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第14話

 広間に足を踏み入れると、夫であるアレクシスが来賓客たちと挨拶を交わしていた。

 彼は威厳を保ちながらも、どこか思わず笑顔を作らせるような柔らかい表情を見せている。しかしその笑みは、決して妻には向けられることはなかった。


(なるほど、裏表はお得意ということね。)


 晶子は横目でちらりと彼を見てしまった。


「さて、皆さま」アレクシスがその低い声で話し始める。

「まずはお越しいただき、ありがとうございます。今日はどうぞごゆっくりお楽しみください」


 その言葉に続いて、晶子も笑顔で口を開いた。


「お楽しみいただけるよう、いくつかの催しをご用意しました」


 その言葉に来賓客たちは、無意識のうちに口元に微笑みを浮かべた。だがその笑顔のほとんどは、嘲笑が混じったものだった。

 晶子はそんな視線を感じながらも、心の中で小さく笑みを浮かべた。


(いよいよ、始めるわよ。)


 料理が次々と運ばれてきて、軽食が並ぶ。冷製のビーフコンソメ、鴨のピュレにパイナップルソースを添えたもの、サンドイッチ、そしてもちろんスイーツも。来賓たちは楽しそうに味わいながらも、どこか浮き足立った様子だった。


(そろそろね……)


 晶子はそのタイミングを見計らい、広間の壇上へと足を進めた。


「皆さま、本日はある催し物を用意しました。」


 晶子はその声を、広間に響かせるように高らかに宣言した。


「ビンゴゲームです!」


 その言葉に、広間は一瞬静まり返り、次にあちらこちらから疑問の声が上がった。


「ビンゴゲーム?」

「何かしら、それ。」

「聞いたことがないわ。」


 晶子は微笑みを浮かべながら、使用人たちに合図を送った。令息令嬢たちには、数字が書かれた紙とペンが配られる。


「今から、この箱に入った数字が書かれた紙を私が引いていきます。その数字と同じ番号を丸で囲んでください。丸が縦、横、斜めで一列並んだら『ビンゴ』です。その場合、前に出てきてください。」


 一瞬の沈黙が広がった後、来賓たちの間にざわめきが走る。


「景品ですって?」

「なんの景品だろう?」


 そのざわめきの中、晶子の隣で控えていた使用人が、大きなシーツを静かにめくる。

 シーツの下には、豪華な景品が並んでいた。

 クリスタルでできた白鳥のペア、好きな音楽の演奏、限定品の香水、ルビーやサファイヤの宝石類、懐中時計、高級葉巻──。

 どれも目を見張るような物ばかりだった。


「それでは、ゲーム開始です!」


 晶子はその言葉を宣言すると、箱から一枚ずつ数字の書かれた紙を引き上げた。

 その瞬間、広間の空気が一変した。好奇心と期待、そして少しの戸惑いが入り混じった中、来賓たちは一斉にカードに目を落とす。


 アレクシスは、わずかに唇を引き結んでワインを一口飲んだ。彼の視線は無感情に広間を見渡し、どこか冷めたものが漂っていた。しかし、その目の奥には、確かに興味が光っていた。

 彼は、ティエナがどこまでこのゲームで人々の心を掴み、どんな演出をしてくるのかをじっと見守っていた。



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