5.派手色は場違いでしょうに
お読み頂き有り難う御座います。
アローディエンヌと義兄さまのカラチェン回です。
「可愛い……可愛いよアローディエンヌう!!何なのこの可愛さ予想以上じゃない!?
この可愛さを野に放っちゃ駄目だよ、汚れちゃう……!!やっぱりやめよう?ひっそりと愛でさせて!!僕の僕だけのアローディエンヌう!!」
「お褒め頂いて……いや何処が?煩いですわ義兄さま」
「んもうアローディエンヌったらあ!照れてるう!!」
「いや照れてないですし、頬っぺたつつかないでください!!」
いや、帰ってから……待ってた使用人に染料を髪の毛に塗られて、染まったらしく出てきたら……。
ええまあ、……義兄さまの感想がおかしいわ……。
単なる髪色チェンジで、義兄さまがこんなにテンション高くてウザくなるなんて……。他人事ならとても少女漫画チックなのに……当事者、モブ顔の私だからなあ。
後、そんな浮かれた事態でもないのよね。人質救出の為だったわよね?そんなデート行く前のお洒落みたいなテンションじゃないわよね……?
「それに……良く考えりゃ、行くの夜なのに……。こんなド派手に染める必要有りますかしら」
部屋に鏡が無かったから、今見てるけど……目立たない為っていう大前提が逃げ出してない?
まだ義兄さまが物凄く悶えているのは何でなの。相変わらず目がおかしいわ……。
……夜目が利くって言っても色味迄は正確に分からないわよね?
敵のアジトに、暗がり及び蝋燭の灯りでもハッキリと色合いが分かる目茶苦茶チート持ちが居るとかかしら。
……アレ?何で私の髪の毛を染めたのか分からなくなってきたわ。
「確かに適当で良いとは言いましたが、こんな鮮やかな赤に染める必要有りますか?」
そう、何と私の頭は!!
……義兄さま色……でもないな。まあまあ赤くて派手な頭に染められてしまった!!
此処では通じないけど、鳥居みたいな赤っていうの?
あああ!茶色か黒で良かったのに!!
こんな短期間で染まるなんて、染料が入りやすかったのね私の髪の毛って!?
でも派手なモブを拵えてどうするのよ!無駄な!!いや多分と言うか絶対何処でも背景に溶け込めるでしょうし、目立たないでしょうけどね!?それはそれでイラっとしなくもないけど!!
「時間が有ればお揃いだったのにい。そもそもアローディエンヌと僕が行く必要無いよね」
「行く意味は有る筈ですし今更でしょうが。……義兄さまは黒ですか?」
若干、いえかなり何の戦力にもならない私が行く必要は無いかもなとは思うじゃないの。義兄さまは兎も角。
黒髪義兄さまも似合うわ。……余計に悪役で暗黒なオーラが出てるって言うか。
……魔王感って言うの?いや、赤い髪でも魔王感が出て無くはないんだけれど……。いや、魔王じゃないし何なのかしら。この非常時にも私の妄想が場違いすぎるのよ。
「うん、夜に紛れそうだしい。可愛い?」
クルッとターンされてもなあ。……可愛くはないわね。リアクションは可愛い寄りでも妖艶な感じだわ。
うーむ、誉めると面倒かしら……。でも誉めなくても面倒なのよね。
「……お似合いですわね」
「そお?ふふう!アローディエンヌ可愛いよお!」
「私も黒で良かったんですけど」
多分そんなに違和感出ないだろうと思うし、赤よりはなあ。
……鏡に映る赤毛のモブ……。この引き籠りな割には取れない鼻のソバカスも相まって、三つ編みしたたら何処ぞの小説みたい。あ、目の色は違うけど。まあ、でも主役級には死んでもなれないわね。
うーん、目に痛いし違和感だわ……。
「良いじゃなあい!三日で抜ける染料だからあ!」
「へえ。便利ですけれど明日のお勤めが困りますわね」
「え?そりゃ出仕は控えるよ」
「はあ!?いやサボらないでくださいな!!ご迷惑でしょうが!!」
もしかして、それを見越して!?
何て悪どいひとなの!!
