儚い扉
青木が扉を開けると
そこは草原であった
知らない草原
私のアパートの外に
そんな草原は無い
ここはどこだ?
全然知らない土地ではあったが空気は旨かった
建物も無く
車などの騒音も無く
人すらいない
素晴らしい
暇から少し解放された
扉の向こうは知らない草原
気持ち良かった
その高揚感に浸ってから
考える
で ここはどこだ?
広い草原の中央に1つの扉
まるでどこでもドアだ
つまり私の部屋に青いネコ型ロボットでも来たのか?
とりあえずスマホでコンパスを使い歩い北へ歩いてみることに
1時間ほどずっと草原だったが
1つの村を見つけた
明らかに現代の建物の形はしていなかった
1人の中年の男がいた
試しに手を振ってみると男も手を振り返した
「すまない ここはどこだ?」
「珍しいな 命知らずの旅人かい?
そっちから来たって事はその先に人がいるって事か?
ここはターベンっていう村さ
住民は20人にまで減っちまった小さな村さ」
命知らずの旅人?命が奪われるような危険な地域なのか?
人がいる?周辺の把握が出来ない環境って事か?
ターベン?外国か?しかし言語は日本語だ……聞いたことが無いな
20人まで減った?食料問題か 定期的に襲われてるって事か?
青木が考えていると
「まー 珍しい客人だ 立ち話もなんだし
俺の家で話そう
旅の話とかも聞きたいしな」
そう言って男は笑みを浮かべた
家に入ると木製で作られたボロボロ家具が多く見られた
使われなくなった山小屋と同じレベルに感じた
「私は日本から来ました ここはどこの国ですか?」
男は首を傾げた
「どこの国?ここはターベンだ ターベン以外の名前はわからない
日本?そんな村があるのか」
青木も困惑した
会話が合っていない
国が存在していないのか
国の存在を知らないだけなのか
情報が少なすぎる
まずは時代背景から考えてみよう
あの扉はタイムマシンでかなり昔に飛ばされた可能性もある
「今は西暦何年だ?」
男は頭を傾げた
「西暦?何年ってなんだ?」
「ではあなたたちはどうやって生きている?」
男は少し笑い
「あんた 面白い事を言うね 川で魚を取ったり野菜を育てて生活している
たまに牛が村に近づいてくる時があって その牛を仕留めた時は村で祭りが始まる
あんたの所は牛を食った事があるか?血はすごいが魚が少し大きくなったと思えば食える
焼くと更に旨くなるんだ」
食生活は普通の人間のようだ
牛は貴重な動物って感じか
食べれるって事の認知も知っている人 知らない人が存在するレベル……
「あんたらの村は他の民とはコンタクト……いや連絡などは取ったことが無いって事か?」
「そりゃ 命知らずの旅人がこの村から出ない限りは無理だな
どこに村があるのか 距離はどのくらいあるのか
それがわからなければ みんな死にたくないんだよ
あんたの日本っていう村はどのくらいの距離にあるんだ?」
青木は少し考えて
「私は1時間くらい歩いた距離の所にある扉から来た」
男は また首を傾げた
「扉?そんな物はなかったと思うが……」
青木は自分の話をした所であまり情報が得られないと思い
少し村を見せてもらうことにした