生き写しがもうひとり
お読み頂き有り難うございます。
本編エンディング後のお話を少しずつ。
……色々有ったわねえ。
ご結婚ラッシュに、お子様方の誕生……。
そしてブライトニアの結婚式、三回目が来週だっけ。
一度目は超ゴージャスで来賓が豪華で、二度目が豪華で来賓は少なくて、三度目が……何だったかしら、コンセプト。
……ガーデンウェディングだったかしら。海の中と山の中って案も有ったけれど、けっきょくどれを採用したのかしら。どれも……ええ、どれも派手だったわね。
……しかし、そんなに結婚式してどうするのかしら。オルガニックさんが見る度に生気が薄れて行ってる気がしてならないのよ。
ああもう、義兄さまが要らん実例を作るから!!
……どの道止められなくて申し訳なかったなあ。一応頑張って三回に止めたんだけど。
義兄さまもお式もう一度やるとか血迷った事言い出すしさあ!!
……取り敢えず、結婚式はもう決まったことだから良いとして。
お子様がお生まれになったお祝い選ぶの楽しかったわあ。
でも、おめでたすぎるんだけれど、数が……。お生まれになったお子様方の数が多くて、名前が、覚えきれない……。
ええと、ドートリッシュの所はイジェノアちゃんでしょう?ルディ様のお子様はディヴィットくん……。コレッデモンのレトナ様のおうちは……仔犬ちゃんが二匹いやおふたりえーと……。ああ、見に行きたい!!
はあ、マデル様の書状確認しなきゃ。それから、間も無くユディト王女様に月満ちて、コレッデモン王国に跡継ぎ誕生だそうで……ルーニア様にもご懐妊が分かったとか。
……お、多い。多いわ。申し訳ないし失礼なのに、覚えられない!!
……いや、未だ若い筈なのに、どう言うことなの私のスペックは。ポンコツが過ぎるわよ!!
「アローディエンヌう」
「もあーん」
「……」
視線が……。視線が滅茶苦茶刺さるわね。
あ、そう言えばウチにも……。余所様の事を悩む前にね。
「意外と煩くないねえ」
ソファに座る姿さえ腹立つ程優雅な、燃えるような赤い髪の耽美な美青年が抱いている赤ちゃん……。
……滅茶苦茶生き写し再びって感じかしら。
絵になるなあ……。長年一緒に居るのに、目が離せない……。いや、呆けてても仕方ないから外すけどね。
そう、あれから……もうひとり。
私とアレッキオとシアンディーヌに、赤い髪の家族が増えたのよね。
「……」
「もーあ!もーあ!もあん!あう!あうる!おかさま、あう!」
「……」
……そう、二歳を迎えたシアンディーヌを煩そうに見つめているような赤ちゃん……。
無表情だけど、滅茶苦茶ウザそうに見てるわね……。
アウレリオは生まれたばかりなのに……声が滅茶苦茶小さいのよね……。いや、別に良いんだけれど。私も声大きくないし。
「……っ、ぁ」
「あ、喋ったねえ」
義兄さまが抱き上げたその赤ちゃんこそ……アウレリオ。私と義兄さまの第二子なの。
まあ、義兄さまと生き写し再びって程、似ているわ……。あの夢の姿になるにはもうちょっと掛かりそう。
私の要素と言えば……青い目位ね。その他のパーツは恐ろしいくらい似ていないのよ。何でや。
でも、此処まで似てると……よく目の色の遺伝子が出たわねって感心するわ。普通、親の色味は似ないそうだし。どういうメカニズムなのかしらね。
「シアンディーヌ、アウレリオに触りたいの?」
「もあ!」
シアンディーヌは、少しずつ喋り始めた……喋っているというか、鳴き声?が多いけれど。
弟に興味津々みたいで、よく寄ってくるの。芋虫姿でも、今の子供の姿でも。
でもアウレリオの方は……嫌そうにしてるわね。顔変わらないけれど、私よりは動いてるわ。
「シアンディーヌ、昨日みたいにアウレリオの顔を叩いては駄目よ。自分が叩かれると痛いでしょう?
