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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
狙われた希少スキル

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17.優先順位と嘗ての記憶

お読み頂き有難う御座います。

誤字報告誠に助かっております!

陛下に謁見していたら、不審者にドアをノックされ中のアローディエンヌです。

 これは……何て事なのかしら。

 国王陛下のお部屋の扉を不審者がノックするなんて……。

 警備の騎士様方は一体どうなってしまったの。

 ……チェネレ様とサジュ様は全く動じてらっしゃらないのが流石騎士様よね。陛下も眉根を寄せられておられるだけ。


「ムガ……ファ」


 ブライトニアは……欠伸してるわね。いえ、この子がビビってる姿って無いわね。オルガニックさん絡みなら狼狽えてるの見たことは有るけれど。


「さあ、開けなさい。人質がどうなっても良いのですか?」


 苛ついた感じの声が漏れ聞こえてきたわ。

 どうでもいいけれど、結構分厚い扉なのによく声が聞こえるのは何故かしら。何かの仕掛け?そして陛下もおられると言うのに失礼で偉そうね……。不愉快だわ。


「……開ける訳がない。何だアレ。人質の名前も晒さんと脅すとはバカでは無いか?」

「ええと、もしかして……状況的に考えて人質はフォーナでは……?」

「グゲガ……ムニャ」


 いや、何でブライトニアは寝かけてるのよ!!お姉さんが捕まってるってのに!腕の中で黒っぽい毛皮が丸まって、羽をぺちゃっとして可愛いわね!じゃなくて!


「いや、それでも。陛下、義妹姫とフォーナ嬢。悪いが優先順位は此方の方が高い上に、のうのうと開けては共倒れになる」

「えっ、チェネレ団長に勝てるヤツなんすか!?」

「買い被りだな、サジュ坊。俺に勝てるヤツなんざ星の数居る」

「威張るなデイン。私も戦うぞ」

「前線向きでない国王は後ろに引っ込んでいろ」


 私で良ければ人質交換とか……と申し出ようと思ったけれど、フォーナと入れ替われる魅力も無いからなあ。

 ……そもそも私が要らん事すると、義兄さまが暴れそうだから迷惑か。


 ああ、どうしたらフォーナを平和的に取り戻せるのかしら。

 ネゴシエーション的な能力でも有れば!!


「何もやらないとタカを括っておいでか?来いっ!」

「は、はうう!!何をするんですかあっ!!」

「フォーナ!?」


 悲鳴と……ガタガタって音がしたわよね!?

 扉の外で何が有ったの!?


「義妹姫落ち着いて」

「チェネレ様……」

「この部屋は下手な要塞よりも頑丈です。だから、自主的に出てこさせようとしてるんでしょうが」

「女神の血を引く者よ!!正当なる我らと共に来なさい!!」


 え、女神の血を引く者って誰よ。そんな人此処に居るの?そもそも女神って、あの女神像の元ネタの女神のことなのかしら。皆様『はぁー?』ってお顔されてるから全く心当たり無さそうよね。

 うーむ、どういうこと?まさか、もしかして……石像の血を引く人とか!?獣人さんには無機物由来も居るって本で読んだような何処かで聞いたような。

 でも……あの石像の血を引く……?石の血って何?意味分からんけれど、居るの?潜んでるの?

 もし居たらやだなあ。失礼だけど目茶苦茶顔面が怖そうだし。でも石っぽい方、何処にも居ないわよね。

 と言う事は口からデマカセぽいわね。


「煩ーな。何か意味分からねーこと騒いでますけど、オレだけ出て叩きのめしたらダメっすか?殴るだけにしときますし」


 えっ、サジュ様って肉弾戦も可能なのね、凄いわ素敵。じゃなくて!


「危ないですわよサジュ様!あんな意味不明な相手に何もお持ちにならないなんて!!」

「そっかあ?じゃあ薄着っ子、手伝ってくれね?早く片付いたらニックのトコ送るからよ」

「グガゲ……ブブ」

「ちょ、ちょっとブライトニア!?」


 あっ、止める間もなくブライトニアの垂れ耳が動いて……ぴょんっ、てサジュ様の肩に飛び乗っちゃった!!今初めてウサギっぽい跳び方を目撃してしまったわ!!いやどうでもいいわ!そうじゃなくて!!


「別に構わんが、俺の負担が大きくなるな……。見張りの部署は何してるんだ。近衛の端くれなら不審者を刺し違えてでも止めんか。

 はあ、サッサと帰りたいのに……生きていたらあの野郎共懲罰だな全く……」

「デイン、お前と言う奴は……」

「3日も帰ってないんだ。おまえのせいで嫁が心配なんだよ」


 チェネレ様は愛妻家でいらっしゃるのね……。


「ほら貴様も頼まぬか!!」

「い、いけません!!私なんかの為に、皆さんを危険になんか曝せません!!私に構わず、早く皆さんお逃げくださあい!」

「フォーナ!!」

「私、皆さんの為なら平気です!!だから、逃げてください!何が有っても、きゃっ!!」

「黙れ!!誰がそのような事を言えと言った!!」

「きゃあっ!」


 ああ、またガタガタと、何かが鳴る音が……!!


