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サポートキャラに悪役令嬢の魅了は効かない(その後の小話集)  作者: 宇和マチカ
王の婚礼と周りの反応

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7.意外と面識が無かったふたり

お読み頂き有難う御座います。

邸の中での女子トークです。ひとり賑やかなのが増えましたね。

 あれ?何だか足音が聞こえるわね。結構早いな。

 最近は使用人が走る事は少ないように思えたけど……火急の用事なのかしら?


「失礼しますわ義妹姫様!ご無事でいらっしゃいます!?」


 あら、ドートリッシュじゃない。空け離したままのドアから薄紫の三つ編みポニテが揺れて……消えた?何で?

 ん?あ、通り過ぎた?あ、戻ってきたわ。行き過ぎたのね。

 うーん?急いで来てくれたみたいだけど、どうしたのかしら。今日って何か有ったのかしら。

 未だお腹は目立っていないけど走ったりして……悪阻は大丈夫なのかしら?パッと見……具合は良さそうね。

 うわ、カーテシーしようとしてる!危ない!

 只でさえドートリッシュのカーテシーはダイナミックでアクロバティックなのに!!


「待って!今日はドートリッシュ、カーテシーは結構よ!?

 お体の具合は如何!?」

「ご心配有難う御座います義妹姫様!!とーっても元気ですわ!

 時たま凄く吐きますけど、概ね食欲は無事ですの!」

「大変なのね……。悪阻って人それぞれだって聞くし……」

「ええ!元気な時は元気に過ごしてますの!」


 うーん、どういうことかしら?乱高下な調子なのかしらね?悪阻……私はどうだったかな……。寝まくって義兄さまに張り付かれてた記憶しかないな。我ながら怠惰な妊娠生活だったわね。


「アロン、このバタバタ煩いのは誰?」


 あ、ブライトニアはドートリッシュを知らなかったかしら。

 そりゃそうか。私の結婚式でしか……そういやお互いを紹介してないわね。幾ら非常識なお式だったからって、私ったら!!なってないにも程があるじゃないの!


「ええと、ブライトニア。御免なさいねドートリッシュ、此方は」

「いえいえ!!義妹姫様が謝られる必要は御座いませんわ!!お客様が先にお見えだったんですのね!」

「煩くてよ!一々声が大きいわね!あたくしの耳は繊細なのよ。気を遣って小さく喋りなさい!!」


 そ、そんなに目を剥いて怒る程声大きくないでしょうに。蝙蝠ウサギだから耳は良いのかしら。


「ブライトニア、そんな言い方は無いでしょう?ドートリッシュ、この子はソーレミタイナの」

「皇太子よ。平伏なさい!!」

「えっ!?何?平伏すればいいの!?」


 はあ!?何でよ!!

 ドートリッシュも何で普通に平伏しようとしてるのよ!!私に言われたか無いでしょうけど、無条件に腰が低すぎる!!


「ドートリッシュ!本当にしなくていいのよ!!ブライトニア!!妊婦さんに何て事言うの!!いや妊婦さんじゃなくても無闇矢鱈に人を平伏させちゃ駄目よ!」

「あたくし、平伏させられる立場よ」

「いやそうなのだけれど!!そういうのは、せめて悪い人に命令して頂戴!!」

「悪人なら良いの?じゃあ馬鹿兄貴に命じようかしら」

「はあ!?義兄さま!?悪者じゃないとは言わないけれど、理由もないのに止めて頂戴!!」

「分かったわ、何時か物理的に平伏させることにするわね。その暁には、シアンと移住してきて良くてよアロン」


 あああ、要らんことを言わなきゃ良かった!!何で義兄さまとブライトニアをバトらせる方向へ行ってるのよ!?何とか軌道修正しないと!!


「あのねブライトニア。お誘いは嬉しいけど私は義兄さまとシアンディーヌと普通に幸せなのよ」

「嫌になったら我慢せず何時でも言うのよ」

「いや、我慢してないわよ」


 そんな疑り深い目で見られても、無いってば!!


