過去のあやまち
ステファンんには足の重い帰路だった。ヨハンネスはいつも通り、規則正しく無機質に何を考えているのか分からない。
「謹慎、かぁ」
「久しぶりの休みだ」
謹慎を休みだというヨハンネスに、
「謹慎と休みは違いますよ、もう」
ちため息を吐く。
「やつは何なんだ」
少しいらだちながらヨハンネスがきいてきた。珍しいこともあるものだ。
「やつって…ナタリーさんのことですか? 珍しい、青薔薇から協力要因として赤薔薇にいらしているかたですよ」
「青薔薇の…?」
普通薔薇紋の間で人員の貸し借りはしない。生まれた土地の紋に入り仕事をするか、家を継ぐかだ。
「とても仕事ができる方で、ここ五年ほどで今の地位に上り詰めたようです。とてもお若くいらっしゃいますけどね」
「五年も俺は気づかなかったのか。あいつは…なぜわざわざ…」
「あいつって…上司ですよ。何かおかしいですか? 確かに他の薔薇で働くことはないといいますが…」
「…あいつは悪魔つきだ」
迷いもせずヨハンネスはそういった。
「…はぁ!!??」
さっきの女性の次はナタリーさんまで疑うんですか、と机をたたく。
「俺と同じように取引でもしたのかとおもったが、違うらしいな。何が目的なんだか」
「だって、ここ教会ですよ!?」
「だから何故やつがいるのかが謎なんだ」
確かにそれが本当ならば大問題だ。大した度胸でもあるし、何か目的があるのだと考えるのが妥当だ。
「…ちょ、ちょっと僕の頭パンクしそうです。情報が多すぎる」
「さっさとあの女も連れて行けばよかったんだ。あんな邪魔が入る前に」
「でも傷は治らなかったですし、女性に乱暴はいけませんよ!」
さっきのことを思い出したのか舌打ちをする。
「散々悪魔を狩っておいてか? 子供がほとんどだっただろう。そしてその功績で俺と組んでいるんじゃないのか?」
「そう、ですけど…彼らは明らかに悪魔の様相で…浄化してもらおうと…だから僕はあの時も…!」
「あの時?」
そう尋ねると少し興奮気味だったステファンはすとんと椅子に座った。
「…初めての捕獲は、というか通告ですけど。数年前に森の中で男の子を見つけたんです」
悪魔つきがうまれた場合、森の奥で暮らしている場合が最も多い。赤薔薇も捜索は森の中が主体だ。
「父親のために薬草を取りに入って迷ってしまった僕を助けてくれた彼を、報奨金のために売りました」
「結構もらえるからな」
「はい。そのお金で薬を買って、父に飲ませました。僕のことを初めての友達だといってくれたのに。きっと浄化されて普通の人間として生きているに違いない。僕は間違ったことはしていない。そう思いたくて赤薔薇に入りました」
「だから悪魔の見た目にこだわるのか」
黒髪紫眼の子供が悪魔なんだという意識が強すぎるのだろう。
「でも、連れてきた子供立ちはどこにいるんでしょう。僕は、犯した過ちを正当化するために泣き叫ぶ子供を親と引き離してきました。これは本当にその子のためになるのでしょうか。僕たちが行っていることは正しいのでしょうか」
検査をされたあと、ウルリク様はの所へ連れていかれる。その後のことを知るものは少ない。
「お前のためにしていることでしかないからな。正しいだとか間違っているかなんて、人間が変われば変わるものだ」
「そう、ですよね。僕は、本当は彼に償わなければならないのに。許しを請わなければならないのに。なんでこんなことになってしまったんでしょう? どう償えばいいのでしょう?」
「お前は…どうありたいんだ」
ヨハンネスの言葉に自分の中を探ってみる。
「どう、ありたいか」
「俺は弟を守るために仲間を裏切っている。それは俺がそれを望んだからだ。お前はその罪に対してどうありたかったんだ」
「僕は…少し怖かったけれど、でも、一緒に森を歩いたあの時間が楽しくて…また、友達に、なりたい…!! ヨハンネスさん…僕は、あのこに会いたいです…謝りたい、です…」
そうか。自分はあの時笑ってくれた彼に、ずっと謝りたかったのだと初めて気づいた。




