24.悪役令嬢は無茶振りする
お読み頂き有難う御座います。
義姉さまがアローディエンヌにべたべたしてますね。
うーん、義兄さまが……いや今義姉さまだけれど、様子がどうもおかしいわね……。
女神の話題を嫌そうに言い出したりして……。幾らチートな悪役令嬢でも、神様とバトる展開は勘弁して欲しいわ。……碌でもない事にしかならなさそう。未だ幼いシアンディーヌも居るのに。
……その内怪獣とか出てこないわよね?いや、獣人さんが居る位だから……それっぽい方が居たらどうしようもないのだけれど。
……いい匂いがして擽ったいわ。義姉さまが私の肩に顔を寄せて動かす度、ふわふわと赤い髪が揺れている。これ……付け毛なんだっけ。元々は自分の髪を切ったもの……だったかしら。
この間染めた髪の毛の色の染料が取れかけて、黒から赤のグラデーションみたいになってるわ。……そんな様子も、退廃的で美しいし似合うわね。
義姉さまだと身長差が……まあ、結構有るけど義兄さまよりは無いから、顔が未だ見易い。
顔が良いって得よね。私なんか斑な髪の毛になったモブなのに……。
「グギゲ」
「はわわん……!?おねえたまにスリスリされるアロンたん……激レア!!
しかもまさかの間近でかぶりつき鑑賞的ななな!?はわわ……」
「モギガ?」
「はわわ!!何でもない!!その姿で見られると被ダメ酷い!!」
いやオルガニックさん、本音が駄々漏れでらっしゃるんだけれど!!
って、そうよ!今義姉さまの姿じゃないの!!
ナチュラルに抱きついてしまったけれど!!いや、と言うか人前!!
「義姉さま、離してください!!」
「どおしたのアローディエンヌう?いーじゃなあい!私、疲れたのお!」
うっ、至近距離で久々に義姉さまの顔が近付くとより倒錯的なんだけれど!唇近いな!人差し指で頬っぺたを撫でないで欲しい!!
「……取り敢えず、お仕事をお疲れ様で御座います」
「うん、アローディエンヌだあい好き」
「いや、……会話してくださいな」
……いい加減に飽きないのかしら、このパターン。溜め息が出るわ全く……。
まあ、義姉さまにお怪我も無かったようで何よりなのだけれど。
ええと、取り敢えず纏めてみましょう。
……女神女神と言っていたのは、スティフ国の人達。最初に会ったのは大使で、沢山の愛人を連れて、その中に女装した国王が居た。
神様をごちゃ混ぜにして信仰していたらしい国。国王が即位する以前はマトモだった……マトモだと思われていた。
マトモではない国王。だから、陛下の結婚式にお招きしていなかったのね……。結局女装で紛れ込んじゃったけれど。
……結局あの意味不明な手紙……青い暇な怪人?とかの汚い字の文章。魅了無効が青い暇な破壊人か美人か……なのかなあみたいな推測したわね。
……そして、女神って誰だったのかしら。石像の子孫?
まあ、個人的には実害が無ければどうでも良いのだけれど、女神の名前を騙ってこの大騒動が起きたんだものね。。
オルガニックさんを拐い、フォーナの姿を変えて、陛下を襲って、この王城を混乱に陥らせた事に関してはとても許せないわ。
……あっ、そうよ。フォーナは元に戻れたのかしら。未だ知らせが無いのだけれど……急かすのは良くないわよね……。
「あー、ずうっとこうしてたあい」
「やめてくださいったら!!」
義姉さまもしがみついたまま剥がれないし……うう、暑い……。
義姉さま、相変わらず体温が高いわ……。
仄かな香水の香りに混じって、熱で燻らせたような……甘い甘あい脳を揺らすような匂いが微かにする。
……良かった……焦げた臭いはしないわね。少しホッと……いやこのひと遠距離で燃やせるんだったわ。全く何も安心出来る要素無いわね。
何かこう、聞きたいことを穏やかに聞き取りして、それから裁判的な感じに持っていって裁かれると信じたいのだけれど。
「義姉さま、あのスティフの方々は裁かれますのね?」
「それなりの形で各国に賠償する事になってるよ」
……そうなのね。一応良かったと言うべきかしら。お目に掛かってないけれど……。王侯貴族……謂わばマジなセレブの集まりでしょうしね……。凄い額になりほうよね。
「で、でもお……。相当な賠償額でしょうね……。ボク、新聞で読みましたけど、スティフってあの事件からお支払い能力……」
「えっ?」
「ふぎゃっ!何、何ブライトニア!?ふへえくすぐっちゃあい!!
襟の中に入り込もうとしにゃいで!!何気に羽が刺さるう!!」
「ムビビグ!ムミュグ!グバアン!!」
「ちょ、何してるのよブライトニア!!折角教えて頂いた淑女らしさはどうしたの!?」
何でブライトニアはそう自由なの!?て言うか服の中に入るのは間違いなくセクハラでしょうが!!
「へへへえ……はあ……!!!はへえはひい……」
「ゴバッ」
「……オ、オルガニックさん、大丈夫ですの……?」
「ブフン」
よ、漸くブライトニアを捕まえられて……ボロボロだわ……目茶苦茶お疲れになられて……。
って言うか、病み上がりなのに此処まで息が上がってしまわれて良いのかしら。か、顔色は良くなられたような気はするけれど。そして胸に羽交い締め……いえ、抱き止められているブライトニアが物凄くドヤ顔だし……。
「う、うん……あんがとね……アロンたん……。ごふう……!」
「汚い呻き声上げてないで、さっさとアローディエンヌの疑問に答えろ」
「いやこんなに息を切らしてらっしゃるのに、急かされないでくださいな!!」
そりゃ話が途切れたから気にはなるけど、鬼なの!?