ジロッと……睨んだつもりだけど、駄目だ。私の髪の毛を目茶苦茶編み込みながらご機嫌だわ……。
何故私の髪を弄る必要が……。義兄さまが触る度、イヤーカフがしゃりんしゃりん煩いわね。
そういや暫く鳴ってなかった気がしたけど、何でまた。
「このちょっとふんわりして優しく広がる髪を掴まれて切られちゃったら大変だからね。流石に髪に迄は防御魔術掛からないしなあ……」
単に若干癖の有るストレート気味な上、湿気でヘタる髪の毛なだけなんだけど、物は言いようね……。素敵に聞こえなくも無いような、うーむ。
……んん?
「あっ!そう言えば前に腕を掴まれた時に人が燃えましたけど、あれは何なんですの!?」
「んー?言わなかったあ?アローディエンヌに敵意を持ってる奴が触れるとお、発動するお守りの防御魔術う」
……お守りにしては高火力過ぎで、攻撃力高過ぎだった気がするんだけど。
過保護だわ……。でも、守られたから文句も言えないし。私には魔法いや魔術はサッパリだけど、目茶苦茶無駄遣いされてる気がするわ……。
「少し……過剰ではないんですの?助かりましたけど」
「そお?ホントは僕の指定範囲以外燃やしたい所だけどお」
「はあ!?やめてください、周りにご迷惑ですわよ!単にぶつかった人迄燃えるじゃありませんのそれ!!
嫌ですわよそんな歩く危険物なんて!普通に!!」
「んもう!アローディエンヌは危険な程魅力的だからあ!」
「意味が分からないんですが」
危険な魅力だなんて……世界一程遠いわそんなもの。寧ろ義兄さまの方じゃないのそれ。
「兎に角、空も暮れて参りましたわ。王城へ向かいましょう」
「現地集合現地解散だよお。王城なんて行きたくなあい」
「失礼ですし、義兄さまの職場でしょうが……」
いや、色々有ったんでしょうけど……。駄々っ子止めて欲しいわいい加減。
……南の通りって……よく考えたら、少しだけ入ったことが有るかしら。
地味目なワンピースに着替えて、黒髪で暗い緑の地味な外套ながらもテンションの高い義兄さまと使用人に目立たない馬車で送って貰ったのよね。どうでもいいけれど……ウチって何でも有るな。この馬車、地味に前のと違うような気がするんだけど……借り物って線も無くは無いかしら。そんな馬車ばっかり有っても無駄だものね。……公爵家だからもっと派手な馬車が沢山有るのかしら。一応公爵夫人なのに、把握してないなあ……。本当にダメね、私って。
あら、あの角から三番目のお店辺り……何だかちょっと知ってる場所かもしれないわね。
あの酒場……色合いと調理法でメニュー書いてあるレストランよね。
……表のお品書きに書いてある、ツマミ(赤キノコ)と泡酒(緑)って何なのかしら。ビール……にしては個性的な色過ぎよね。そして、何だか死にそうなラインナップに見えるのはおつまみかしら。相変わらず謎なラインナップだわ……。
「アロン!こっちよ」
「あ、え?ブライトニア……?」
……暗い色の長い髪を、緩く結った三つ編み背中に流してる……。うーむ、ゆるふわ美少女って感じね。滅茶苦茶可愛らしいんだけど、髪の毛は何色かしら。紺色?