 ……。

 んん?

 ええと、何か、違和感が有るわね。


「ええと、フォーナっぽい……?いえ、違います?」

「ふぁ、駄姉じゃないわね」


 だ、だから!!


「おわっ!!薄着っ子!!何で元に戻ってんだよ!!つか脱ぐなよ!!」

「アロンとサジュの魔力は中々回復手段に良くてよ。誉めてやっても良いわ」

「ぎゃあっ!!何て格好してるのよ!!」

「楽で良くてよ」


 そりゃ楽でしょうよ!!

 いやっ、そうじゃなくて!!

 だから、何で全裸なのよおおおおお!!欠伸してる場合じゃないんだってば!!


「……だ、だから!!へ、陛下にチェネレ様にサジュ様!!申し訳御座いませんが暫く後ろを!!兎に角何か巻くものを!!」

「おいデイン、マントとか無いのか!?」

「其処に転がってるお前の上掛けで良いか?どうぞウサギ姫」

「ふーん、まあまあな手触りね」


 だから、何でこんな最悪なタイミングで人の姿に戻るのよ!!今、目茶苦茶緊迫した感じなんだってば!!しかも貸して頂いたお高そうなベットカバー的な織物に失礼だし!!


「ブライトニア!!はだ……肌をホイホイ他の殿方に晒しちゃ駄目だってば!!いえ同性でも駄目よ!!貴女は婚姻前の皇女様なんだから!!目茶苦茶駄目よ?」

「別にさっきと変わらなくてよ。蝙蝠ウサギは毛皮のままじゃない」

「いや目茶苦茶変わるだろ、薄着っ子……。チェネレ団長、コレ浮気とかで怒られる状況っすか?」

「俺は眠かったから、ウサギ姫のグルグル巻きしか見ていないからな。

 若い嫁を貰ったばかりのディマは知らんが」

「お前な!!」

「何をしている貴様ら!!早く出てこぬか!!」


 あっ、外の怪しい人忘れてた。

 でも出ていかないってさっき方針が決まってしまったし。


 それに、どう考えてもフォーナ?の様子がおかしいわ。

 地下で捕まってらしたオルガニックさんに迫ってた偽フォーナも居たって言うし。


 フォーナは自分を犠牲にするのは厭わない優しい子だけれど……。

 あんな心の篭らない喋り方はしないわ。

 それに……はわあっ!ってのはよく聞くけれどきゃっ!とかヒロインぽく悲鳴あんまりあげないのよね。


「ブライトニア、扉の後ろに何人居るか分かるかしら」

「ふたりね」

「おっしゃ!それなら余裕で沈められんな!」


 サジュ様の眼帯着けておられない方の目がキラキラしてるわね。

 て言うか物もらい、随分と長い間治られないのね……。大丈夫なのかしら。


「……向こうから怒り狂った足音が聞こえるわね。誰かしら。知らない奴が押し寄せてきてよ」

「援軍か……面倒だな。しかし便利ですねウサギ姫」

「あたくし数の勘定は苦手なの。群れを数える気は無くてよ。アロンだから特別なのよ」

「そ、そう。有難う」


 そうなんだ……。意外と文系思考なのねブライトニア。


「でも困りましたね。サジュ坊をけしかけて済むなら……」

「ギャアアアアアア!!」


 ……何今の断末魔。

 ま、まさか!?

 いやでも、あのひと、瞬間移動とか出来るから……非常識な速度で戻ってきた!?


「ま、まさか義兄さまが破壊行為を!?」

「い、いや。此れはアレッキオの気配じゃない」

「公爵なら、此処に遠慮無くズカズカ入ってくるでしょうしね」

「マジすかスゲーな、アレッキオ卿。この分厚い結界の中、中々の非常識だな」


 あ、陛下にはお分かりになるんだ……。いえそれよりもチェネレ様の科白が気になりすぎるんだけれど!!

 そして分厚い結界……!?全く分からなかった!!どんだけ呑気なの私!!


「ぎゃあっ!!何だ貴様は!やめっ!」

「……るさい」

「きゃあっ!何で!?仲間は……」


 ……しまった。呑気に自分の無能さを悔いてる場合じゃないわ!!


「い、一体何方が」

「ひとりはティムみたいね」

「!?」

「ティム!?まさかティムが我らを助けに!?どういう風の吹きまわしだ!?」

「そういう駄々漏れが嫌われるんだぞディマ」

「うぐっ!」


 いや、で、でも目茶苦茶同意してしまうわ、陛下のお気持ちに……。サジュ様は口を自ら塞いでおられるし。


 何でティム様が……有り得ない。いえ、お立場的に有り得る……筈なんだけど、有り得ないわ。そんな慈善事業されるタイプでは全く無い。

 絶対何か、裏が有る筈!


