12.こんなご招待は謹んで御辞退したかったなあ!(ニック目線)
お読み頂き有難う御座います。誤字報告誠に有難う御座います!
お式当日、ニック目線でお送り致します。
「貴女の名前が明らかになるまでそうだな。ディアナ、と呼ぶことにしていいか?」
「……御随意に」
白い髪に赤い瞳の女性……ヒランヒランなドレスをお召しの、どう見ても主役級な方は固い口調で頷いているね。
……こ、此処何処かなあ。
ヒイイ!!この王族の偉いオーラが溢れるお部屋前から、消えたい!!マジでお家に帰りたいいいいん!!
あ、ぱたんって、閉まった……。続き部屋になってるのね。いやあ、何処もかしこも素敵でお高そうなお造りだわあ。映えって感じ?あの天井画、……エ・スエーヌエー・スヴァーエカ様式だよね。いや違うよボクの創作じゃない!!本気で有る様式だから!!マジ困るよこの世界さあ!勿論初めて聞いて腹痛を起こしたよ。正直美術史の本を読んでると吹くともさ!!
ふええ、神官画家ってジョブも大概だよお……!止めたけど昔取った杵柄辛たん!
「あの『光の空っぽ娘』と言い、……ティナ様もジーア様も可愛らしい系だったからな」
「従姉妹達は、皆美しかったと思うが、別に……あの姉妹をより好んだ訳では」
「いや、ジェラルディーヌ様は生きてるのを疑う程目茶苦茶御綺麗でしたけど、ウチの姉上は、フツー寄りのキツめですよ……」
「ノエミ様も美しかったぞ。……今では少し迫力が増されたが。後、ジェラルディーヌ様は……口が、いや。そうでなく……あの姉妹姫は……」
「まあ、あの姉妹姫は……少し庶民的な可愛らしさにあの色合いだからな。余計儚いと言うか。まあ、あの母親似の末っ子は顔も性格もネジ曲がって論外だが」
……お手洗いからの道に迷ったボクの耳にとんでもないお話が飛び込んで来たんですよねー……。
ええと、庶民生まれで庶民として生き、ヒラ庶民として死ぬ。そんな決意を固められそうな異世界転生したオタク、ニックです。
……何でかなあ。ボク、もっとボロい控え室が相応しい身分だと思うのにさあ。
ななな何とぉ!VIPな控え室に何故……皇族扱いなんだってボクってばあ!
……帰りたくて帰りたくて物理的に震えて、お手洗いが近いです。
ってそうじゃないよ。ふええ立ち去るタイミングうう!!
「……このイケてるCVは……へ、へひ……」
しかもボク気づいちゃった!
本日の新郎様にして、主役のおひとりであらせられる国王陛下じゃね!?
そして、お付きの騎士様がたの会話じゃね!?
ひええええ!!なんちゅう所に迷い込んでるのボクってばあああ!!!
ていうか、他国枠なんだからもっと厳重に警備しといてええええ!!あああ、お手洗いにレギ付いてきて貰ったら……ってそれもあかん奴!!
でもでも!!使用人さん連れて歩くとか、貴族生活送らないボクからしたら超無理ゲー!!
「何だ、何処の刺客かと思いきや。『ウサギ姫の手綱』じゃないですか」
「ヒッ!?何ですかその渾名!」
ウサギに手綱要る!?あっ、お、お散歩のリード的な!?ウサギのお散歩はうさんぽって言うらしいね!ヒイイ!ブライトニア相手にリード着けて!?とってもやりたくない!脱臼待った無し!
「ウサギ姫の抱っこ紐って言う案も出たんですが、婚約者殿に御守役扱いは失礼ですからね」
「ヒイイ似たようなもんですうう!」
寧ろ素敵な結婚相手が出来るまでの繋ぎとしてで、オナシャス!!イエス!使い棄て!婚約者カッコカリ!
と言いたいところだけど、国王陛下がガン見されてる中そんな事言えないしいいん!
「ソーレミタイナの、オルガニック・キュリナ……殿か」
「おおおお畏れ多い!陛下、お呼び捨てください!!長ければ其処らのニックとでも!!」
「いや、それはいかんでしょう。今日はニック殿、道に迷われたんですね」
ヒイイイケメン騎士様に笑顔でお声掛けられて候!!!ど、何方だっけ!!見たこと有るんだけどおおお!緊張し過ぎて脳が煮えて記憶回路が全滅してるううう!!