「う、く、口が悪いけど実際偉い人なんですのね。良く分かりましたわ。それに何だか義妹姫様がお飼いになってたウサギに似てますわね」

「あら、鋭くてよ。似てるも何も本人だもの」

「えー!?獣人なの!?」


 す、凄いわね。私なんか目の前で変身されても、言われなきゃ全く気付かなかったのに。ドートリッシュって観察眼が鋭いんだわ。しかし長々とドートリッシュをほったらかしにしてしまった……。申し訳ないわ。


「それでコイツは誰なの、アロン」

「だから、コイツなんて言わないの。コレッデモン王国のドートリッシュ・ムニエ・モブニカ夫人よ。ルーロ君の奥方様なの」

「ああ、臣下の?いけ好かない匂いがすると思ったわ」

「ちょ、ルーロさまに何て事言うの!?

 私が喧しくて雑なのは謝るけど、ルーロさまに文句が有るなら喧嘩を買うわよ!!」

「ブライトニア!私のお友達に失礼な事を言わないの!」

「何ですって、アロンの友達?」


 え?な、何かしら、その可愛らしいのにジトッとした視線は。私みたいな引き篭りに友達なんておかしいとかそういうの!?いや、そりゃそんなに居ないけど!!酷くない!?


「駄姉といい、コイツといいアロン、見る目が無いんじゃなくて?」

「見る目って何でよ。ふたりとも素敵で可愛らしいじゃないの」


 ブライトニアの姉嫌いも本当に困るわね……。他のお姉さんは兎も角、フォーナは滅茶苦茶好意的なのに……。オルガニックさんを巡ってのヒロインと悪役令嬢の確執はもう終わったでしょうに……。最早そういうの無しにしても気性がトコトン合わないのは分かったから、表面上でも繕ってくれないかしら……。仲良くしてるところ見たいわ……。


「有難う御座います義妹姫様!!ちょっと、ダーネさんが誰か知らないけど、皇太子は義妹姫様にも失礼よ!」

「馬鹿なの?

 ダーネじゃなくて、駄目で駄作で不出来な忌まわしい姉がアロンの友達面をしているのよ」


 何ちゅう言い方なのよ。駄姉駄姉って言ってるの、そんな略称だったの。……酷すぎるわね。


「友達面って……普通の友達よ。それにそんな言う程駄目じゃ無いわよ」

「あの中じゃマシな方だけど、どんくさくい駄姉は本来なら不要で不愉快よ」

「え、誰の事ですの」

「ええと、レルミッド様の恋人のフォーナよ」


 あ、勝手に恋人って言っちゃった。いやもしかしてもう婚約者なのかしら。同居の上結婚秒読みな方が良かったかしら。でもご報告受けてないしな。


「あの娘なら知って……ええええ!?

 あの気弱な子の妹がこの失礼な皇太子ですの!?似てな……!いや、あっ!……顔は似てますわ!!」

「馬鹿なの?身内だもの。そりゃ似るわよ」


 雰囲気が違い過ぎるから血縁をつい疑うのよね。……分かるわ。ツリ目とタレ目だけど美少女だから顔は似てるのに。謎だわ。


「何よ!私は弟とあんまり似てないもの!」

「ああ、そう言えば臣下の義理の兄はサジュだったわね」

「違う!!義理の弟よ!サジュ・ミエル・バルトロイズは養子に行った私の弟なの!」


 此方は逆で、雰囲気が似てるわよね……。兄弟姉妹って不思議だわ。

 私に兄弟姉妹が居たのか居ないのか分からないから、他人事まっしぐらだけど。


「あたくしにはどうでも良くてよ。お前、姉の割には落ち着きと品性と知性が全く足りないわね。ウチの駄姉みたい」

「ぐ、そうだけどぎぎぎ!!腹立つ子ですわねこの子!」

「う、悪い子ではないのだけれど御免なさいね……」


 もう!!何でこう喧嘩を売るのかしら。


「いえ!義妹姫様の偉大さを思い知りましたわ……。こんなキツい子をペットにするだなんて」

「いや、あのね。行き違いと言うか、ペットにしてたのは忘れたいんだけれど」


 余所の皇女をペットにしてただなんて、滅茶苦茶外聞が悪いな、良く考えりゃ。今更だけど義兄さまも何てこと仕出かしてくれたのよ。そりゃ会う機会も無かったでしょうに仲良くなれたのさ嬉しいけど……。


