薔薇会議
薄明りの中。会議は始まった。
「まずはベールをとっていただきます」
「なっ! 神への冒涜ですぞ!!」
赤薔薇が抗議する。
「神はこんなことで怒ってしまわれるような狭量ではありませんわ」
黒薔薇が何の迷いもなくさっとベールを上げた。
「きょ、狭量などではございませんが、このベールは…う、美しい…」
「まぁまぁ、赤薔薇様、落ち着いてください。顔を見て話す機会があってもよろしいではありませんか」
「私も外させていただきますわ」
「っっで、では今回だけ…」
他のものが外す中、一人だけつけたままというわけにもいかず。赤薔薇もベールを外した。
「今回の薔薇会議でお話したいのはこちらについて。資料を見ていただきたくベールをはずしていただきました」
「こ、これは!! 悪魔狩りの禁止及び解放だと!!??」
「はい。我々白薔薇では、長年にわたる調査と研究の末、これらが単なる病の類であり悪魔という神にあだ名す存在ではないと結論付けました」
「何ですって…」
黒薔薇の手が震える。
「まぁ…」
資料を読み進め感嘆の声を出したのは青薔薇だった。黄薔薇はワザとらしく、驚いたふりをしている。
「バカな! 何を言っておられるのかおわかりですか!?」
「報告書はお配りしてある通りです」
数枚の報告書。それらには簡潔にまとめられた資料が挟まっている。それを見れば白薔薇が言うことに十分頷けるものだった。
「悪魔では、ない…」
黒薔薇はその言葉を、壊れたようにくりかえす。
「こ、こ、こんなこと! 信じられるものですか!! 皆様、信じてはいけません!! でっちあげにきまっております!」
「おや、赤薔薇様は、白薔薇様が嘘をついていらっしゃるとおっしゃるんですか?」
「うっ」
「これが本当なら、あの子達は…」
アデラは脳裏に笑顔を思い出す。
「白薔薇様、確認させてください。この報告書に嘘偽りはございませんわね?」
震える声で黒薔薇が聞いた。
「すべて真実です」
「ああ‥本当に悪魔ではなかったのね…」
疑っているわけではなかった。ただ、それが証明されたことがうれしかった。
「そんな…それでは私の姫は…」
「姫? 何のことです?」
「い、いや、何でもありません…」
ウルリクの動きがそわそわと落ち着きのないものにかわっていく。
「どうしても信じられないというのでしたら我が領地へお越しください。ほかの資料も併せてお見せします」
「そんなもので信じられるわけが…」
「赤薔薇様は、どうしても嘘にしたいようですが…現在世に知られている医術も薬品もそのほとんどが白薔薇が編み出したもの。それなのにこれが受け入れられないわけがおありですか」
「大ありだ!」
バンっと大きな音を立てて机をたたいた。
「何があるというのです?」
その苛烈さとは逆に白薔薇が問うた。
「そ、それは…」
「お答えいただけないようなので決議を行わせていただきます。白薔薇は悪魔狩りの禁止、および今まで捕獲した悪魔の解放を提案いたします」
「賛成です。一刻も早く解放を望みます」
「異議はありません」
「異議などございませんわ」
「さぁ、赤薔薇さま」
「こんな…こんな会議やってられるか!!! 誰にも渡さんぞ、わしは、渡さんからな!」
赤薔薇は叫びながら出て行ってしまった。