「決して立ち聞きするつもりでは!!何の権限も発言力も御座いませんので、粗末な素っ首ひとつでお目こぼしを!!」
「……デイン、お前の顔が怖いんではないか?」
「そもそも開け放して駄弁るディマが悪い」
「私が!?」
「使用人を下がらせて、ディマが最後に入ったんだから扉はお前が閉めるべきだ」
「いや、立場的に俺だな……、すんません陛下」
「アルヴィエは悪くないだろう」
扉を誰が閉めるかでこんなフランクな会話が……。て言うか陛下、ドアの開け閉めなさるんだ……。使用人が目茶苦茶何でもかんでもお世話するんじゃないんだね……。流石、流浪の旅人なさってた過去が……いや、有るよね?ゲームの設定、其処は合ってるよね?流石に其処は死んでない設定で有って!!終わったとしても過去で有って!!
って、いかんいかん!ボク、不敬罪喰らいそうなのにまた要らん事考えちゃってるよ!!
「あの、首は何時お召しに」
「いや、斬らん。……何と言うか、其処まで怯えずとも良い。貴方は次期皇帝の伴侶となるのだろう?」
そ、そんなフレンドリーな視線を向けて頂けるような事有った!?ヒイイ、コレって不法侵入で取っ捕まるから油断させてバッサリ5秒前!?
「よ、予定は未定と申しますし。フィオール皇女は未だお歳が若いですひ……こんなオッサいえ、草臥れた庶民を望まずとも、でしゅ」
うわん!途中と末尾で噛んじゃったし!!カッコ悪!!
「……地味に卑屈ですねニック殿。良い噂しか聞きませんよ」
「噂!?こんな日陰野郎に一体何の良い噂が立つんですか!?ボクをブライトニアいやフィオール皇女から離そうという善意の塊の罠ですか!?」
うんうん、……色々目を瞑れば蝙蝠ウサギ姿は可愛い系美少女だし、キレなきゃハイスペックだもんなあ、ブライトニア。
まあ、常に気性が荒すぎて喧嘩腰でお話聞いてくれないのをクリアすれば……めちゃんこ美少女だし、まあまあ大国の皇太子だし……引く手数多でタコ足+イカ足お嫁さん候補ロードなのでは?
……何言ってんのか自分でも纏まらなさ過ぎィ!あの子も大概属性多いんだよおおお!!
「畏れながら陛下、不敬罪でお召しの場合は直ぐ馳せ参じますので」
「こんな事で不敬罪なんか発令していたら、人口が減るので大丈夫ですよ、オルガニック殿」
いや、イケオジな騎士様が何故か太鼓判捺してくださったけど……。徽章や勲章を見るに……この方々、近衛騎士様かなあ。……ヒエエ、と言うことはこの無表情気味な方が近衛騎士団長チェネレ様……!!やっぱド偉い方だあ!!
「見たところ普通のようだし仲良くしたいのだが、難しいだろうか……」
「ああ、面倒でしょうし拒否っても良いですよ」
「いや隊長!つかニック殿が目茶苦茶困ってますよ!!俺送ってきますから!」
「ヒッエエエエ……」
「魔物襲撃に遭ったみたいな声出しておられるな。ロン、丁重にお送りしろ」
そして、ボクはソーレミタイナの王族が集う……つか、レギとブライトニアだけだったけどね!!お部屋に送って頂いた……。
「ああ!!心配したのよオルガニック!!」
「ごふげっ!!」
だ、だからあ!!体当たりは!止めてってばあ!!!衝撃と涙と鼻水に邪魔されて息ががが!
「良かった!!フィオール姉さんが物を壊す前で見つかって本当に良かったです師匠!!」
「ぐぼごっほっ!!」
酷すぎじゃないレギ!!最近ボクへの扱い軽くね!?
「レルミッドの叔父のロンだったわね!何故もっと早く保護しないの!?怠慢じゃなくて!?」
にゃ ん で す と!?
叔父様!?れ、レルミッドさんの!?
あっ、そっか!!そーだよ!!狼狽えすぎて何の事やら記憶トンでたけど!
「へえっ!?レルミッドさんの叔父様!?ししし失礼致しました!!ブライトニア!無茶苦茶言わないで!迷ったボクが悪いんだからね!!」
「おお、ご丁寧に」
「オルガニック!!虚ろな目をしてどうしたの!?具合が!?ああ可哀想なあたくしのか弱いオルガニック!!」
いやだから揺らさんでくれえ……。ぐへえ。
ダメだ記憶がナッシング。
しかし、思い返すとスゲー会話だったなあ。
……多分あの会話、『王女ローリラ』の産んだお姫様達についてのトークだよね……。
そっかあ、レルミッドさんのお母さんはキツめ美人さんで、ルディ様のお母様は作り物のような美人さん。ティミーのお母さんと双子の伯母さんは素朴で可愛い系……。末っ子ってアレか、おねえたまとルディ様とティミーを虐めてた悪い論外元王妃だな。
一部を除いて……何だその情報、萌えるぅ!
うん、でもね!!