痛いことをしては駄目よ」
「むあーん……れも、あうる、たちゃいたー」
小さな眉間に皺を寄せて、口を尖らす様子なんかは本当に可愛らしいわよね……。
可愛らしいんだけど、シアンディーヌはテンション上がりきると、滅茶苦茶周りを見ず動くからなあ。
「叩かれたら叩き返せばいいから良いんじゃなあい?」
「アレッキオは黙っててくださいな」
「痛あ!」
要らんのよ此処で悪役令嬢教育は!!
「らめよおかちゃま!おとちゃまに、いちゃいの」
はっ、しまった!!言ってる傍から私が滅茶苦茶矛盾を!!ついおでこを叩いてしまった!!
「邪魔するなシアンディーヌ。アローディエンヌは俺に何をしてもいい」
「はぁ!?何を教えてますのよ!?ええ私が悪かったわねシアンディーヌ。ついお父様が要らんことを言うものだから」
「もあー!?むうみゃあああああ!!」
「……」
な、何なのかしら。アウレリオの赤ちゃんなのにこのシアンディーヌに向ける冷ややかな目は……。
「あああ、何でシアンディーヌが泣き出すのよ!?」
「おかさまー」
「うわっ!!」
シアンディーヌが突撃してきた!!この頃本当に早いな!!受け止められて良かったけれど!!
「……成程ねえ、シアンディーヌ。お前結構面倒臭いな」
「……っあー、うあー」
えっ、アウレリオが結構泣いた……いえ、呻いた!?何で!?分からん!!
「えっ、どうしたのアウレリオ!?ごはん?おむつ!?義兄さま、アウレリオを」
「アウレリオもかあ。アローディエンヌがモテモテ。……間違いなく、僕の血筋だねえ……」
「いや何を言ってますのよ、これだけソックリなのに」
何でそんなに嫌そうなのよ。おかしいでしょうが。
まさか子供にまで妬いてるとか……無いでしょうね?
それにしても膨れると三人ソックリだわ。
そして視線が滅茶苦茶強いな!!眼力が有るって言うの?
「っあー!」
「おかちゃま!」
「アローディエンヌう!」
「いや何ですのよ!?何で張り付いてくるんです!?アウレリオを寄越してください!」
三人の体温が滅茶苦茶暑いことこの上ない!
「今日は、アロンさん!!先日はオールちゃんのお式にご出席くださり、有り難う御座います!!」
「今日は。ええと、先週ぶりね、フォーナ」
何か……めっちゃ会うものね。
以前……一年くらい前に拐われて大変な事になったと言うのに、フォーナは何時でも明るくて可愛らしいわ。
今はシアンディーヌはお昼寝中で……フォーナが訪ねてきてくれたのよね。
「アウルちゃん、今日は!フォーナおばさんと呼んでくださいね!」
「……」
……あ、相変わらず無愛想ねアウレリオ。仕方ないけれど。
「本当に綺麗なお目目ですね!アロンさんとそっくりです」
「ええまあ、目の色は似てるわね」
「おふたりの愛の結晶ですものね!」
愛か……。最近義兄さまが無駄に子供達を差し置いて寄って来るのがどうかなあと思うけどね……。
可愛がっては居るんだけど、私に張り付くの止めないかしら。
「オルガニックさんはお元気なのかしら」
「ちょっと疲れてました……。結婚式って大変なんですね」
「回数をこなす物ではないものね……」
「オールちゃんは楽しそうですよ」
「で、でしょうね……」
滅茶苦茶瞳がキラキラしていたものね……。
イキイキとしていたわ。オルガニックさんが萎れる横で。
前回、前々回は小さい子連れで迷惑が掛かるから、少しだけ出席させて貰って控え室に居たからなあ。
……ご無事だと良いけれど。
ユール公爵家の跡取り、アウレリオです。
他の子供達も少しずつ。




