特別な薬
葉っぱが風に揺れてキラキラしていた。それを見るのがウリカは大好きだった。
「陽の光って気持ちよさそうだなぁ。キラキラしてる…綺麗だなぁ」
「ウリカ!」
急に名前を呼ばれてびくっと身をすくめた。
「そんな窓辺に出ちゃいけませんっていっているでしょう?」
カツカツと寄ってきてカーテンが閉められると部屋は薄明りだけになった。
「ちょっと外見てただけだよ」
そんな言い訳母さんには通じない。
「いけません。ほら、カーテンも閉めて」
「けち」
「けちじゃないの。あなたは肌が弱いんだから。何も全く出てはいけないとはいっていないでしょう?」
「曇りの日ばっかじゃん! こんな明るい中でも遊んでみたい」
あのキラキラした中で思いっきり走り回ってみたい。ウリカはずっとそう思っていた。
「それは…我慢してちょうだい」
母親が自分もつらそうに眉を顰める。
「…何で俺ばっか。それともみんなこんな天気の日には外へ出ないの? 母さんは出れるのに? 大人になったら俺も出られるの?」
「ウリカ…あなたは体が弱いのよ。仕方がないの」
「そんなのってずるいよ! っっ」
「どうしたの!?」
急にうずくまったウリカに走り寄る。
「何か、ぐらぐらして、」
「日に当たったからね。ああ、肌も赤くなってきているわ。こちらにいらっしゃい」
ベッドに座らせる。見る見るうちに日が当たったであろう場所が赤く変色していった。
「う、うう」
「かわいそうに。痛いでしょう」
「なんか、顔が、ぴりぴり、する」
瞼も腫れて目も開けづらそうだ。
「もう、どれだけ日を浴びたの。これだから目が離せないわ」
「だって、外、光って、きれいで、」
「でももうやめて頂戴ね。母さんは心配なの」
それが自分のエゴだとわかっている。本人がそれでいいのならいいのかもしれない。もうその判断を自分でしてもいい頃だ。でも、辛い思いをしているのを見ているのはどうしてもいやだった。
「…う、ん…母さん、喉が、かわいた」
「わかったわ…瞼、痛いでしょう。目を閉じて。そのままちょっと待っていなさい」
「ん」
水を含ませた布を目に当てさせる。
「っくっ…」
小さく母親の声がきこえたきがした。
「母さん?」
ウリカが布を放そうとした。
「ダメよ。目を開けてはだめ」
「…うん…うっっ母さん…吐きそう」
「もう少し我慢してちょうだい」
「うっ…っく」
「これくらいでいいわね。さ、これをもって。ゆっくりお飲みなさい」
ウリカは生暖かい何かを手に持たされた。ゆっくりと口元に近づけて飲む。
「いい匂い…これ…おいしいやつだ! んっ…おいしい…んっんっんっ」
みるみる腫れが引いていく。
「…そう、おいしいの、そう…」
「ぷはっ、おいしかった。もう目あけてもいい?」
「ちょっと待ってね。口の周りを拭きましょうね」
「自分でできるのに」
「目を閉じたままではどこが汚れているかわからないでしょう…よし、もういいわよ。どう?」
腫れのひいた瞼の下から綺麗な紫の瞳があらわれる。
「もう痛くないよ」
「くらくらもしない?」
「うん! もう大丈夫」
「よかった」
「母さん、さっきより顔色悪い気がする。大丈夫?」
「え、ええ、大丈夫よ」
「なんか目を閉じてる間に逆になっちゃった」
「ふふ、そうね。逆になっちゃったわね」
「さっきのやつ、母さんも飲めばいいのに。時々具合が悪い時に飲ませてくれる奴!」
「あれは…あれはあなたのための特別なお薬なのよ」
そういってアデラはウリカの黒い髪を優しく撫でた。




