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coat of arms  作者: apy
1章
11/49

黒の一滴

 カランカランカランと、来客を知らせるベルが鳴る。


「おう! いらっしゃい」


「いらっしゃいましたー。さ、アンネリエ」


 店主と軽口をたたく後ろで


「ここ?」


 とアンネリエは身を固くする。


「そ。ちょっと古くて汚いけどね」


「余計だよ。そちらさんは…おっとその指輪は黒薔薇の。ご当主にはご贔屓にしてもらっているよ」


「まぁ、お父様がここへ?」


 まるで父親と店が繋がらないのか目をまん丸にして驚いている。


「直接来られるのは滅多にないがね。たまに飲んでいかれるよ」


「ねぇねぇ、私すごーい。アンネリエのパパのお気に入り見つけちゃったのね。ここ、血が買えるお店なのよ」


 最後の方はこっそり耳打ちで。


「ええ!?」


 けれどその返事は大きな驚きだった。


「あはは、また驚いてる。今日はびっくりさせ放題ね」


「大きい声じゃァ言えませんがね。バレたら大事ですから」


 いたずらっ子のようにおじさんがシーっと口に指を立てる。


「大丈夫、すぐにばれたりしないわよ。昨日今日始まった商売じゃないでしょうし」


「一応黄薔薇として代々引き継いでるからな」


「あ、ほんとに黄薔薇の指輪」


 言われてみれば店主の武骨な指には黄薔薇の紋章が刻まれた指輪がはまっていた。


「失礼いたしました。私黒薔薇のアンネリエと申します」


 居住まいをただして礼をすると、


「あーかたっくるしくしなくていいぜ。俺、そういうの苦手なんだ」


 と、トーマスは困ったように頭をかいた。その様子にアンネリエが笑みをこぼす。


「あはははは、苦手そう!」


 その笑い声につられたのか。


「楽しそうだね、父さん。ネレムに向こうの整理は任せてきたよ」


「やっほー」


「ああ、イルヴァさん来られていたんですね。いらっしゃいませ。こちらは?」


「初めまして。アンネリエと申します」


「こちらこそ初めまして。息子のレオナルドです」


 本当に親子かと思うほどたたずまいは似ていないが、何というか空気感は同じものが漂っている。


「こいつが次の代ってわけだ。おっとこんな時間か。俺はちょっと出るから。あとは頼むぞ」


「はい、気を付けて」


「お客さの置いてくなんてぇ」


「お気をつけて」


 とそれぞれが見送った後だった。


「レオナルドさーん! 今日届いた荷物の整理終わりましたよーうわぁっ」


 少年は、アンネリエを見た瞬間こちらが驚くほど飛びのいた。


「客にむかってうわって…」


「失礼ですよ、ネレム」


「だって」


「私何かしましたでしょうか」


「ううん。今日もばっちり可愛いわ」


「いや、あの、きれいすぎてびっくりしたっていうか。こんなにきれいな人見たことなくて、その、」


「あら、なーんだ。いい子じゃない…でもこないだ私が来たときはそんな反応しなかったわよねぇ…えいっ」


「ネレム:いるヴぁふぁん、いひゃいー!」


 同士は歓迎だが女子として何かが許せなかったらしい。ネレムの頬は思いっきり伸ばされた。


「ふふふー」


 思いっきりやったから満足そうに頬杖をつく。


「もう、イルヴァったら…」


「これくらいで許してあげるあたしってやっさしーい」


「ててて…もう、ひどいなぁ」


「教育不足は見逃してください」


 レオナルドは苦笑しながらネレムの頭を下げさせた。


「この子はアンネリエよ。私の大事なお友達」


「へぇ! 俺、ネレム。よろしく! 髪すっごい綺麗だね、ふわふわ」


「きゃっ」


「あっ、こら。私のアンネリエに気安く触らないで頂戴!」


「び、びっくりしただけだから大丈夫よ」


「あ、ごめん、つい触っちゃった」


「本当に申し訳ありません…」


 今一番困っているのはきっとレオナルドに違いない。大きなため息がさっきから止まらないのだ。


「イルヴァ、私は本当に大丈夫よ」


「アンネリエががそういうなら…」


「改めてよろしく、アンネリエ」


「よろしくおねがいいたしますわ」


「私とあんたくらいよ。アンネリエに様付けしないのなんて」


 その呟きを聞いたレオナルドはもう何も聞かなかったことにした。







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