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プロローグ
「1人しかいないなら殺せ。複数人いるなら潜め」
狩りに出る度に、父が仲間達に言うセリフだ。若くしてなった長の言葉によって、槍を手にした大人達が全身の毛を逆立たせ、瞳の奥を揺らしている。
そんな姿を初めて見た僕は、深い深い森の奥地にこの集落があるのはきっと、奴らから隠れるためなのだろうと、幼いながらに察してしまった。
実際にその存在を見たという者は集落にはいなかった。
しかし、その姿を誰もが震えて語る。熊よりも、大蛇よりも圧倒的に恐ろしいのだと。
でも、何故大人達は怖がるのだろう。そう不思議に思わずにはいられなかった。
牙も
鋭い爪も
何もない
毛は少なくて、鼻も効かなければ、耳も悪い
僕達ワーウルフにはその全てがあるのに、なぜ何も持たない人間を怖がるんだ。




