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4話 食事後とそれから

食事を終え、部屋に戻ったわたくし。

「さてと、何もするなって言われているし、

どうしようかしら?

そういえば、最近全然編み物をしていなかったわ。

久しぶりにやりましょう」

そう言うと、

毛糸と編み針を取り出します。


家族から空気のように扱われていた時、

寂しさを紛らわす為にしていた刺繍や編み物。

貴族達主催のバザーにこっそりと出した所大好評。売り上げを孤児院に寄付していた。

(サラが育った孤児院が近くにあり、老朽化が進んでボロボロだった)

ある日カレアにバレてからは、

カレアが制作したと偽り刺繍入りハンカチをお茶会に持っていって、欲しいと言って来た貴族向けに

オーダーメイドを作らされていた。

バザー品も自分作だと偽っていた。


学園での出来事以来放置状態でバザーも忘れていたが、

久しぶりに作りたくなった。

「辺境ではバザーは開催していないのよね。

王都のバザーに持っていきたいけれど、

・・・旦那様にバレずに出せるかしら?

トーマス達はわたくしの味方をしてくれるけれど、無理ね」


あの孤児院の子供達、元気かしら?

時々こっそりと抜け出して孤児院に行っていたので、

孤児院の人達は皆誰が寄付をしているか知っている。いつだったかカレアが押しかけ、

「わたしが貴女達に寄付をしたのよ!

敬いなさい!!」とか言っていたけど、

適当に拍手をしていたっけ。


「そう言えば、サレリア伯爵夫人に頼まれていた刺繍はどうしましょう?

刺繍は完成しているけれど、

渡せていないわ」

引き出しに入っているお守り袋。

魔除けの刺繍を施してほしいと頼まれ完成済みだが、学園での事があってからそのままの状態。

わたくしはお茶会には殆ど呼ばれず、

サレリア伯爵夫人の顔も知らないのだけれど。


「伯爵夫人宛に届けるしかないかしら?

どうするか手紙を書いたほうがいいわね。

・・・でも旦那様、反対するわね。

『何もするな』って言っていたし。

どうしましょう」

困り果てているといきなりドアが開き、旦那様が入ってきました。


「あら旦那様、ノックもなしにいきなりなんでしょうか?」

驚きつつ聞くと

「サレリア伯爵夫人から手紙が来てな。

『お守り袋の刺繍を施してほしいと依頼したのだが完成しているか、

完成していたら届けてほしい』

と書いてあった。

あれはカレアが作った物だがお前、持っているのか?」

こちらを無視して一方的に話し出した。

しかもカレアが作った物だと思っている。

「持っていますよ。

わたくしが刺繍をした物ですから」

そう答えると、

「ふん、まだそんな嘘を。

まあ良い、どこだそれは。とっとと出せ」

内心ため息を吐きつつ立ち上がって引き出しに向かい、取り出して渡そうとすると乱暴に取り上げる。

「乱暴に扱わないでください」

「うるさい嘘吐き女。

編み物?これもカレアがしていたものではないか。

お前、下手なくせにする気なのか?

やめておけ」

さすがにカチンときます。

「・・・貴方は何故カレアが嘘をついていると信じないのですか?」

そう言った瞬間

バシン!!と音がして頬に衝撃が走り、倒れ込むわたくし。

顔を上げると怒りの形相の旦那様。

「カレアの悪口を言うな!!

俺は騙されない!!カレアはいい子だ!!

ペンダントの件だって、

お前が細工したに決まっている!!

魔法を使えるのだからな!

用は済んだ、今日はここから出る事を禁ずる!!

食事も摂るなよ!!」

と言うと、ドアをバタン!!と乱暴に閉めて行きました。


呆然としていると

物音を聞きつけたのかサラがやって来て、

「奥様、何が・・・!?

腫れているではありませんか!!

まさかあの男が!

すぐにタオルを持って参ります!!」

そう言うとバタバタと走って行きました。


(愚かだと思っていたけれど・・・、

まさか妻を殴るなんて。

しかもわたくしがペンダントに細工したと考えるなんて・・・

細工が出来ない事は常識でしょうに、あの男、

どうしようもないわ)


当主の証のペンダントに細工が出来るのは、

王宮の魔術師のみ。特殊な魔術の為に修得者も少ない。

魔法の才能があり、行使できる人間でも細工など不可能。

そんな事は常識なのに。


「タオルをお持ちしました!!

これで冷やしてください!!

ああ、何てこと・・・口から血も出てます!」

真っ青な顔のサラ。

「あの男、カレアの事を疑っていないわ。

ペンダントも、わたくしが何かしたと思っている。

王太子達も疑っていたけれど、最後はカレアの嘘を認めたわ。

・・・あんな男が領主なんて・・・」

領民達を見捨てられなかったから、婚約は解消しなかった。

ライナス様には婚約者がいて、仲睦まじかった。

婚約を解消してわたくしと婚約をして欲しいと、

会えなかった。

だから、あの男と結婚した。

でも

「あそこまで愚かだと、思わなかった」

「奥様・・・」

ジンジン痛い。口の中で鉄の味がする。


とトントントンと音がして扉が開き、

トーマスとメイド長が入って来ました。


「失礼致します。旦那様の命令で、

刺繍や毛糸などを奥様から取り上げろと・・・

!その顔、殴られたのですか?」

驚く2人に頷く。

「ええ、お守り袋を取りに来た時にね。

あの旦那様はカレアにご執心ね。

わたくしの事なんて、信じていないわ。

今日は部屋にいて、食事を摂るなとも言っていたわ。

逆らったらクビにされるから、

食事を持って来てはダメよ。

毛糸や刺繍、持っていっていいわ」


そう言うと青ざめるが

「承知致しました」

「かしこまりました」

そう言って毛糸や刺繍糸などを持って行きました。


この日はこのまま部屋にいて、湯浴みもできなかった。

昼と夜、部屋の前にサンドイッチが置かれていた。






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