「そうよ、アロン。あたくしは心が広いから、これからも撫で続ける事を許してやるわ」

「へ、変なのに懐かれましたわね……」

「お前、失礼な女ね。大体何なの。あたくしとアロンが穏やかに過ごしていると言うのに入り込んで来て!!邪魔なのよ」

「ブライトニア!ほら、落ち着いて頂戴。あっ!」


 家具がガタガタ鳴り出した!!何でこの子はこう血の気が多いし些細なことでキレ易いのよ!!

 ええと、ああもう!!


 ついイラッとして腕引っ張ったらブライトニアが倒れてきたわ!!引っ張っといて何だけど何で抵抗しないの!?


「何よアロン!あたくしを撫でたいなら許してやってよ」

「え、ええと……そんなつもり無かったけど撫でりゃ良いの?」


 いつの間にか大腿に頭乗せてきてるし……いや別にこんな貧相な足で良けりゃ別に良いんだけど。

 うーん、相変わらず手触りの良いサラフワな髪よね。この薄茶から黒になる謎グラデも可愛らしいし。私の癖が無いようで湿気に負けやすい上に艶がない灰色がかった黄色……。この背景に溶け込むモブ髪と落差が酷すぎるわ。頭の形が悪いのかしら。


「流石義妹姫様、噂に違わぬ猛獣人使いですわね……」

「えっ、何それ」


 あ、部屋のガタガタ鳴る家具が止んでる。ブライトニアが機嫌を治して良かったわ……。


「若様の強めの御気性を物ともせず穏やかにどっしりされている奥方様って、巷で評判ですのよ。流石義妹姫様ですわね!」


 えええ何だそりゃ。

 義兄さまに常に振り回されて、常にオタオタしている現実と解離しすぎじゃないかしら。


「あの馬鹿兄貴に結婚が向くとは思えないわ」

「いや、実際結婚してるんだけど」


 言いたかないけど2回も式挙げてるのよ。言いたかないけど!!新聞とか記録に!残ってるし!!いつの間にか肖像画が描かれてたし義兄さまの部屋に飾ってあったし!!何してんのあのひとは!!


「でも若様は義妹姫様以外の方とご結婚はされないと思いますわ!運命のふたりって感じですわよね!」

「運命……」


 転生してから、予定調和が全く無い。だから、思うのかもしれないけれど。

 運命って何なのかしらね……。

 一応推しと結婚したってことに、なるのだけど。


 未だに何と言うか夢じゃね?みたいに思うことも有るのよね。

 こう、触ったら形が無くなるみたいな?


「義兄さまに触れたら分かるかしら」

「は?」

「え?」


 青紫の瞳と、紫の瞳に射抜かれてしまったわ。

 気の強そうな美少女ふたりだけど、タイプが違って目の保養だなあ。

 ええ、現実逃避したわ。

 ……私は何を言ったのかしら。か、顔が!!緩まない仕様なんだけれど!!居たたまれない!!せ、背中に滅茶苦茶汗だくになってきたわ!!


