森の花
ガサリガサリと草むらをかき分けること何時間が立っただろうか。大げさな人数での捜索はしないといいhるもんだから二人でやる羽目になった人捜し。
「で、本当にこんな森の中であってるんだな? ガキ二人もつれてこんなところ、住めないだろ。迷ってるんじゃ…」
「迷ってません!」
誰でわがままのせいで二人で探してると思ってるんですか、と言っても届きはしない。このマイペースさにはなれたものだ。
「そもそも偉大なる始祖様がガキを使いに出すかねぇ」
「失礼ですよ」
「大体始祖様なんて言うのがいるのかどうかもあやしいんじゃないのか」
まるであおるような口ぶりに、挑発される。
「イリス様! これは我々の目的のためには必要不可欠。いいですか…」
わかってはいるのに乗ってしまう自分も自分だ。
「あーわかったわかったヨエル、お前ヨハンネスに似てきたな。その口うるさい感じ」
「一応双子ですから。顔は似ていませんけどね。何を今更いってるんですか。さぁ、探しましょう! 歩きましょう!」
「…はぁ」
無駄に元気な従者を連れて、イリスはその辺で拾った棒を頼りに森を歩いた。
「カリナ、そっちはだめって先生言ってたよ?」
「らめ? リィナ、おはなきれーよー?」
「おはな…きれーねー‥!」
「ねー! きれーい!!」
ぽっかりと開いた場所にある花畑。真っ赤な花が一面に咲いている。甘い香りに風に揺れる様子はまるで楽園なはずなのに、その花は少女たちによって散らして遊ばれてしまっていた。
「あ、あの、イリス様、あれって…」
「なんだよ、俺は今休憩時間なの」
「休憩…ちょ、ちょっと、そんなところに白薔薇の当主ともあろうお方が転がらないでください! 早く立ってください! そしてあれを見て!!」
服を引っ張られ草むらをかき分けると、少女が二人楽しそうに遊んでいるのが見えた。
「っと、引っ張るなよなー‥どれどれ…ただガキが遊んでるだけじゃないか」
「ちょ、そんな大声出したら」
ワタワタと暴れているヨエルのほうが派手に動いてると思うが、とイリスは思ったがそのころにはもう遅かった。
「…だぁれ?」
「…早速見つかったな」
「はぁ…」
俺のせいじゃないからな、今の。とイリスは小さく呟く。
「しらないひとなの…」
「どうしよう、怒られちゃう」
二人が今にも泣きだしそうに顔をゆがめた時だった。
「おやおや。姿が見えないから探しに来てみれば。この人たちは?」
長身の男だった。長い髪が風に揺れる。
「あっ、先生!」
「カリナ、わかんないのー」
先生、と呼ばれたその男はそっと手をその子たちを撫でた。
「子供二人と、男…」
「ちょうどいい、この人に聞いてみようぜ」
「イリス様!?」
「すみませーん。この辺に」
「ちょ、ちょっと黙っていてください!」
抜けているにもほどがある。
「 …あの、もしかしてあなた様は‥」
「通りすがりのただのおじさん、かな」
おじさんというほどの年には見えない。
「こんな森の奥、通りすがるような場所ではありませんよね?」
ヨエルの言葉に、あごに手を当ててうーんと考えて見せた。
「んーやっぱり誤魔化すには苦しいか」
「ということはやはり…始祖様、なのでしょうか」
「ええっ!?」
イリスの鈍さのほうが驚きだ。とヨエルは思った。
「流れで察してください」
「始祖様、ねぇ。そう呼ぶ人もいるようだということは知っているよ。それで、こんな所まで何の用だい?」
「始祖様! お探ししておりました。私たちはある薬を作りたいと思っているのです! どうかお力をお貸しください!」
イリスは頭を下げる。
「ある薬…君たちは白薔薇の人間だね。ふむ、その薬の話、聞いてるよ。でも今日は、たどり着いたご褒美をあげるから、お引き取り願おうか」
「ですが、一刻も早く…」
イリスの言いたいことは分かっていた。
「この花をご覧。ここにしか咲いているのを見たことがない珍しいものだ」
「花、ですか」
ヨエルがかがんで一本手折る。
「確かにこの花は初めて見ました」
「きっと君たちの役に立つだろう。持って帰るといい。ここまで育てるのには結構な時間がかかったんだよ」
「ありがとうございます!」
ヨエルは布を広げ、その上に手折った花を置いていく。その様子を見ていた子供たちも手伝い始めた。
「始祖様も一緒に来てはいただけませんか? あなた様の知識を我々に恵んでいただきたいのです!」
その様子を横目に、イリスはだめもとで聞いてみた。
「今は森の外は荒れているようだからね。もう少し落ち着いてからにするよ。時が来たら、手を貸すと約束しよう」
「…わかりました」
分かってはいたことだったが会えただけでも奇跡のようなものだ。
「いったねー」
「ふぅ、やれやれ。二人とも、こっちはだめだといったはずだよ? リィナ、どうしてここにいたんだい?」
「お花きれーだったの」
「確かに、この花はここでしか見れないもんねぇ。やっとここまで広げたんだ。もっともっと必要になるよ」
「てんてーおこる?」
「おこる?」
「ふぅ…私は、もうお前たちを失いたくないんだよ。気を付けておくれ」
「ごめんなさーい」
撫でられて二人は上機嫌だ。
「じゃあ家に戻ろう」
「はーい!!」
end




