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宇宙戦隊リッキー団  作者: りったん
2/10

美しき獄長

栖坂月先生、許してください。

 その視線に、冥王星刑務所の所長であるコーンラは自分の席の回転椅子にもたれかかり、遂に口を開いた。


「そこまであからさまに集中されると、むしろ怖いぞ、リッキー」


 リッキー達四人は、独房から出され、その劣悪な環境からは想像もつかないほど温かくて安らぎを感じる所長室で大人五人は座れるフカフカのソファに並んで座らされていた。


 但し、手錠をかけられたままであるが。


「アハハ、すみませんねえ、何ヶ月もの間、女断ちしてるもんで、奇麗なものを見ると、目が離せなくなるんです」


 リッキーはコーンラの胸の谷間にジッと見入っていたのだ。


 始めのうちは、ツッキーやユッキー、そしてキッシーでさえ、コーンラの美貌とプロポーションに見とれていたが、それにも増して、彼女の射るような視線を感じ、ジロジロ見るのを止めたのである。


 しかし、リッキーはお構いなしで見続けていた。


「それはどうも。私も何ヶ月も男断ちをしているから、喜んでおこうか」


 所長は冗談を言ったのか、リッキーを黙らせるために威嚇したのかわからないような口調で言った。


「おお、気が合いますねえ。刑期が終わったら、デートなんかしちゃいますか?」


 リッキーは揉み手をしてとんでもない事を言い出す。ツッキー達は思わずギョッとした。彼らの後ろに立っている看守の顔にも緊張が走った。


「それは無理だな。お前達の刑期は禁固二万年だからな。私もそこまで待つ事はできない」


 コーンラは表情を変えずに無情な現実を突きつけた。リッキーは肩を竦めて、


「身も蓋もないなあ、その言い方」


と言ってみせてから、


「なあんてバカ話をするために、俺達を解放した訳じゃないんでしょ?」


 リッキーは真顔になってコーンラを見る。ツッキー達もゴクリと唾を飲み込み、コーンラを見た。


「さすがに察しがいいな。あのザキージフが目の色を変えて追わせたのがわかるよ」


 コーンラは回転椅子から立ち上がり、リッキー達の前にゆっくりと歩いて来る。


 そのムチムチした太腿が剥きだしの短めのスカートが近づくと、ツッキーやユッキーもつい注視してしまう。


 行動は大胆だが、実は純朴なキッシーは顔を赤くして俯いてしまった。


 しかし、何故かリッキーはその太腿には興味を示さず、


「ザキージフ? まさか奴が絡んでいるのか?」


と鋭い視線でコーンラを見上げた。コーンラはニヤリとして、


「さあね。そこまでは、一介の小役人にはわからないよ。但し、一つ言える事は、ここに残った方が幸せかも知れないって事だな」


「ど、どういう意味ですか?」


 ツッキーが口を挟んだ。コーンラはツッキーを見て、


「今、太陽系に、外宇宙から異星人が侵攻して来ている。すでに地球は彼らの攻撃で壊滅し、多くの居留区も殲滅された」


 その言葉にリッキー達は顔を見合わせた。


「まさか……」


 慎重派のユッキーが震え出す。嫌な予感がするのだろう。まさにその通りなのだが。


「貴方達四人に、赦免を条件として異星人と戦って欲しいのだそうだ」


 コーンラはムスッとしたのか、無表情に戻ったのかという顔つきで言った。


「じょ、冗談じゃない! そんな割に合わない話、お断わりだ」


 ツッキーがすぐさま言い放った。


「お、俺も。ここにいる方が、ずっとマシだ」


 ユッキーが同調した。キッシーは考え中のようだ。


「気が早いぞ。条件はそれだけではない」


 コーンラは腕組みをし、呆れ気味に言う。リッキーは真顔のままで、


「へえ。後はどんな条件なのさ?」


 コーンラはリッキー達を見渡しながら、


「貴方達も清く正しく美しく生きて来た訳じゃないだろう? いるよな、やりたい子くらい?」


「や、やりたい子!?」


 キッシーが猛烈に反応した。何かが弾けたのか、ブツブツ言い出す。


「おお、これは失敬。ストレート過ぎたな。好きな子と言い換えようか」


 絶対わざと言っただろ、この性悪女め! リッキーは心の中でコーンラを罵った。


「その子達との事、地球連邦政府が責任を持つとの事だ。要するにくっつけてやるという事だな」


 コーンラはニヤッとした。そしてスッと胸の谷間から写真を取り出す。


 それを見て思わずおおと叫んでしまう自分が情けないリッキーである。


「言うまでもない事だが、彼女達に強制をした訳ではない。この計画に賛同してもらった上での話だ」


