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1.仲が悪い二人


 第二王子の婚約者である侯爵令嬢グローリア・アルバーン。いわゆる悪役令嬢。

 聖女である男爵令嬢リリアン・カーター。いわゆるヒロイン。

 ともに「転生者」である二人は、仲が悪かった。


 性格も頭もあまりよろしくない二人は、今日も今日とて険悪な雰囲気をまき散らす。

 (きら)びやかな王宮のホールで行われている舞踏会で、若い女性たちに囲まれている銀髪縦ロールの美女に、ピンク色の髪をした愛らしい女性が近づいた。


「ごきげんよう、レディ・グローリア」


 そう声を掛けられたグローリアは、ぴくりと眉を動かす。


「ごきげんよう、ミス・カーター。話しかけてくださってありがとう。わたくしもその積極的な姿勢を見習いたいですわ」


 言外に(あんたのほうが身分が低いのに先に話しかけてくるとか非常識)と伝える。

 リリアンはにこりと笑った。


「申し訳ありません、平民として育ったのでまだ貴族のルールに慣れていなくて……。それに、神殿では聖女は王妃様に次いで尊い女性だと習ったので、つい」


 リリアンも(こっちのほうが上だから)と言外に返す。


「気にしなくていいのですよ。不慣れなものは仕方がありませんわ。たしかに治癒能力をお持ちである(だけの)聖女は、象徴として尊い存在ですしね(王宮の舞踏会では実際の身分が大事なんだけど?)」


「レディ・グローリアの広い御心に感謝いたします。()()()()()()()()()()()()()かもしれませんが、どうかご容赦くださいませ(だから私の方が上なんだってば)」

 

 バチバチと、二人の間に火花が散る。

 グローリアの傍にいた令嬢たちは、巻き込まれたくないとばかりに少しずつ距離をとって最終的に離れていった。

 二人の周囲から人がいなくなったところで、リリアンがわざとらしくキョロキョロと周囲を見回す。


「ところで今日は第二王子殿下はいらしていないんですか? 殿下はお忙しい方ですもんね(放置されてて笑う)」


「仰るとおりお忙しい方なのですわ。わたくしはエスコートののち一曲踊っていただけましたので、それで満足です(放置されてないし)」


「さすはレディ・グローリアですね。その我慢強さは見習いたいものです(やせ我慢お疲れ)」


「まあ、わたくしもミス・カーターのその元気さを見習いたいですわ(非常識なガサツ女のくせに)」


「そういえば殿下の好みは面白くて元気な女性って“アレ”に書いてありましたもんね(つまり私の方が好み)」


「そうやって天真爛漫に振る舞って王子にも嫌われる性格の悪い転生ヒロインというが“アレ”関連ではよくいますわよね(つまりあんたは負けヒロイン)」


 再度、バチバチと火花が散る。

 二人とも淑女の仮面がはがれかけてきたところで、グローリアの婚約者である第二王子が姿を現した。

 すかさず近づこうとするグローリアの前に、リリアンがすっと入って邪魔をする。


「どういうおつもりかしら」


「第二王子殿下とダンスを踊ろうかと思いまして。聖女は王族と積極的に交流することが推奨されています」


 そう言って王子に向けて歩き出そうとするリリアンの前に、今度はグローリアが入って妨害する。


「それは神殿が勝手に決めたことでしょう。彼はわたくしの婚約者ですわ」


「あなたはさっき踊ったでしょう? それで婚約者としての面目は立ってるのですから、次は聖女の顔を立ててください。それに、殿下も仰ったんです。『次の舞踏会では是非踊ろう』と」


 そう言ってリリアンが前に入る。


「二曲目連続で踊れるのは妻と婚約者の特権ですわ、ごめんあそばせ」


 そう言ってグローリアが前に入る。


「婚約者が必ず二曲連続で踊らなければいけないわけではありません。私は一度目なのでお気になさらず、ごめんあそばせ」


 そう言ってリリアンが前に入る。


 そうして「ごめんあそばせ」「ごめんあそばせ」と交互に前に出て近づいてくる二人を、第二王子は恐ろしいものでも見るような目で見ていた。


 結局第二王子は「用事を思い出した」とその場からいなくなってしまった。


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― 新着の感想 ―
2人の「ごめんあそばせ」合戦に笑ってしまいました 王子がドン引きするのもやむなしですね〜
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