27.王子様のプロポーズ!?
お読み頂き有難う御座います。
ルディ君のサポートキャラ達を巻き込んだお話が王城の庭で行われます。
……何と言うか、色んな事が起こり過ぎてキャパオーバーしそうなのだけれど。いや、でも何とか消化しなきゃ……。
陛下の御婚礼から始まって……ええと、記憶喪失の王妃様が何と行方不明の『魔法使いディレク様』のお嬢様のジーア様で。ティム様は血眼でお探しされてた伯母様が見つかって目茶苦茶喜んでおいでだったけれど、拒否される形になった陛下は目茶苦茶凹んでおられたわね……。うう、喜ばしいんだけれど喜ばしくない……。複雑だわ。
そして、御婚礼が終わられたパーティーで何とフォーナと今横でアワアワされてらっしゃるオルガニックさんが拐われてしまわれた。
レルミッド様とブライトニアか目茶苦茶怒っておられて……一応、助かったのよね。オルガニックさんは少しだけ寝込まれて、石化したフォーナは、今治療中だけれど。
変な宗教団体の国が手を裏で引いてたって分かって……。義姉さまが目茶苦茶凹んでた……みたい?ブライトニアを連れて、部屋に籠ってしまったの。
その後に、その。……ルディ様と、ミーリヤ様が……痴話喧嘩!そして、プロポーズへ!!
の、流れよね!?何なのこの怒濤の展開は!!
ちょっと待って。
えっ、人様の……王子様の、プロポーズ現場が……生で観られるの!?
今、私、乙女ゲーのサポートキャラっぽいーーーー!!
今更だけれど、今更だけれど!!
「はわわわわわん。今ボクむっちゃサポートキャラっぽい……」
……あ、お隣のオルガニックさんも小刻みに首を振られているわ……。分かるわ。
「どうしたニック。挙動不審だぞ」
「ぴえ!?す、すみましぇん!!驚きすぎました!!」
「申し訳御座いません!!」
「ほう?アローディエンヌも挙動不審だったのか?分からんかったぞ」
うっ!!ルディ様にはバレてなかったの!?いやでも、バレてようとなかろうとオルガニックさんだけを犠牲にする訳にもいかないわよね!!
「それでミニア、返事は?」
「だぁからぁ!!何でもぉかんでもぉ察しないわよぉって言ってるのぉ!」
「ふむ?」
「普通はねぇ!何か提案をぉ持ちかけるならぁ!齎されるぅ利益とぉ損失をぉ示すもぉんでしょぉ!?」
「普通持ちかけるのは利益だけではないのか?損失は隠すだろう」
た、正しいような不誠実なような……。
いや、もしプロポーズなら不誠実寄りよね……。
本当にコレ、何かのビジネス契約的な感じに見えてこなくもないな……。ルディ様の強がりって言うか、恥ずかしいから茶化してる的な、プロポーズよね?
……わ、分からないなあ。
「ふむ?意外と面倒だな」
「ルディちゃぁん!?」
「ルディ様……お、畏れながら……ボクから申し上げても宜しいですか?」
「何だニック」
「そおいう大事なお話的な感じは……ボクらの眼前でされて良い感じなんでしょうか……?
も、もっとふたりきり!な、しめやかーな感じをミニアさんはお望みなのでは?」
た、確かに……。さっきはサポートキャラとしてプロポーズ現場の背景になれるわっ!!って喜んだけど……普通はふたりっきりで行うべき現場よね。デリケートなお話よね。
あああ、どうしよう。このまま窓を閉めるべき!?
「……そぉ思わなくは無いけどぉ?
ふたりきりだとぉ、しらばっくれる可能性が有るって気がぁ付いたのぉ」
み、ミーリヤ様の美しい翡翠の瞳が……ルディ様に白けた眼差しを……!!
そんな様子もお美しいけれど剣呑なムードに!!
「ほう、心外だぞ」
「あのねぇ!証人の前なんだからぁ!!きっちりとぉ王子様らしくぅなさぁい!!」
「ひぇえ……エライこっちゃな感じぃ!?」
「ミ、ミーリヤ様……ど、どうぞお平らになさってくださいな」
さ、殺気が!!あの嫋やかなお体からビリビリと殺気が!!
