばらく行動を共にしていたから、似て来たんじゃないの、彼に?」


 ミユが突っ込む。するとリオカは肩を竦めて、


「かも知れないわね」


と言った。


「それより気になるのは、お父様がザキージフに『まさかとは思うが、異星人の侵攻、お前が仕組んだのではあるまいな?』って尋ねた時の奴の声よ。波長が明らかに動揺を示していたわ」


 リオカは、盗聴に使っていた通信機を操作しながら言う。


「リオカさんてすごいのですね。尊敬してしまいます」


 ミコが祈りのポーズでリオカを見つめている。リオカは照れ笑いして、


「これもリッキーに教わったのよ。あの人、何でも知ってるから」


「あーら、ご馳走様でした」


 ミユがニッとして口を挟む。リオカはミユを見て、


「ええ、ご馳走様なんだから。リッキーって、カッコ良くて、頭も切れて、その上あっちも……」


と言いかけ、口を噤む。すると、急にユマが興味津々の顔でリオカを見て、


「ねえねえ、その上あっちもって何なの?」


「秘密」


 リオカは何故か顔を赤らめて立ち上がり、


「そろそろ各自の部屋に戻らないと怪しまれるわ。行きましょう」


と誤魔化すように言い、休憩室を出て行ってしまう。


「どうしたの、リオカさん?」


 ユマは訳がわからず、キョトンとしている。


「お子ちゃまにはまだ早いわね」


 リオカのリアクションで理由を見抜いたミユが言った。


「ええ? どういう事ですか、ミユさん?」


 ユマはますます不思議そうな顔になった。


「私にもよくわからないのですが?」


 今度はミコがそんな事を言い出す。ミユは肩を竦めて、


「リッキー達が無事戻って来たら、直接訊いてみてよ」


と言い、部屋を出て行ってしまった。


「博識なミコさんにもわからない事があるの?」


 ユマは意外そうにミコを見た。ミコはちょっとだけ悲しそうな顔で、


「はい……」


とだけ応じた。


 


 リッキー達は、持ち物を全て返してもらい、服を着替えると、出迎えのシャトルで冥王星を飛び立った。


「ドチラニ行キマショウ?」


 シャトルの操縦をするアンドロイドが尋ねた。リッキーは、


「小惑星群。そこに俺らの愛機が隠してあるから」


「了解シマシタ」


 アンドロイドは旧式らしく、前時代的な言語しか話せないのか、片言の人語だ。


 シャトルは冥王星軌道を離脱し、太陽の方向に向かって飛行する。


「ところで、異星人の大艦隊はどこにいるのさ?」


 キッシーが尋ねた。


「異星人ノ大艦隊ハ、丁度太陽ノ反対側、海王星付近ニ留マッテイマス」


 アンドロイドは簡潔に答えた。するとリッキーがシャトルのパネルスクリーンを操作し、


「今、冥王星は海王星と一番離れた位置にある。言うなれば、異星人の死角にいるって事だ」


と太陽系の見取り図を映した。


「だから、ザキージフは俺達を使うのか?」


 ツッキーが舌打ちして呟く。リッキーはツッキーを見て、


「さあな。そこまではどうだかわからないけど、冥王星の位置と異星人の艦隊の位置と、地球連邦政府の超巨大戦艦の位置関係を見ると、俺達と異星人の艦隊が戦っている隙に逃げるつもりなのが見えて来るな」


「そんな! 酷過ぎる!」


 ユッキーが泣きそうな顔で叫んだ。


「許せねえな、ザキージフの奴。俺達が冥王星の監獄にぶち込まれたのも、奴のせいだしな」


 キッシーはシートの肘掛けをバンと叩いて言った。


「まあ、どっちにしても、この急場を切り抜けて、ザキージフにはたっぷりと礼をするつもりさ」


 リッキーはニヤリとして、ツッキー、ユッキー、キッシーを見渡した。


 


 ザキージフは、子飼いの兵達を自分のプライベートルームに呼びつけていた。


「何者かが、盗聴をしていた。調べろ。見つけ次第、消せ」


 ザキージフは冷徹な目で命じた。兵達は無言で頷いた。

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