「何が女神よ。下らんことを!!お父さんを、妹を、私の娘を返せ!!」

「ぐああああ!!」


 ……ええと、本当に誰かしら。

 女性の声、みたいだけれど。


「……ディ、ディアナ……?」

「おい、今のは……」

「えっ、お、王妃様ですの!?」


 まさかの王妃様が!?

 えっ、あの、記憶喪失で……あの、ご結婚なさったばかりの、あの嫋やかな陛下のお妃様が、あの……この、ガンガンと……まるで物が蹴っ飛ばされて無惨に転がるような音を発してる訳?


「……無力化されたみたいね。ディマの番も中々やるじゃなくて」

「えっ、何!?本当にディアナなのか!?ティムでは無くてか!?」

「ほー、中々の鬼嫁になりそうな気性のようだな。見えんで良かったな、ディマ」


 陛下も信じられないご様子だわ。


「陛下ー、伯母上が襲撃者を無力化されましたので入室して宜しいですか?」


 ……え。この場に相応しく無いのんびりした美声は……ティム様よね。

 ……目茶苦茶弾んでない?聞いたこと無いテンションなんだけれど。


「伯母……!?まさか、ノエミ様」

「やだなあ違いますよ。ねえ、伯母上」

「……」

「……開けるか?ディマ」

「ああ……」

「あっ、オレ開けます」


 気を利かせられたサジュ様が、重厚な扉を開けられると……。

 歳はそんなに変わらないのに、まるで親子のように寄り添う……そっくりな青年と、美女。

 ……。お髪の色が本当にそっくり。

 この方もティム様と同じく、ラッコの獣人なのかしら。


「記憶が、戻ったのか」

「ええ。従弟の王子……ウォレム様?

 初めまして?いえ、異母妹の侍女にさせられた時に見かけたことは有りましたっけ?

 何故、私が貴方の妃に?」


 ティム様によく似た美貌で、小首を傾げる様が……ま、また。

 く、空気が凍りついてしまったようだわ。どうしよう。


「いやあ伯母上が記憶を取り戻してくださって良かった。めでたいですねえ」

「……貴女は、ジーア嬢、なのか?」

「……そうですけど?何か不都合が?ああ、色々面倒な事になってるんでしたね。離縁します?私、娘を探さないと」

「ははは、困りましたねえ」


 ティム様だけが、楽しそう……。


「まあ今はややこしいみたいですね。失礼。

 ええと、ノエミ・クレモンティーヌ・アルヴィエ様の息子のお嫁さんがコレに捕まっているんでしたね」

「ははあ、伯母上はお優しいですね」

「兎に角、助けて頂いた借りは少しお返し出来たかしら」

「ディアナ……ジーア。私は」


 チラッと陛下を見られただけで……ディアナ様、いえジーア様は……ティム様と廊下を歩いて行かれてしまった。


 ……ド、ドライ過ぎやしない!?

 いや、でも!ああ。

 ジーア様の瞳をご覧になった、陛下のお辛そうなお顔が……居たたまれない。


「……何つーか、先輩の母ちゃんにちょい似てんな」

「そ、そうですかしら」


 姉妹でいらっしゃるんだろうけど、あの方より目茶苦茶ドライよ!?


「ディマ、凹むんなら後から誠心誠意口説け。兎に角フォーナ嬢の救出だ。此処を制圧してくれたんだからいい王妃様だろうが」


 扉を開けた所に騎士様方が倒れておられるのを蹴飛ばして起こされているチェネレ様が、陛下を叱責されているわ。

 騎士様方は……眠らされていただけみたいね。


「……そうだな。指揮権の回復と、地下牢を捜索せよ」

「承った」

「何だ、意外と元気そうだな……いや?何だこの空気は」

「ルディ様!」


 反対側から、悠々と歩いてお出でなのは……ルディ様!


「良かったですわ!ご無事でしたのね!!」

「お前、焦げ臭くなくて?」

「アレキのせいだぞ」


 うっ、やっぱり義兄さまが何か燃やしたの!?


「レルミッドとアレキが地下牢へ向かった。僕は王子だから入るなと言われてな。不本意だが此方の様子を見に来たが……」


 金色の睫毛を瞬いて、ルディ様がこて、と小首を傾げられる。


「陛下、顔色が悪すぎるが?」

「それが……」

「いや、大丈夫だ。……フォーナ嬢を助けるのが最優先だ」

「陛下……」


 確かに、優先順位はフォーナ。

 陛下がご無事で良かったのだけれど。

 王妃様の記憶が戻って、ティム様の伯母上様が戻って、良かったのだけれど。


 ジーア様の、熱の無かった瞳に浮かんだ憎しみの色が、張り付いて離れない。

 ……全て良かったとは、とても思えないの。



嘗て迷惑を振り撒きまくった『王女ローリラ』の娘は5人。

記憶喪失の女性は、その三女のジーアでした。何故か若返っているようです。

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矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
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