夕暮れだからイマイチ詳細が分からないな……。
しかし、紺色だと……益々フォーナに似てるわね。黙ってると本当にソックリ……。
「フォーナと似てるわね、ブライトニア。可愛らしいわ」
「そう?姉妹だから仕方ないわね。オルガニックのような色が良かったのに。まあ、あたくしは駄姉の色だろうと何でも似合うのよ」
「毛先の色と馴染ませる為には仕方なかろう」
……わあ。
薄い茶色、かしら。滅茶苦茶お似合いだわ……。金髪じゃなくてもキラキラ王子様っぷりが止まらないって感じだわあ。
あら、義兄さま何処に行ったのかしら。お隣のレルミッド様も……何時ものフードとは違う物をお召しね。ルディ様とお揃いかしら?濃い茶色がルディ様で、薄めの茶色がレルミッド様。いや、覗く前髪が……青いかしら?うう、薄暗いからやっぱり見辛いわ。
「レルミッド様は……青ですか?」
「サジュっぽくはなんねーな。お前は赤茶色か?」
「……赤になってしまいましたわ」
「赤!?……分かんねーな。俺の目が悪いんじゃねーよな」
そ、そうでしょうね……。どんどん暗くなっていくし、街灯は有るけれど……そんなにギラギラ光っていないものね。大体此処、住宅地みたいだもの。
しかし、私もそうだけど……そんなに変装って感じしないわね。何処からどう見ても皆様って感じだし。
「髪の毛で分かりにくいなら、目の色は……変えても無駄ですわね。夜ですし」
髪の毛も無駄だと思うんだけど……よく考えりゃルディ様のご発案だし、何か深いお考え有ってのことよね。
後、そんなに暗がりで人の目をガン見することもないでしょうしね……。
「目の色を変えたいなら、水魔術で目玉に細かい穴を空けて染料を流し込むらしくてよ。罪人にやる地方が有ると聞いたわ」
「……聞くだけで激痛みたいね」
何で其処だけ原始的なのかしら……。
魔法いや魔術でパッパッと……ならないのね。地味に夢と魔法とファンタジーじゃないのが現実的と言うか。
「個人を騙したいなら幻覚を見せれば良いんだけどねえ?」
「いや、もう良いですわ。単なる思い付きですし」
義兄さまが後ろから音も無く現れるし……。
「何処へ行っていた、アレキ」
「ショーンに言う必要ある?司令官面するな鬱陶しい」
「お前の叔父上様から司令官面しても良いと仰せつかっている。そもそも、お前は臣下だろうが」
「……面倒臭いなあ」
「そもそも、馬鹿兄貴に頼る必要があって?」
「仕方あるまい。裏社会に通じているのはアレキだ」
「えっ!?そうなんですの!?」
地味にそうかなーとは思っていたけど、それって有名な話なのかしら……。
「人聞きの悪い。偶々この辺に住んでた配下が多いだけだよおアローディエンヌう。大体、南の通り沿いに住んでる人間が全員裏稼業な訳ないでしょお」
「そ、そうですわよね……」
「いや義妹、思いっきり騙されてやがるな」
え、そ、そうなの?
……また世間知らずを義兄さまに利用されてる感じなの?
「アロンはひとが良すぎるものね。其処が良さであり心配なところよ。仕方ないからあたくしが守ってやらないといけないわ」
「いや良いわよ。私なんかよりオルガニックさん救出に全力を尽くして頂戴」
「そうね……家が多すぎるわ。更地にしてからで良くて?」
「いえ全然とても良くないわブライトニア!!思い出して頂戴オルガニックさんの安全な救出を!!止めましょうね!?」
「あら、そうだったわね。
オルガニックは、助け出したあたくしに満面の笑顔を捧げて生涯の愛を叫んでくれるんだもの」
……いや私の世間知らずとかどうでもいいわね!?もっと現実を見ないと!!
……しかも、そんな話だったかしら。かなり脚色されて進行してるわね!?
「いや、やんねーだろ」
「叫ぶ方はするかもしれんぞ、大体何を叫んだら愛と判断する?打ち合わせでもしないと無理ではないか?」
「煩いわね!オルガニックはお前らとは違うのよ!!」
オルガニックさん……。ああ、変なハードルがガン上がりしているのに止められなくて申し訳無いわ……。
「だからフロプシーは駄目なんだよ。情報を集めるとか色々有るだろ」
「この、この通りに馴染んでいないような面子で?怪しくてよ」
それを言ってはお仕舞いじゃないの……。確かに、このメンバーは麗しいからなあ……。でも、浮いてる………?訳では無いかしら。
あからさまにお忍びって感じの雰囲気の人も居るし、悪そうな人も居るし、何なのかしら。
義兄さまは何か策が有るの?出し惜しみしそうね……。
南の方はあまり裕福でない人達の住まいのようです。
基本、お金持ちの家以外は強い光の照明は無い感じですね。