「……生涯オフレコを誓わねば。未だ死にたくないよお!」
「どうしたのオルガニック!!誰に嫌なことをされたの!?待っていて直ぐにぐちゃぐちゃにしてきてよ!!」
「フィオール姉さん落ち着いてください!!」
……いや、モメて本当にすんません。目茶苦茶怒られたよ……。て言うかさあ、こんな重大イベント、側室引き連れて皇帝陛下自らお出でになってよおお!!
……そして、お式だけど。
いやまあむっちゃ豪華。お花は白を基調に超飾られてるし、天井の金彩は美しいしお飾りもお高そうな豪華さで、新郎新婦もゴージャス極まりない。遠目だからオーラが煌めいてるのしか分からんちんだけど!ほら!何て言うか!
でもさあ。何でかなあ。
アロンたんの……お顔が見えない。
いや、ご親戚だから我らとは一段上壇のトコにいるんだけどね。ヴェールをお召しでさあ。正直……離れていても麗しが届くおにいたまの横に居られるから、背格好的にもそーだろーなー的な推察しかでけん。
推しのお顔見えない……。しくしく。
花嫁さんじゃなくて推しを見ててすみません。お式では無理かもだけど、終わってからなら……あー!双眼鏡持ってくるべきだった……。ドレスかわゆいなあ。うう、お顔……。
て言うか、何で女の人はヴェール着用なの!?何で!?結婚式は花嫁さん以外ヴェール着用ってそんなルール、有るう!?ドゥッカーノだけのローカルルール!?横のブライトニアもドレスとお揃いの生成色を被らされたし……。……やっぱツインテでは無理が有ったんじゃあ。耳の上、不自然に盛り上がってるし。髪型変えるには時間足りなかったからしょーがないけど。
しかしかかし、ヴェールのお陰で女の人は誰が誰やら……。あ、ルディ様にレルミッドさん見っけ……の横に居る落ち着きなさ抜群のピンクのヴェールはまさかフォーナかな……。凄い所に居るねあの子も……。カワイソス。
あれ?その手に持ってんのってまさかリングピロー!?何でそんな大役仰せつかってんのォ!?
ヒイイ、フォーナが変なヒロインドジを繰り出してコケませんように!!あの子、ネタとばかりか!?と思うレベルでガチやるから!!
「あの駄姉が段を転げ落ちたら面白そうね」
「やめてブライトニア」
「フォーナ姉さん、足元覚束無いようですが、大丈夫でしょうか……」
やりかねないブライトニアの手をガッツリ掴み……ハラハラするボク達の期待を裏切ってハイ成功!ハッピー!すりゃ良かったんだけどなあ。
「は……!!ぁ!!」
「……っ!この」
……帰りで痛そうな転び方をして、レルミッドさんに抱えられていたよ……。
……ヒロインはヒロインなんだねえ。しゅごい。
じゃなくてだよ。
はわあ!ってデッカイ声を出さなかっただけ凄いよ。お式を台無しにしなくて偉いよフォーナ!後でお見舞いに行かなきゃね!
あ、アロンたんが近寄ろうとして、おにいたまにガッツリ捕まってるのも見てしまった。……うううう!!お熱いしい!!
でも……横のレギの顔が真っ青なのが引くね。早く諦メロン……だよ……レギ……。ボクに言われたか無いだろーけど。
レギの方がヴェール必須だったんじゃ無いかなあ。
……そ、それ以外は荘厳なお式だったかな。
この国、宗教的な結婚式やらないみたいだから、ちょっと人前式みたいな感じだよね。
しかし兎に角人が多い!それも偉い人が多い!!女の人は誰か分からないし、胃が痛い!!
お式が終わってお外でガーデンパーティみたいだけど、パス出来ないかなあ。ボク、知らないお偉いさんの相手出来ない!
「ニック!」
「あ、フォーナ」
ヒョコヒョコ足引き摺りながらこっちに来たのは、ピンクのヴェールを被ったフォーナだった。
「あれ?オールちゃんとレギちゃんはどうしたんですか?」
「え?其処に……あれれん?」
この人混みでハグレたかな。
さっきまでブライトニアに目茶苦茶手を握られてたのに。
「まあその内見つかるよ。レルミッドさんはどしたのフォーナ」
「レルミッドさんはですね」
……それから、記憶が無いんだよね。
だから、縛られて見たこと無い素朴なお部屋に転がされてると気付いた時には……。
「いや、役割違うでしょ」
「ニック!気付いたんですね!!」
意味の分からなさで、混乱しか無かったね!!
フォーナなら兎も角!!我モブかつノーチートなアラサー!!何でボクを拐うかなあ!?ボクの死亡フラグは撲滅されていなかったの!?
ノーチートな主人公と一緒に拐われるサポートキャラ、オルガニック・キュリナ。
次回は怒り狂うレルミッドとブライトニアの居る王城からお送り予定で御座います。




