7話 さようなら旦那様
お義父様はわたくしの方を向き、頭を下げる。
「リリア、辛い思いをさせてすまなかったな。
君達の技術のおかげで痩せていた土地もだいぶ回復した。
感謝してもしきれない。
この愚か者の妻になってくれて感謝する」
「リリア、バカ息子がごめんなさいね。
わたくしからも礼を言うわ。
貴女がくれた膝掛け、暖かかった。
ありがとう。
礼を言うのが遅くなってごめんなさい」
「お義父様、お義母様。
わたくしは当然の事をしたまでです」
「離婚を止めようとしていたが、
もう領民達は侯爵家のノウハウを完璧に覚えて自分達だけでやっていけるまでになった。
今回魔物被害にあった所は森の中や人の住んでいない土地だからこちらで対処できる。
故に離婚を許可する。
君はもう自由になっていい。
後始末は私達とライナスがする。
本来ならあの時打ち切りになる所を君が続けてくれるよう伯爵に懇願したと聞いた。
その為に婚約は破棄しないで嫁ぐと」
そう言った先代様に驚く旦那様
「え?どういう・・・
こいつは俺が好きだから結婚したのでは???」
頭に?を付けている旦那様ににこりと微笑むわたくし。
「あら?貴方に愛情など、これっぽっちもないのですが?
なにを勘違いしているのかしら?
本来なら、貴方が処罰を受ける時に婚約を破棄する予定でした。
それと同時に侯爵家からの技術提供も打ち切り、撤退する予定でしたの。
わたくし、辺境の土地がまだまだ回復途中でこのまま撤退させるのは領民の皆様に申し訳なくて、
どうにかできないか叔父様に相談しておりました。
しかし貴方が当主になると聞き、わたくし決めました。
貴方の妻になる事を。
そうすれば、今の状態を維持できますもの。
お義父様とお義母様は驚かれておりましたが。
『アレは君を嫌っている。それでもいいのか。
繋ぎの当主だから離婚はしなければいけない。それでもいいのか』
と聞かれましたが、大丈夫と答えました。
領民の皆様の生活が良くなってほしかったのですもの。
おかげで土地は殆ど回復、もう侯爵家が手を貸さなくても良い所までいきました。
良かったですわ。
それにしても離婚を許可してくれるのですか?
ありがたい事ですが、
土地の回復は、まだ完全とは言い難い所もあります。
もう少し様子を見てからでも良いのですが?
それにライナス様はまだ卒業していないのでは?」
わたくしがお義父様達に問うと
「いいのだよ。
後は我々だけで大丈夫だ。
これまでありがとう。
そして済まなかったな」
「ええ、そうよ。
貴女は気にしなくて良いの」
お義母様もそう仰り。
「後の事は私に任せて。もう学園は卒業したよ。
飛び級でね。だから大丈夫。
今までありがとう。
幸せになって」
とライナス様も。
「それならば・・・」
と言い、離婚届に名前を書きます。
トーマスが離婚届を確認して頷く。
「あとは神殿へ届けるだけですね。
白い結婚だったという証明書類も揃えておきましたし、
すぐに届けて参ります」
そう言うと部屋を早足で立ち去りました。
「おい待て!持っていくな!!」
との旦那様の声を無視しで。
「さてとではわたくしはこれで失礼致します。
これまでお世話になりました。
皆様お元気で。
サラ!行くわよ!」
はーいお嬢様!という声が聞こえる。
まだ離婚は成立していないのに、と苦笑し
予め纏めてあった荷物を持ち立ち上がります。
そこに弱々しい声が
「ま、待ってくれ。
離婚が成立すると、俺はどうなる?」
「あら元・・・ではないですね、旦那様どうしました?
離婚、もうすぐ成立しますが、何かご不満でも?」
にこにこと笑うわたくしに
「何故笑っている!?俺は、
俺を置いて去る!?俺を見捨てるのか!?
妻として支えるべきだろう?」
何を言っているのでしょう?
「頭大丈夫ですか?
離婚が成立したから独り身。
あ、カレアを迎えるのでしたっけ?
でもライナス様がすぐ当主を継ぐのでそれは無くなり貴方は処罰を受けます。
カレアも迎えに行けませんよ?
あの子の罪は事実ですから。
先延ばしにしていた事をするだけです。
見習い頑張ってくださいね」
「断種など必要無いだろう!?」
「平民に堕としたとはいえ元辺境伯当主。
種を撒かれても迷惑だ。
・・・本当はあちこちに手紙を送りつけた事やリリアの犯罪とやらを証明しようとして部下を使って
脅した事、
リリアの編み物を取り上げようとした事を含めたら今すぐ切り捨てたいがな。
自分の妻に暴力を振るうとは」
嘆くお義父様。
「脅し?それに編み物・・・」
ぽつんと呟く旦那様。
「お前の所に手紙が来ていた筈だが?抗議の手紙がな。
辺境騎士団が来てリリアの事を聞いていたとか?
パーティーでもリリアそっちのけで協力を呼びかけていたとか。
リリアの作った編み物や刺繍は評判で、夫人や令嬢の間で評判になっているのだ。
それを取り上げようとした。トーマス達が協力してな、こっそりと送っていた。
それでも我が家の評判はガタ落ちだ」
ため息を吐く。
「トーマス!あいつら・・・」
「あれらはよくやってくれた。
まぁ1人噂を信じた愚か者がいたそうだが、
すぐに解雇できた」
「トーマス達にもお礼を伝えておいてください。
それでは」
挨拶をし、歩き出そうとした所へ
「ままま待ってくれ!
悪かった、冷たくして殴って悪かった!
離婚は無しだ!お前も一度離婚したからもう貰い手などいないだろ?
せいぜい後妻・・・それも年を取った貴族の!
それより良いだろう?なぁ?」
縋り付こうとする旦那様。
首を傾げて聞く。
「カレアの事はどうするので?」
「カ、カレアは諦める!あれは、碌でもない女だ!助けたりしない!だから」
そう言いつつ諦めていないと顔に書いてありますよ?
はあ、と溜息を吐き囁く。そして
「わたくし、貴方の事、大っ嫌いですわ。
早く消えてくださらない?」
にっこり。
固まる旦那様を置いて、
身を翻して部屋を立ち去りました。
やっと自由だー!
次回、最終回。