 コーンラは、リッキー達の心配を見抜いたかのように言った。


 心なしか、リッキー達は安堵の表情を見せた。


「まず、リッキーは大統領令嬢のリオカ」


 コーンラが写真の一枚を見せた。長い黒髪の可憐な美人だ。


「え?」


 リッキーは仰天した。


 そもそも、リッキー達が捕まったのは、リオカのせいなのだ。


 正確に言うと、リッキーに惚れたリオカが勝手に彼らについて来たために捕まってしまったのだ。


 ザキージフの差し金で、リオカはそれと知らずに発信機を着けられていた。


 だから、リッキーの気持ちは複雑である。


 確かに、リッキーも彼女の事を好きだ。


 すぐにでも押し倒して……。そう、恋人にしたいくらいだ。


 しかし、この前の事がある。またザキージフの罠かも知れないのだ。実際そうなのだが。


「心配か、リッキー? 以前騙されているからな、リオカを餌にされて」


 コーンラは嬉しそうにリッキーの顔を覗き込む。リッキーは憎らしそうにコーンラを睨む。


「しかし、これはリオカ自身が申し出た事だ。いい話だと思うがな?」


 リッキーは考え込んだ。するとコーンラはそれを無視して、


「ツッキーには、ユマ」


と話を進める。ツッキーの顔がパアッと明るくなる。


 コーンラが見せたのは、ビキニ姿の青い髪の美少女だ。


 ユマは、ツッキーが思い続けていたある大手企業のキャンペーンガールである。


 その美貌とスタイルは男共の憧れで、女性達の羨望の的だ。


 ユマも少なからずツッキーには好意を寄せている事だけはわかっていた。


 だからこそ、承諾したのだろう。


 でも、一つ問題があった。


「犯罪になりませんか?」


 ツッキーが尋ねた。するとコーンラはフッと笑って、


「確かにユマはまだ十五歳だからな。でも、特例で許すそうだ」


「おお!」


 ツッキーは小さくガッツポーズをした。


「そして、ユッキーには、ミユ」


 コーンラが見せたのは、農場で汗水流して働く作業着姿の美人。プラチナブロンドが眩しい。


 彼女は以前、ユッキーと共同で新種のイネの開発に携わっていた事がある。


 その頃から、ユッキーは密かに憧れていたのだ。


「な、何でわかったんですか?」


 ユッキーは、誰にもミユへの思いを打ち明けてはいない。


「丸わかりだったらしいぞ、周囲には。そして、ミユ本人にもな」


「ええ?」


 ユッキーの顔が真っ赤になる。そして、同時にミユが自分の思いに答えてくれた事に気づいた。


「ミユもお前の告白をずっと待っていたらしいぞ、ユッキー」


 コーンラは微笑んで告げた。


「はあ……」


 ユッキーは嬉しさと恥ずかしさがない交ぜになり、頭を掻いて俯いた。


「それから、キッシーには、ミコ」


 コーンラの言葉を聞き、そこに示された修道院のシスターの写真を見ても、まだキッシーには信じられない。


「そんな……。俺、シスターには悪戯ばかりしてたのに……」


 写真の中のミコは慈愛に満ちた微笑みをたたえている。


 キッシーは高校時代に知り合った修道女のミコに一目惚れした。


 しかし、照れ屋の彼は、正直に「好きだ」と言えず、ミコに悪戯ばかりしてしまった。


 だから、嫌われていると思っていたのだ。


「ミコは、お前が高校生の時からずっと気になっていたそうだ。良かったな、キッシー」


「は、はい」


 キッシーは笑顔で応じた。コーンラの顔も優しく微笑んでいる。


「さてと」


 コーンラは、リッキーに視線を戻した。


「他の者達は結論が出たぞ。お前はどうする、リッキー?」


 コーンラが尋ねた。するとリッキーは彼女を見上げて、


「最初から決まってるよ、所長。あんたがせっかちだから、返事できなかっただけだぜ」


と言うと、グイッと親指を立ててみせた。


「ほお、そうか」


 コーンラはニヤリとする。そして、


「本日付で、貴方達四人の収監を解きます。地球人類のために力を尽くしてください」


と言うと、敬礼した。


 それは刑務所の敬礼ではなく、地球連邦軍宇宙軍の格式に乗っ取ったものであった。


 リッキー達は手錠を外されると一斉に立ち上がり、コーンラに対して敬礼した。


「異星人の攻撃再開の予告時間まであまり余裕がない。急いで準備を進めてくれ」


 コーンラは敬礼を解いて言った。


「どれくらいしかないのさ?」


 リッキーが尋ねる。コーンラは苦笑いして、


「あと二十四時間だ」


 その答えを聞き、リッキー達は唖然とした。

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