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coat of arms  作者: apy
0章
5/49

想いの種

 街はずれにある被服店。切り盛りしているのはまだ若いが腕はいいと評判だ。


「ディックってさ、ほんっと仕事人間なの」


「そうなんですか? あ、でもちょっとわかるかもしれないです」


 ディックのきちっと分けた髪、銀色の眼鏡姿を思い出しふふふと二人で笑う。


「でしょう? 見た目に出てるわよね」


 そういうエミリアも、肩で切りそろえられた髪。少し吊り上がった瞳は勝ち気な性格を出しているとも思うと、カトリーナはふふふともう一度笑いが込み上げてきた。


「真面目って感じしますもん」


「そうなのよ。あふれ出てるわ」


「でも制服を取りに来るのはエミリアさんなんですね」


「ほんとよ。自分の制服くらい自分で取りにいけっての」


「頼りにしてるんですよ。いつも赤薔薇の方にはご贔屓にしてもらってます」


「これはいいように使われてるっていうのよ」


「エミリアさんとトゥットファーレで知り合ってからずいぶん赤薔薇のお客様が増えたんですよ」


 たまたまプライベートでお茶を飲みに行ったときに相席したのがきっかけだった。


「それはカトリーナの腕がいいからよ」


「そんな。まだまだです」


「丁寧で何より早いのよね。私たち荒っぽいこともするじゃない? だからすぐ制服いためちゃうの。ほんとに助かってるのよ」


「エミリアさんたちのお仕事って、悪魔の捕獲、ですよね。あんまり想像つかないんですけど、気を付けてくださいね」


「ありがとう。危険っていうことはあんまりないんだけどね。ただディックがネレムと一緒になって、危ないことばっかしてさ。目が離せないっていうか」


「そうじゃなくても目が離せないのに?」


 ぽんっとエミリアの顔が赤くなる。


「そうだけど!」


「ふふふ。あ、今回の肩のほつれの補修、確認してもらえますか? ここでしたよね」


「うん…さすが、ばっちりぃ」


「ありがとうございます。ついでに少し補強しておきました」


「カトリーナ大好き! あー、いつか私だけの服を縫ってほしいわ」


「勿論! どんなのが似合うでしょうね」


 流行りの服でもいいし、体のラインに沿ったものを一から作っても楽しそうだ。


「カトリーナに任せる! 最近街でも評判なのよ。ここの服着てるといいことがあるって」


「ええっ!? そうなんですか?」


 知りませんでした、と口に手を当てる。


「最近トゥットファーレに服卸してるじゃない? あれ争奪戦なんだから」


「嬉しいです、そんな風に言っていただけるなんて」


「私もあやかりたいわ」


「あ! そうだ。最近お店に置き始めた髪飾りなんですけど…できたでほやほやのものがあるんです」


「えっ!? ほしい!」


「えっと…これなんですけど」


 横の戸棚から箱を取り出す。


「かわいいー! 全部ほしくなっちゃうわ」


「明日納品なので全部は困っちゃいますけど、お好きなのをどうぞ」


 ごひいきにしてもらってるお客様には特別です。


「じゃあ…これ! どう? 似合う?」


「はい! よくお似合いです」


 紫の花飾りは、髪色にもよく映えた。


「いいことあるといいなぁ」


「いいことがありますように。特にディックさんと」


「もうっ…、あいつ夜の仕事をかって出るから飲みにも行けないの。ネレムとばーっかりつるんでさ」


「あのお二人って昔から仲がいいんですか?」


「そうね、結構最初から仲いいかなぁ。もう何考えてるかわかんないコンビよ」


 そのお守しないといけないんだから困っちゃうわ。とため息をついた。


「お手上げ」


「まぁ、ネレムさんは…確かによく分かんないですね。ディックさん以上に」


「だよね? それと一緒に仕事してると思うと私よくやってると思うの」


「おかげで安全に暮らせています。そういえばこないだ変わった赤薔薇の方に会ったんです」


「どんな?」


「えっと、」


 箱をしまいながらつい先日のことを思い出す。


「二人組の男性でした。お一人はマスクをしていらっしゃって…」


「チームは二人か三人がおおいからなぁ。誰だろ。マスクしてるやつもたまにいるしなぁ」


 知ってる人だろうか、と考えるが管轄が違うと見知らぬ人も多い。


「いきなり銃を向けられてしまって」


「銃を!?」


「はい。もうびっくりしちゃって」


「何だってそんなことになったのぉ!?」


「私にもわからなくて。ただ歩いていただけなので」


「ほんとにわけわかんないわねそれは。抗議してもいいくらいよ」


「そんな! 抗議だなんて…なんだかものすごく謝ってもくれました」


「銃をいきなり向けてものすごく謝るって…もうなにがなんだか」


「みなさんのおかげで安心して暮らせていますしね。お疲れだったんでしょうか」


 カトリーナは苦笑する。


「そういってもらえるとやりがいがある。けど、私からも謝るわ」


「エミリアさん何も悪くないですし、私も気に病んでいるわけではないので」


「それならよかったわ」


 ゴーンゴーンと鐘が鳴り響いた。


「っと、こんな時間! またくるわね。今度お茶にでも行きましょ」


「是非! 楽しみにしているので、怪我なさらないようにしてくださいね」


「ありがとう! じゃあまた!」


「ありがとうございました!」




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