「ぴええええ!は、ハイ!ええと、スティフ国って、鉱山が落盤事故起こしてたんですよね!」
「ら、落盤事故……ですの?それはお痛わしい」
「結構大きい事故で、採掘不可能まで追い込まれたみたい。ただ、その中から変な遺跡が出た筈……なんだよね」
鉱山の落盤事故で変な遺跡が見つかる、だなんて……。歴史的大発見なんでしょうけれど、皮肉な話ね……。
「調査隊も入ろう!みたいな話になったらしーのに、翌朝消えた……!?みたいなミステリー展開だったんだって」
「ええ!?道を間違えてしまったとか、また不幸にも落盤事故が起こって、遺跡を隠してしまったとかではなくですか!?」
「ポカッとそこだけ無くなった、って書いて有ったんだよ……」
「ゲビジギガ……ムムゲ」
ふ、不思議なお話ね。
流石のブライトニアまで首を傾げてるわ。
「おい蝋燭野郎、それ本当か?」
「お、おねえたま!?」
「……それ、何時の何処の新聞だ蝋燭野郎」
「ぴえ!?え、ええと……十年位前で、ソーレミタイナ日常幸せホワホワ新聞だったとお、思ひましゅっ!!」
……新聞の名前が物凄く変……いえ、ユニークなのは置いておくとしてよ。目茶苦茶気になる所では有るけれど!!
「……あの屑国王は、巻き戻しの塔の遺跡で女神の知識を吸収した……」
「えっ、うえ!?巻き戻しの塔ですか!?」
巻き戻し?……巻き戻しって、また此処では聞かない単語よね……。それに、塔……?
……何か聞いたこと有るような、無いような。
それの中に女神の知識?
聞くからに……RPGみたいね。間違いなく重要イベントっぽいなあ。しかしモブな私が聞いても間違いなく生かせそうに無いわね……。
オルガニックさんは何かご存知なのかしら。……うーむ、凄いわ。サポートキャラの私と違って流石攻略対象でもある方だものね。
「何だ。お前塔の存在知ってるの。じゃあ、お前が探せよ」
「ふえへ!?」
「グア?」
「はあ!?どういう事ですの?義姉さま」
探せよって、ええ!?他国の遺跡を!?オルガニックさんが!?
また意味の分からない事を!!
「ぼぼぼ、ボクがスティフの遺跡を!?ですか!?ふえ!?えええ!?」
「別に断ってもいいよ。お前の残り少ない命が今燃やされるだけで」
何て悪い顔でオルガニックさんを脅してるのよ!?
「ぴえ!?」
「ガガガ!!」
あああ!!何かまたガタガタその辺の家具が!!ブライトニアが耳を逆立てて怒ってる!!
「ちょ、待って頂戴ブライトニア!義姉さまも意味不明な脅しを止めてくださいな!!」
「うん、それがいい。コイツとティミーに探させよう。どの道コイツも他人事じゃないしね」
「何がですのよ!?」
イラッとするわね!!
自分だけ分かった顔で、楽しそうにウンウン頷かないで欲しいんだけれど!!
「ガガアッ!!ブギガグガ!!」
「煩いなあフロプシー!……ああ、そうだフロプシー……音波振動、使えるかな」
「ガギガッ!!」
「ちょっと来いフロプシー。話がある」
「あっ!お、おねえたま危ないです!?」
「ブガビギガッ!ガグゲアアア!!」
「アローディエンヌ、ちょっと待っててねえ」
す、凄い声でブライトニアが鳴いてるんだけれど……。
義姉さま、前足後ろ足振り回して暴れて怒り狂うブライトニアを掴んで持って行っちゃったわ……。あ、扉の向こうに行っちゃった……。え、あのふたりが話し合うの?珍しい……お話し合いになるのかしら。
「ほ、ほへえ……。どゆこと?」
「さ、さあ……」
奇しくもサポートキャラふたり残されてしまった訳だけれど……。ああ、それ所じゃない。オルガニックさんが頭を抱えておられる……。義姉さまの無茶振りどうしましょう。
「巻き戻しの塔……ボクに発掘しろっておねえたま……。ええと、ボク全くの考古学的素人も甚だしいんだけどお……」
「無茶振りが過ぎますわよね……。つい呆気に取られてしまいましたけれど、どうぞお断りしてくださいませ」
「うむむむん……。でもねアロンたん。確かにおねえたまにああは言ったけどさあ。
……ボクにこの世界の謎的な女神とか神様のお話を解明するのは無理ゲーなんだけど、気になるっちゃあ気になるよね……」
「気にせず過ごしていたら気にならないんですけれど……」
そもそも、私自体は宗教関係者でもないしなあ。あ、祖父がそうなんだろうけれど。
「義姉さまは一体、スティフの国王に何を聞いたんでしょうね……」
「其処が分かりたいトコだよねえ……」
そんなに不愉快な事を聞いたのかしら……。結局、理由に付いては話してくれなかったし。
何にせよ、あまり危ない事をして欲しくは無いわ……。
フォーナの石化が治るのなら考えるけれど……。
「ティミーの伯母さんの王妃様の若返りもよく分かんないしね……」
「そう言えば颯爽と去って行かれましたけれど、お部屋に戻られましたの?」
「んんー、ちょちょっと具合悪いみたい……」
記憶喪失の女性が、実はティム様の伯母様で……若返っていたってのも訳が分からないわね。そう言えば。
一体……何がどうなっているのかしら。何だかドシンバタンって音が隣の部屋からするし……!!
悪役令嬢同士で話し合いは珍しいです。




