親子の日常
家が近づくといいにおいと母さんの鼻歌が聞こえてくる。この瞬間がウリカは大好きだった。
「ただいま母さん!」
「あら、おかえりなさい。早かったわね」
「少し晴れてきたから。母さん、これ見て! ほらほら!」
「まぁ、たくさんのオルタの実。どうしたの?」
「いい木を見つけてさ。あと…あ、いや、なんでもない」
「ふふ、ウリカは本当に木登りが上手なのね」
「時々落ちちゃうけどね。怪我なんてすぐ治るし」
そういうと少しだけ顔が曇ったのがウリカにもわかった。
「けどあまり遠くへ行ってはだめよ。こわーいオオカミがでるんだから」
「心配しすぎだよ。もしオオカミが出たりしたら匂いで分かるだろうし」
「もう。母さんは心配してるのよ。それにしてもこんなにたくさんあったら一人じゃ剥ききれないわ」
「俺も手伝う!」
「怪我しないようにしてちょうだいね」
すぐ治るのに、といいかけてやめた。
「はーい。パンに入れてくれる?」
「あら、クッキーに入れようと思っていたのに」
「クッキー!? 食べたい!!!」
「じゃあ今から街へ行くから、お留守番できるわよね? ついでに材料を揃えてくるわ」
「街…俺も行ってみたいな」
街、という所はどんなところなのだろうか。母さんは怖いところだと言っていた。そんな危険なところに行かせるわけにはいかないよ、と言ったら大人は大丈夫なのと返された。
「ご飯は作っておいたからおなかがすいたらあっためて食べて頂戴ね。きっと待てないでしょう?」
「わかった」
明らかにしょんぼりしてしまったウリカの頭を優しく撫ぜる。
「このまま雨が降らないといいんだけれど。いい、ウリカ。母さんが帰ってくるまで外には出ないこと。人が来ても返事をしないこと」
「わかったってば。悪いオオカミが俺を食いに来るんだろ?」
「そうよ。赤い狼がきて頭からぱっくり食べられちゃうんだから」
「もし食べられたら、オオカミの腹切って俺のこと助けてくれる?」
「勿論よ。大事な息子ですもの。でも油断はしないで頂戴」
「外に出ないで、誰か来ても返事をしない、でしょ?」
「絶対に守ってちょうだいね」
「大丈夫だって」
「じゃあ、いい子にしててね。そしたらご褒美あげるから」
「うん!」
「じゃぁ、いってきます」
「いってらっしゃい! アデラ母さん」