「まぁ?ふたりもいるしぃ?妥協もぉ必要だからぁ!……多少はぁ?引いてぇあげるけどねぇ?」
「ふむ……?ミニアはどうもユディトの側近の割に王族に夢を見すぎではないか?」
「姫様は夢を見せて頂ける方でしょうが!!」
ミーリヤ様のユディト王女様への忠誠心が素晴らしいわね……。でもどんどんこうロマンチックから遠ざかっている気がするわね……。あ、本題も。
「ルディ様、宜しいでしょうか」
「何だ?アローディエンヌ」
金色の睫毛を瞬かせて、ルディ様が此方を見てくださったわ。うーむ、絵になる方だわ。
「畏れながら……此方でお伝えになろうとなさるお言葉……分かりにくいですわ」
「でしょぉ!?」
「お考え有っての事だとは思いますが、ミーリヤ様がご不安になられるのでは?
大切な方へのお言葉は、優しくて率直が宜しいと存じますわ」
「不安、不安なあ?不安なのか?」
「そぉよぉ!不安よぉ!!」
ちょ、ちょっと力強くていらっしゃるわね、ミーリヤ様……。
「優しくて率直……?」
ルディ様の……何だそれ役立つ?みたいな怪訝そうなお顔がまた……。
「アレッキオちゃんはぁお花ちゃんにぃ大事にやってるものねぇ」
「何?」
「ぴ、ひぃ!?むぎ!」
うわ吃驚した!!あ、悲鳴を押し殺そうとされたオルガニックさんか!!……一体何で……。
あ、ルディ様がイラッとされたのか!!義兄さまと比べられたから!!
「成程、アレキに出来て僕に出来るわけないと言いたいのか?」
「出来てぇないじゃぁなぁい!言いたいことはぁ理解したけどぉ?
それでぇお返事が貰えるなぁんてぇ思ってるぅ傲慢さぁん?」
「良かろう」
あっ、ルディ様の薄茶色の瞳が剣呑なお色に!!
「ミニア」
「何よぉ!?……っ!!」
「っどわっ!」
「!!」
唇が、重なって……るっぽい!?
いや、ルディ様が後ろ向かれてミーリヤ様のお顔を隠されてしまわれたから分からないんだけれど!!
庭に出てれば良かったああああ!!!
今ちょっと……淑女とか忘れて、今から窓枠乗り越え……られないわね!!くそう!窓枠が高い!!
……って、いけない!!人前だけれど!!
「んんんん!?なななななな、な……なぁっ!?」
ああっ!ミーリヤ様のお顔が真っ赤に!!
「ミリアーナ・ダンタルシュターヴ。僕の求婚に頷くがいい」
「…………は?」
ミーリヤ様の可憐なお声にドスが混じってる……!!お顔のお色も一気に戻られてしまったわ。
あああああルディ様!!率直は兎も角、優しさは何処に!?其処混ぜないと喧嘩を売ってる感じにも聞こえてしまわれるんじゃないの!?て言うか失礼ながら喧嘩を売ってるように聞こえたわ!!
「僕は君でないと結婚したいと思わん」
「……」
上げて落として上げるスタイル、なのかしら。あああ胃が何だかキリキリしてきたわ。
……少しだけミーリヤ様の頬に赤味が戻られて良かった……。
「ユディトの側近でダンタルシュターヴ伯爵にならんといかん君に、ドゥッカーノ王子妃になれと言うのも面倒な話なんだが」
「そ、其処は面倒とか言っちゃ駄目ですよ……」
オルガニックさんの本音が漏れてしまわれているわ……。目茶苦茶分かるけれど。
「そもそも僕の本来のルカリウムとバルトロイズ子爵家の血筋なら其処まで面倒ではないんだが、祖母のせいで王子の立場だ。
その辺も普通に苦労を掛けるだろうな」
「そぉでしょぉねぇ」
「多分別居になるだろうな」
「ふぅん?直ぐぅ会いに来る能力位はぁ有るけどぉ?」
あ、ミーリヤ様がデレられた。良かったわ……好感触になってきてるような……!?
「多分君は僕の顔と立場が好きなんだろうが、僕はミニアの顔と体とその気性を好んでいる」
「ちょっと!!」
……また雰囲気が悪くなりそうなんだけれど!!いや其処は率直過ぎやしないかしら!?
