165.まさかの三角関係?
私は、リリーからもらった石を使って調合させてもらうのだから、一緒に立ち会ってもらおうと思い、リリーとケイトと一緒に馬車でアトリエに戻ってきた。
すると、真っ先に魔導人形のピーターとアリスがふわりと飛んでやって来た。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「いらっしゃいませ、お客様」
そして、二人は礼儀正しくお辞儀をする。
リリーは、空を飛び、話をし、自立して動く愛らしいうさぎのぬいぐるみを一目見て大興奮。
そして、ケイトは驚きであんぐりと口を開けている。
リリーは、度胸が座っているのか、ピーターとアリス二人と握手を交わしている。
「てざわりは、ほんとうにぬいぐるみだわ!」
そういえば、二人にはこの子達を紹介していなかったわね。
「リリー、ケイト。この子達は、私が作った『魔導人形』のピーターとアリスよ。アトリエのみんなのお手伝いと、魔法を使って警備もしてもらっているわ」
そう説明すると、ピーターとアリスが再びペコリとお辞儀をする。
「そして、ピーター、アリス。この子は、私の妹のリリーと、その付き人をして貰っている侍女のケイトよ」
すると、リリーは「よろしくね!」と言って、再び彼らと握手をした。
……ケイトは、頭を抱えていた。
まあ、それが普通の大人の反応かな(笑)
「ねえ、おねえさま。リリーは、おどうぐばこをみたいのだけれど、よいですか?」
一通り挨拶を済ませて満足すると、リリーは、道具箱、アトリエの保管庫のことだろう、そこを見たいと言ってきた。
「良いわよ、リリー。ケイトは危ないことがないように、見ていてあげてくれるかしら」
ケイトにリリーの見守り兼悪戯防止をお願いすると、気を取り直したように、きちんとした姿勢で承知したと返事をしてくれた。
「やったわ! いちどここを、のぞいてみたかったの!」
ケイトに保管庫の扉を開けてもらい、中を覗き込む。瞳はみるみる好奇心なのか、きらきらと輝いてくる。
「うわぁ、すごいわ。あっ、これもすてき!」
保管庫の中には、今まで採取してきた素材やその残り、そして、それらから作ったものなど、色々入っている。見るもの全てが目新しく、楽しいようだ。
その間に、私は、合金を作るための準備をしようと、戸棚からミスリルのインゴットを取り出し、それを持って、錬金釜の横に置く。そして、リリーから譲ってもらった石と、溶岩鉱をポシェットから取り出して、インゴットの横に並べた。
リリーは、しばらく時間も気にせずに、ごそごそと物色していたかと思うと、一つの石を持って、私に見せに来た。
「ねえ、おねえさま。このこも、あのこがすきよ」
そういってリリーが指差すのは、リリーから譲られた石。そして、リリーが手に持っているのは、いつか調合に使った残りの癒しの石だった。
……嫌な予感がする。
私は、渋々、その三つの石を【鑑定】で確認することにした。
【溶岩鉱】
分類:鉱物・材料
品質:高品質
レア:A
詳細:装備品に加工することで、三十%の炎属性の追加ダメージを与える。……が、とある特別な石と混ざり合うことでさらなる特殊効果を発現する。
気持ち:そこの姫がいないと俺の神がかった力は引き出せないな。
【癒しの石】
分類:鉱物・材料
品質:良質
レア:B
詳細:装備品に加工することで、自然に体力回復の効果を発揮する。……が、とある特別な石と混ざり合うことで特殊な宝石にすることができる。
気持ち:聖女様と一緒になりたい……!
【聖女の煌石】
分類:鉱物・材料
品質:高品質
レア:S
詳細:高濃度の聖なる魔素を宿す極めて稀な石。
気持ち:私を奪い合うのはやめてっ。
「リリーの言うとおりだわ」
私は、ひとまず大発見をしたリリーの頭を撫でる。
……でもこれって、三角関係ってやつかしら?
しかも、取り合っていると思われる『聖女の煌石』は、かなり稀な石らしい。探して簡単に見つかるとかそういうものでもないんだろうなあ……。
特に期待もせず、側にいるリリーに相談をしてみた。なんとはなしにだ。
「ねえ、リリー。こっちの石もこっちの石も、リリーの譲ってくれた石と一緒になりたいって言っているんだけれど、どうしたら良いのかしら?」
だけど、リリーは、じいっと『聖女の煌石』を覗き込んだあと、あっさりそれを解決してくれた。
「このこ、とってもチカラがあるから、はんぶんこでいいんじゃないかしら?」
あ、そうか。何も、全量必要とも限らなかったわね。『聖女の煌石』は、小石と言いつつ、少し大きめの小石だ。
今日の一番の功労者はリリーね!
……あれ? 解決した気がするけど、これで良いんだっけ?
『聖女』が二人の男に愛を分かち合う。
……ま、いっか。