「ああ、……馬鹿兄貴を引っ叩きたいの?」

「いや、何でよ」


 そんな接触は……おでこと腕しか叩いたこと無いわよって言うのも何かおかしいわね。と言うか義兄さまを引っ叩くって……出来ないわよ。多分。


「そんな訳ないでしょ皇太子!義妹姫様!!そうですわよ!触れあって些細な愛を確かめ合う!!きゃー!!真似してもいいですかしら!?ルーロさまに!!」

「ふん、模倣するでもないわね。あたくしはオルガニックが居れば常に触れているもの!」

「えっ、何なのその積極性!!羨ましいわ!!」

「ふふん、羨んで良くってよ」


 あ、何か別の話題に行ってるわ。良かった。

 うーむ、地味に仲良くなれそうかしら……。ドートリッシュは社交的だものね。


 ん?あれ?何で動かなくなったのかしら。


「どうしたのブライトニア」

「あたくし眠くなってきたから寝るわ」

「……そ、そう。」

「すー、ぐむ、ブグ……」

「あっ」


 ……蝙蝠ウサギに変わっちゃった。ああもう、また服を散らかして……。


「じ、自由ですわね……。これが噂のフロプシーちゃん、いえ、フィオールえーと、名前の長い皇太子なんですのね」

「フィオール・ブライトニアよ」

「起きたらフロプシーでいいか聞いてみても良いでしょうか、義妹姫様」

「そ、そんな長いかしらね……。本名なんだけれど」

「ふわふわですのね……羽の付け根とかどうなんでしょう」


 ドートリッシュが背中を撫でようと手を伸ばしてきたら。


「ブギゲ!!」

「あっ、ブライトニア!ドートリッシュを噛もうとしないの!」

「ブガグゲ!!」


 て言うか寝てたんじゃないの!?何その反射神経!!


「あっ、叩くのも駄目じゃないの!」


 気がついたら前足でバシバシドートリッシュ叩いてるし!!でもノーダメージみたいだわ、


「やっぱり義妹姫様以外に、気性が荒いんですのね……」

「……いえ、私より懐いてる人がいるから……。御免なさいね、痛くない?」

「ブモミ」

「ウシマ……いえ、ウチの飼い牛に吹っ飛ばされるより全然平気ですわよ」


 吹っ飛……ええ!?


「え、……牛に!?それ、大変じゃないの!!」

「グビミ……」

「あっ、妊娠前ですわよ勿論!!ええ!半年?位に!」

「そ、そうなの……よく怪我をしなかったわね」


 妊娠がどうとかより、牛に吹っ飛ばされるとか普通に死亡フラグじゃ無いのかしら……。


「私は丈夫なのが取り柄なんですのよ!牛の世話位へっちゃらですわ!」

「そうなの……?でも、流石に妊娠中は」

「ええ、ちょっとしか牛舎には行ってませんわ!」

「グバミ……」

「ウシマが仔牛を産んだのは、君の妊娠が分かる2月前。母牛も気が立ってるから、あれ程牛舎に行くなって何度も言ったよね?」

「サジュに仔牛を見せようと思って……前は吹っ飛んだけど、今回はね!サジュが居たから平気よ……あれ?」


 ……あ。


「ドリー、何油を売ってるの。見かねた他の使用人から連絡が来たんだけど」

「る、ルーロさま……?

 実は若様から連絡が有ったんだけどね?ルーロさまがね、いらっしゃらなかったから代わりにに来たの」

「ブグググ……」

「何故俺に知らせず、妊娠中に走ってくる必要有るの?」

「な、無いけど……」

「蝙蝠ウサギ皇女。義妹姫様に迷惑を掛けず早く帰宅してください」

「ガゲゲゲグ!!」

「え、本来はルーロ君が来る筈で?いやそれよりも義兄さまが態々ウチに来させたの!?伯爵夫妻に何させてるのよあの人は!!」


 て言うかそうまでしてブライトニアを追い払いたいの!?何処まで心が狭いのよ!!







義兄さまの心は今日も狭いですね。

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登場人物紹介
矢鱈多くなって来たので、確認にどうぞ。
― 新着の感想 ―
[一言] 我儘で足蹴が素敵で可愛い権力の頂点にいる蝙蝠ウサギさんと、脳筋で純情素朴な田舎娘、でも伯爵令嬢な2人の掛け合いは中々見応えがあります。 基本、人のいいドートリッシュさんは余程の人でない限り当…
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