後、ミーリヤ様に顔だけ好かれていると思われてるの!?ルディ様!!意外とネガティブ思考!?ルディ様、良い所は沢山お持ちなのに!!
「……ミニア、利益の方が少ないぞ」
「そぉねぇ……」
あ、ルディ様がシュンとされてしまわれた!!いや、ええと、確かにこのプロポーズ……デメリット……いや、ちょっと……確かに、多いのかしら?
……いえでも!
「……」
ああ、ミーリヤ様が黙ってしまわれたわ。黒い睫毛を伏せた、憂いの有るお顔が……色っぽいなあ……。
「ミニア、返事は?口付けを所望か?それとももう一度跪かせたいか?」
「っ!ちょっと、ぉ!」
「ええっ!?」
「は、はわわ!!ルディ様!頑張ってくだしゃい……」
思わず壁の立場の筈の私達も、ヒソヒソ声が止まらないわ!!
ど、どうなってしまうの!?ミーリヤ様のお答えは!?
「何なのもぉ!そのお顔ぉ!なる、わよぉ……!!」
「そうか」
「!!んもぉ!んもぉぉ!ズルいのよぉ!!」
……どんなお顔されてたのかしら。いえ、見せて頂かずともミーリヤ様と見つめ有ってくだされば……。
でももっと違うアングルからベストポジションで見たかったわ……。
撮影用ドローンとか飛ばしたかった……。この世界そんなの無いけれど。
「ほう?そんなに喜ばれるとは。この顔に生んだ母上に感謝せねばならんな」
「だから!!人が顔だけ見てるみたいな言い方止めてったら!!」
「まあ怒るな。経験豊富なミニアに色々頼るとは思うが、未熟な歳下の夫を受け入れてくれて、有難うミニア」
「……だかぁらぁ!」
あ、あざとい。流石正統派王子様のルディ様でいらっしゃるわ!!
何という女心を擽るテクニック……!!お見それいたしましたわ!!途中本当にどうなるかと思ったけれど!!
感動のあまり、思わず拍手をしてしまったわ!!
「よ、良かった……良がっだぁーー!ルディしゃまミニアさんおめれどおお!」
「おめでとう御座いますお二方!お慶び申し上げますわ!!」
「ふむ、見届けご苦労」
「あ、ありがとぉ……ねぇー」
「あ、……オルガニックさん、涙を……」
あっ、ハンカチ渡そうとしたら……即止められて、使用人がタオル渡してるわ……。
た、確かにあの量はタオルの方が良いんでしょうけど……何か義兄さまの指示っぽさを感じるわ……。今義姉さまだけれど。
「そ、そお言えば、アロンたんは兎も角ボク……。
えとえとうええっと、見届けはレルミッドさんでなくて良かったんですか?」
はっ!そうだったわ。
大事な御従兄のレルミッド様……は今フォーナの件で取り込み中だけれど、少しズラせば……。いやでも、タイミングってものが有るしなあ。
……自分の時は頭に血が上ってたわね。何だかあれから色々有りすぎて……遠い昔のよう。あんまり経ってないのに。
「ふむ?吹聴もしない人の良いお前達が適任だ。
それに万が一、レルミッドの前でフラレたら……僕は耐えられない」
え、そっち!?そちら!?
「ちょっとぉ!?結局レルミッドちゃんなの!?」
「僕はレルミッドの前でご婦人関係の失敗をあまりしたくない。レルミッドはミニアに甘いからな」
「……ルディちゃぁん!?」
「何を怒っている?ご婦人ではミニアが一番好きだと伝えた筈だが」
「そ、そぉだけどぉ!?なぁーんかぁ!納得いかないのよぉ!!って、何ぃ!?」
「ああ、忘れていたぞ、指輪だ。
意外と……嵌まりそうで寸法が合わんな。母上の物なんだが作り直すか?」
「ちょっとぉ!?情報がぁ多すぎるしぃ!雰囲気がぁ台無しでしょぉ!?」
「は、はわわわわわん!?」
……と、取り敢えず御幸せそうだし、一件落着……よね?
それにしても義姉さまとブライトニアは一体何を長話しているのかしら。
ユール公爵夫妻とは真逆なプロポーズでした。




