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亜人の行進—ソロの狼煙—  作者: しまうま
第2章 ソロと闇夜の行進曲
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第10話 耳の尖った者達

「全員その場から動くな!!」


 木の後ろから半身だけを出し、シヴァはそう叫んだ。


 50人の集団はその声に反射的に反応し、一斉に視線を彼に向ける。だがすぐに、声の主がワーウルフだと気づいたのか、互いに顔を見合わせた後にその場で静止した。


 シヴァは集団1人1人の挙動に気を配る。木の後ろから出した片目と、耳を使って監視する。

 全員に抵抗の意思が感じられないことに、少しだけシヴァは考えを巡らせた。

 そして、何か狙いがあると踏んだ彼は更に言葉を集団に投げかけた。


「お前達は何者だ!! 何しに来た!!」


 すると、墓前で祈った女が明るい声でその問いに答える。


「こんなに大勢で訪ねて申し訳ない! 私達はエルフの戦士団! 私の古い友人シグァに会いに来たんだ!」


 そう言ったかと思えば彼女は言葉を続ける。


「君、シグァと同じ色の毛をしているね!この辺りに集落があると、昔彼に聞いたんだ!」


 そんな言葉にシヴァは眉を顰める。


「余計なことを話さず、俺の質問に答え続けろ!! シグァとはどこで出会った!?」


「20年くらい前、まだ彼が15かそこらの時に、人間の世界で出会った! 2年ほど一緒に旅をしたんだ!!」


 シヴァは考える。彼女が嘘をついているようには見えず、父に関する内容が具体的。

 しかし、あの集団からは人間の匂いが強くする。故に、シヴァはまた質問をする。


「お前達がエルフだと証明しろ!! 人間ではないと示すんだ!!」


「わかった! 今から全員でフードを取るけど良いかい?」


 その彼女の提案をシヴァは慎重に了承すると、集団は一斉にフードを取った。


 白い肌ときめ細かい髪。個人個人でその瞳と髪の色にグラデーションはあるが、薄い金や薄い青・緑などが集団の大半を占めていた。そして、その顔は男女差が皆無と呼べるほど中性的で、眉毛とまつ毛くらいしか毛が生えていない。

 そんな特徴だけを並べれば人間のそれとは反しない。

 しかし、一目で見て印象的な箇所が全員にある。彼らが人間ならば、その特徴が集落で話されていてもおかしくない。


「それは耳なのか……?」


 顔の横についている槍先のように尖った長い両耳が、彼らが人間ではないと示していた。


「シグァが私に言ったんだ! ワーウルフとエルフは耳が尖った者同士だって!」



 ************


 シヴァは墓前に立っていた。その横で、先ほど言葉を交わした女のエルフが祈っている。薄い金色のショートヘアが木漏れ日によってキラキラと輝いていた。


「3年前に人間に襲われたんだ。俺以外の全員が死んだ」


 そう呟くシヴァの後ろでは、エルフの集団も跪いて祈っている。


 かれこれ数分が経つ。シヴァが頭をポリポリと掻き始めるそんな時、エルフの女が口を開いた。


「そっか……まさか、シグァの集落だったなんて」


 彼女は瞑っていた目を開けて立ち上がった。緑色の瞳は翡翠のように透き通っている。

 間髪入れずに女は言葉を続けた。


「私達は耳を隠して、人間の物さえ身に付ければ簡単にあの世界に混ざれるの。シグァも最初は敵意を向けた」


 エルフの女はシヴァの肩にそっと手を置くと言葉を続ける。


「だから、人間から情報収集ができるの。それで、3年前に聞いた噂話が君の話と一致する。1人で大変だったね」


 しかし、彼はその手を振り払うと視線を足元に落として言う。


「3年前の話だから、慰めはいらないよ。それより訪ねてきてくれて、ありがとう。父さんも多分喜んでるよ」


 その言葉にエルフの女は首を振る。


「彼は喜んでないよ。私がここに来るのは、約束を果たしてもらう為だって、わかってるから」


「約束? 父さんとの?」


 彼女はこくりと頷いた。そして、神妙な面持ちでシヴァに緑の瞳を向ける。


「人間の砦を奪うのに、君の力を貸して欲しいんだ。《《ワーウルフのためになること》》なら、どんな戦いにも参加する。そう君の父は約束をした」


 その言葉にシヴァは目を丸くする。咄嗟に声を荒げて拒絶する。


「それがワーウルフの為だなんてふざけるな! それに……それに俺は戦士じゃない!!」


 しかし、その女は動じない。真っ直ぐに、透き通った瞳で彼を捉え続けている。


「なら戦わなくて良い。でも、協力はして。あの砦の襲撃には君が関わらないと絶対にダメ。だってそこには、君の集落を滅ぼした張本人がいるんだから」


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