儚い世界
昔 時間の神クロノスは
人間の生活に静かに影響を与えていた
預言者や賢者を通じて 人間たちに警告を与えていた
しかし ほとんどの人間は警告を無視して時間を浪費していた
ある日クロノスは人類が時間を浪費し
自然のサイクルを無視していることに激怒した
人間は時間を粗末にし
無駄な時間を過ごし
長寿を享受する事ばかりを考えていた
無駄な時間を過ごす事しか出来ないのであれば
寿命を短くし 余生を短くしてやろう
そうして人間たちは1か月で10年成長する体になってしまった
社会は混乱し生活も混乱し
時代は衰退していった
青木は言葉を失った
「その後どうなったんだ?」
「話はここで終わりじゃ
昔は長命だったみたいじゃが
わしらは こうして生きておる」
…………
「あんた…… 何年生きてるんだ?」
「わしは もう少しで8か月目じゃな」
…………
なんだ この世界は……
狂っている……
寿命が短いから
命知らずの旅人か……
なるほどな……
「あんたらは幸せか?」
老婆と男は少し笑った
「わしらはこの生活しか 知らない
人は1年以内に絶対死ぬ
だから死ぬ前に子を作り 生活を続けている
無駄な時間を作らず
1日1日大事にしてな」
「俺との関わりは無駄じゃないか?旅人なんて関わるだけ無駄じゃないか?」
「人と人の関りほど大事なものは無い
旅人さんなら 尚更さ」
男は笑顔だった
「そうか……」
青木は立ち上がり
無言で扉をあけた
は?
私の部屋だ……
振り返ると扉は消えていた
頭がフリーズして
外の空気を吸おうと思って扉を開けてしまった……
なんだったんだ……
夢?だったのか?
スマホで日付を確認すると
1日経っていた