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126.黒溶鉱の素材合わせ

『黒溶鉱』の採取から帰ってきて、まずは実家に寄る。

 リリーとの約束があるからだ。

「ただいま帰りました」

 玄関でセバスチャンに出迎えられながら、屋敷に入る。

「おねえさま!」

「「デイジー!おかえりなさい」」

 リリーとお母様、ダリアお姉様に迎えられる。

 リリーが駆け寄ってきて抱きつくので、その柔らかい髪の毛の上から頭を撫でる。


「お勉強の成果を見て欲しいから、寄って欲しいって話だったわよね?ちゃぁんとお勉強は進んだのかしら?」

 そう言って、リリーの顔を覗き込む。

 すると、リリーがお母様とお姉様の方に目を向ける。そして、思った成果が出なかったのか、眉を下げてこちらに向き直った。

「うーんっとね、おかねのけいさんが、じょうずにできないの」

 うーん、なるほど。確かに、基本的には十ごとに貨幣が変わると思っておけばいいんだけど……ぱっとは出ないよね。


 ……そういえば、この間の納品の品は、手伝いがあったとは言っても、リリーが作ったんだったわ。リリーにちゃんとその分を手間賃として渡さないといけないわね。

「じゃあ、こうしましょうか」

 そう言って、抱きつくリリーの腕を解いて手を繋ぎ、一緒にお母様の元へ行く。

「お母様。先日、リリーは、国への納品の品を作ってくれました」

 お母様は、ソファに腰を下ろしたまま、そうね、と頷く。

 そのお母様に、金貨一枚を手渡す。

「これは、その製作に携わったリリーの取り分です」

 すると、それを見たリリーが、「きんか……いくら?」と必死に指で計算しながら首を傾げている。

 うん、使えるのはまだ先みたいね。がんばって。

「お母様にお預けしておきますから、お父様にお渡しして、私の時のように管理をしていただけるようお願いしてください。そして、お金の計算ができるようになった暁には、このお金のうちから、『自分のお金で自分でお買い物』を経験させてあげて欲しいんです」

「まあ、それは素敵なご褒美ね!」

 お母様の向かいに腰を下ろすお姉様も賛成している。

 お母様も、その提案ににっこりと微笑んで頷いてくださった。

「それは、ご褒美にもなって、実地でのお勉強にもなっていいわね」


「じぶんでおかいもの!」

 リリーも、瞳をキラキラさせながら胸の前で拳を握る。

「おねえさま、ありがとう!」

 これで、勉強も捗るだろう。無駄遣いはしないように言い聞かせてから、実家をあとにした。


 そして、久々のアトリエに帰ってきた。

「みんな、ただいま!お留守番ありがとう!」

 それぞれの持ち場にいるマーカス、ミィナに声をかけて回る。

「おかえりなさい!アトリエは変わりありませんよ!」

 二人が元気な返事を返してくれる。こうして店を空けてもちゃんと営業を続けられる。頼もしい従業員よね。ありがたいわ!


 ポシェットの中身の整理やら、居住エリアに移って身を清めて着替えやらをして、ベッドに大の字で横になる。

 窓からはまだ明るい日が差していて、まだ休むには早い。それに、さっき見たところ、マーカスが納品分のポーション作りをしてくれているようだった。

 ……今日は、帰ってきただけだから、魔力もいっぱいだしね。仕事しますか。


 足の勢いで上半身を起こして、ベッドから起き上がる。

 次の行き先のためにも、早めに、インゴットを作りましょう!


 実験室に置いてある、採取してきた『黒溶鉱』を取りだし、実験室の棚に買い置きしてしまってあるインゴットと突き合わせて確認する。


「銅は嫌、銀もダメ、ミスリルも嫌、アダマンタイトって言われても困るけど、これも嫌、オリハルコンも嫌」

 手持ちのインゴットだとお手上げだった。


【黒溶鉱】

 分類:鉱物・材料

 品質:高品質

 レア:B

 詳細:装備品に加工することで、十五%の火属性の追加ダメージを与える。

 気持ち:鉄……ちょっと違うんだよなあ。


 ……何が違うのかを言って欲しいわ、私は!(ぷんすか!)


 鉄なんだけど、ちょっと違う、ねえ。

 あ、そもそも混ぜる先が合金(既に交ざりもの)ってことかしら?

 と思って、ちらりと見たけれど、鑑定さんの結果は変わらずで、素っ気ない。


 我儘『黒溶鉱』と鉄のインゴットを持って、アナさんに相談をしに行く。幸い在宅中で、すぐに相談に乗って貰えた。テーブルの上に『黒溶鉱』と鉄のインゴットを置いて、向かい合いに椅子に腰かける。

「鉄だけど、鉄じゃない、ねえ……」

 腕を組んでしばし逡巡したアナさんが、口を開く。

「それ、は、『鋼』……、『ダマスカス鋼』とか『ウーツ鋼』じゃないのかい?」

「……ハガネ?」

 私は聞いたことのない名前に首を捻った。

「鉄なんだけれどね、ほんのすこーし黒炭が混ざった鉄を『ウーツ鋼』と言うんだ。で、それを剣なんかに鍛えたものを、『ダマスカス鋼』っていう。魔力を注いで調合すれば錆びたりしないし、元の鉄よりも強度も優れたものになるんだよ。ちょっと待ってな」

 そう言って、アナさんが台所に行き、黒炭を取ってくる。

「よし、三つ寄せてみようかね」

『黒溶鉱』と鉄のインゴットと、黒炭がテーブルに置かれた。


【黒溶鉱】

 分類:鉱物・材料

 品質:高品質

 レア:B

 詳細:装備品に加工することで、十五%の火属性の追加ダメージを与える。

 気持ち:それそれ!うまーく量を調整出来れば、いい魔剣の材料になるぜ!


「あとちょっとなら教えてくれてもいいんじゃない?」

 思わず口に出して、鑑定さんに文句を言ったら、逆にこうだ。

『自分の頭で考えたり、人に教えを乞うたり、そういうのが成長の元だろ?』

 やっぱり最近の鑑定さんは、私に厳しいと思うの。

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