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第13話

 

 手鏡──Ducere(ドゥケレ)は、次々とこの世界の主な出し物を映し出す。


  仮装・仮面劇マスカレード

 貴族たちが奇抜で豪華な衣装を身にまとい、仮面をつけて登場する。

 動物や神話のキャラクターに扮したグループが、踊りや歌を披露する様子。例として、孔雀や白鳥、竜の頭をかぶった出演者たちが登場し、華やかな舞台が広がる。


  黙劇ミューマーリー

 セリフなしで演じる民衆劇。戦士の決闘、医者が蘇生する定型パターンの演目。

 仮面や被り物で変装し、家々を巡って演じる伝統的なスタイル。季節の祭りに合わせて行われることが多い。


  舞踏会

 若い男女が社交と結婚相手探しを兼ねて踊る場。ワルツやカドリールが人気のダンス。招待状には曲目とパートナーの名前を書く欄があり、母親がパートナーを選ぶこともある。


  晩餐会・祝宴

 豪華な料理とワインが振る舞われる。料理は10皿以上のコースで、給仕スタイル。食後は男女別に分かれてコーヒーやワインを楽しむ時間が設けられる。


  音楽と歌

 トランペットや竪琴などの楽器演奏、貴婦人たちによる歌唱。楽師や歌手が宴の雰囲気を盛り上げ、音楽がパーティーの華を添える。


 ……。


 晶子はしばらくその一つ一つを見つめ、目を細めてうなる。


「どれも魅力的だけど、これだけじゃつまらない。うーん」


 その言葉とともに、ふとひらめいたように目を輝かせた。


「そうだ! ビンゴゲームをしよう!」


 その言葉を発した瞬間、手鏡の鏡面に瞬時に映像が現れる。

 クリスタル模様のビンゴカード、煌びやかな数字が並び、賞品のアイデアも浮かび上がる。


「豪華な宝石、羽根飾り、または特別なダンスの一曲を賞品として贈るのもいいわね」


 晶子は楽しげに目を細め、思案を続けた。


「それに、ビンゴの景品には、ちょっとした仕掛けを加えるべき。例えば、当たった人が自分の選んだ相手と一曲踊ることにする、なんてどうかしら。社交界の交渉事が、ここで始まるわね。」


 その言葉に、鏡面がきらりと光り、ドゥクレが静かに応じるように映像が調整されていく。「それが楽しみだわ」と晶子は自らのアイデアに満足し、ゆっくりと鏡面から目を離した。


「さて、準備を進めないと」


 彼女は意気揚々と立ち上がり、次々にアイデアを形にしていく。

 パーティーがどれほど華やかなものとなるか、そしてその先に待ち受ける新たな挑戦が、少しずつ形を作り上げられていく。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 パーティ当日。


 来賓客たちは、ヴェルハルト侯爵邸の前に集まり、ひそひそと噂を交わしていた。


「あの『王太子に婚約破棄された令嬢』が開くパーティーだって?」

「まさか『夫に相手にされない日陰の夫人』が招待した宴だなんて、誰が想像したかしら?」


 もちろん、侯爵との関係を築きたいという思惑がある者もいれば、政略結婚の敗北者であるティエナに対する好奇心から足を運んだ者たちも少なくなかった。

 ティエナの過去、侯爵との冷え切った関係、そしてその陰に隠された彼女の新たな動き──すべてが彼らの興味を引きつけてやまない。


 ヴェルハルト侯爵邸には、次々と豪華な馬車が到着する。

 貴族の令息令嬢たちは、華やかな衣装を身にまとい、自信と気品に満ちた姿で降り立った。誰もが、互いに挨拶を交わしながら、内心で相手の腹の内を探ろうとしている。


「まぁ!」

「これは……」


 屋敷の中に足を踏み入れた来賓たちは、その美しさに驚愕した。

 豪華な装飾、瑞々しい花々が所狭しと飾られ、洗練されたデザインのテーブルクロスが敷かれている。どこを見ても、見事に計算された美しさが広がっていた。


「皆様、ようこそお越しくださいました」


 その声が響くと、全員が一斉に声の主へ振り返った。

 目の前に現れたのは、噂の中心人物──ティエナだった。堂々とした佇まいで、まるでこの屋敷の主であるかのように、優雅に招待客を迎え入れる。彼女の姿に、来賓客たちは一瞬、目を見開いた。


 その静かな驚きの中、ティエナの瞳の中には一片の動揺も見えなかった。どこか強い意志を感じさせるその表情には、まるで「私はこの場所にふさわしい」と言わんばかりの自信が漂っていた。


 晶子は心の中でくすりと笑いながら、招待客たちを屋敷の中に案内する。彼女の目には、皆の顔に浮かぶ驚きや戸惑いがしっかりと映っている。


「ようこそ、皆様」


 その言葉には、驚きや期待を集めた自らの存在を、しっかりと受け止めた上での余裕が感じられた。まるで、全てを知った上で舞台に立つ役者のように。


 そして、屋敷の中で起こるであろう、あらゆる出来事のひとつひとつが、晶子にとってはもう一つのゲームのように感じられていた。



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